80 / 99
【先輩は綺麗でいながら】 *
5
しおりを挟む低い目標。……そのはず、だったのだ。
「──嘘、でしょ? 朝の、七時……っ?」
あまりにも健康的すぎる目覚めに、スマホで時刻を確認しながら、げんなりする。
普段の休日なら、早くても九時に起きる俺だが……七時ってなんだよと、思わず自分で自分にツッコミをいれてしまう。
昼前に起きようと意識しすぎて早起きしてしまったのか、それとも別の理由か。
「馬鹿馬鹿しい……っ。浮かれすぎだろ、俺……っ」
久し振りに、浅水先輩と一緒にゆっくり過ごせる。……どうやら俺は、相当楽しみにしていたらしい。
驚くくらい目が冴えていて、二度寝する気にはなれない。
朝ご飯を食べた後に高校へ向かえば、八時から始まる水泳部の練習を最初から見ることができるだろう。
けれど俺は、途中から見に行こうと思っている。練習開始と同時に見学している生徒もいるにはいるが、その時間には行きたくない。
……なぜなら、浅水先輩に物凄くからかわれそうだからだ。
そうなると、朝ご飯以外のなにかで時間を潰さないといけない。俺はすぐさま、机の上に置いた図書室で借りた本に視線を向ける。
読書という手もあるにはあるが、気乗りしない。……これまた理由は単純で、集中して読めそうにないからだ。
上体を起こして伸びをする。そうすると、やりたいことがひとつだけ思い浮かぶ。
「お風呂にでも入ろうかな」
昨日の夜にも入浴はしたが、夏は夜でも十分に暑い。寝ているときにかいた汗を流しておくのは、なかなか有意義な時間の使い方な気がする。
そうと決まれば、行動あるのみ。着替えとして制服を手に取り、俺はリビングに向かう。
リビングに辿り着くと、まずは制服を脱衣所に置いておこうと思い、脱衣所へ直行。
「あら、洋図。早いわね。おはよう」
「母さん、おはよう」
制服を置いてからもう一度リビングに向かう。すると、母さんが食卓テーブルの椅子に座っていた。
冷蔵庫から菓子パンを取り出して、母さんの正面に座る。母さんはニコニコしながら俺を見て、コーヒーカップを手に取った。
「今日も水泳部の見学?」
「うん」
菓子パンを頬張り、母さんの問いに答える。
母さんは相変わらずニコニコしながら俺を見ていて、男子高校生としてはなんだか落ち着かない。
「高校でも水泳部、入ったら良かったのに」
そう言って母さんは、コーヒーカップに口をつける。
……ふと、プールの中で優美に泳ぐ浅水先輩を思い出す。
菓子パンを食べ終えて、俺は小さく笑った。
「いい。俺は、見ているだけでいいから」
椅子から立ち上がり、そのまま脱衣所に向かう。
……中学時代俺は、水泳部に所属していた。
それは水泳が好きだというわけではなく、中学校の決まりことで仕方なかったからだ。
俺が通っていた中学校では、生徒は必ず部活に所属しなくてはならない。そんな決まりがあったせいで、俺はやりたくもない部活動をやるハメになった。
そこでなんとなく選んだのが、水泳部。
──そして……そこで知り合ったのが、浅水先輩だ。
中学生の頃から群を抜いて泳ぎのうまかった浅水先輩は、ヤッパリ人気者だった。あの頃から、女子生徒にキャーキャー言われていた気がする。……そして、今と変わらず浅水先輩本人は、気にしていなかった。
誰よりも綺麗なフォームで泳ぎ。
誰よりも速く、ゴールをする。
そんな浅水先輩に、俺はいつの間にか……。
──惹かれて、いたのだ。
真っ直ぐに目標へ向かって努力をする浅水先輩に追いつこうと、一時期は必死だった。そんな俺の努力は、別の結果で実ることとなったけど……。
浅水先輩の次か、もしくは同じくらい練習に励む俺を見て。
──憧れの浅水先輩が、俺に興味を抱いてくれたのだ。
他人にあまり関心を抱かない浅水先輩が、俺の練習を見てくれた。
自主練習が終わったら、途中まで一緒に帰ってくれたりするようになって……。
信じられない話だとは思うが、二人の時間が増えていったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる