BL短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
79 / 99
【先輩は綺麗でいながら】 *

4

しおりを挟む



 隣を歩く、浅水先輩を見つめる。

 ──ヤッパリ、浅水先輩はカッコいい……っ。

 焼けた肌は、浅水先輩が水泳を頑張った証だ。好感しか持てない。
 真っ直ぐに前を見つめている目も、いいなと思う。姿勢も、いい。

 一ヶ月以上、まともに触れ合っていない相手を見つめていると……なんだか、妙な気持ちになってくる。


「岡本」


 ポォッと見つめていると不意に、浅水先輩から名前を呼ばれた。


「はいっ?」
「明日、午後って予定ある?」


 明日は、土曜日。……丁度、なんの予定も入っていない。
 俺は浅水先輩に対して、小さく頷く。


「いえ、空いています」


 俺の返事を聞いて、浅水先輩が視線を向けてくれる。


「明日の練習は午前中だけなんだけど、午後から図書館にでも行かない?」
「浅水先輩が、図書館……ですか」
「なにが言いたのかな、その顔は?」


 目を丸くした俺を見て、浅水先輩がムッとした表情をしながら、俺の頬を人差し指でつついた。


「す、すみません……予想外で、つい」
「こういう時は素直だなぁ」


 人差し指の先端で、頬をグリグリと押してくる。子供っぽいことをしてくる浅水先輩も、嫌いじゃない。……むしろちょっと、可愛いかもしれない……っ。

 決して、浅水先輩を馬鹿にしたつもりではなかった。が、浅水先輩からしたら小馬鹿にされたと思ったかもしれない。だから、ちょっと拗ねたような顔をしているのだ。その様子が、なんだか可笑しい。

 きっと、俺に気を遣って図書館を選んでくれたのだろう。……もしかしたら受験生だから本を借りたかったのかもしれない。

 けれど、どちらにしても嬉しいのには変わりなかった。


「ふふっ、すみません。……明日の午後ですね、分かりました。……あはっ」
「ムカつくなぁ」
「いた、いたたっ」


 遠慮なく人差し指をグリグリされて、俺は思わず痛みを訴える。それを聞いて、浅水先輩が指を離した。


「なんだったら、見学に来てもいいよ」


 水泳部が、土曜日に練習をするとき。プールサイドにある椅子に座って、見学をしてもいいようになっている。

 大会前の大事な練習は、部員の集中力を乱さないようにと、見学はできないけれど。……見学ができるということは、どうやら近日中に大会は予定されていないようだ。

 見学をするための条件は、ふたつ。ひとつは、同じ高校の生徒であること。それともうひとつは、制服を着用することだ。それさえクリアしていれば、部員の邪魔にならない範囲で見学ができる。

 見学解禁初日は浅水先輩を一目見ようと女子生徒が多いだろうが、男子生徒がいないわけでもない。


「気が向いたら、行きます」


 わざわざ制服を着て出掛けるのは気乗りしないが、できるだけ前向きに考えよう。
 そうこうしていると、分かれ道に着いてしまった。浅水先輩が立ち止まって、俺を見つめる。


「家に着いたら、ちゃんと連絡するように」


 まるで子供に言い聞かせるかのような、優しい声色。


「はい」


 明日も、会えるのに。
 いつもここに着くと、寂しい気持ちになってしまうのは……女々しい、のだろうか……?

 けれどそんな雰囲気を悟られないように、俺はポーカーフェイスを気取る。


「じゃあ、また明日」
「はい」


 頷くと、浅水先輩の手が数回だけ、俺の頭をポンポンと優しく撫でた。
 しばらく見つめ合ってから、どちらからともなく背を向けて歩き出す。


「……明日、絶対昼前には起きよう」


 そんな低い目標を口の中で決意し、俺は家に向かった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

処理中です...