BL短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【先輩は綺麗でいながら】 *

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 そこから、どうしてだったか。……浅水先輩がやたらと俺に触るようになったのを、今でもハッキリ、思い出せる。
 そして、三年生が水泳部を引退する日。

 ──浅水先輩に、告白された。

 そこから今まで、誰にも気付かれることなく関係を保ち続けて……。我ながら、水泳部に入ってなにをしていたんだよという感じだ。
 そんな思い出を、一旦、頭の片隅にしまい込む。

 脱衣所で服を脱ぎ、風呂場へ入る。シャワーを浴びて、頭を洗ってから顔を洗って。
 ……体を洗おうとした、そのときだ。


「──今日って……図書館にしか、行かないのかな……っ?」


 そんな疑問が、頭をよぎったのは。
 それと同時に、自分の考えを振り払うように頭を振った。


「いや、いやいやっ。期待しているとか、そんなのじゃなくて……っ!」


 濡れた髪から、水が飛ぶ。その音にハッとして、俺は一旦落ち着こうと、深呼吸をする。

 ここだけの話。……俺は、浅水先輩の童貞をもらっている。
 つまり、タチ? が、浅水先輩で。俺が……えっと、ネコ? だ。

 これまた、ここだけの話。初めては、浅水先輩が中学を卒業したその日だった。浅水先輩の部屋で、想像もしていなかった行為に……戸惑いはした、けれど。

 浅水先輩は俺のために、色々調べていてくれたのだろう。俺に嫌な思いはさせず、初体験は見事成功した。
 性に盛んな年頃の男同士だ。タイミングさえ合えば、ヤれるときにヤるのが普通だろう。

 かと言って、獣のように頻繁にヤッているわけではない。……が、今まで何回ヤったかという正確な回数は、憶えていない。
 ……思えば、最後にヤッたのがいつだったのかも、憶えていないけど。

 それは、浅水先輩が大会のために、自分の時間を水泳に極振りしていたからだ。そして俺はいつも、事前に浅水先輩から『この日にヤるぞ』と言われるわけでは、ない。気付けば、そういう流れに持っていかれているのだ。

 大会が終わってから、スキンシップの多くなった浅水先輩を思い出すと……今日、浅水先輩にその気があってもおかしくない。


「いやいやいやっ! 馬鹿か馬鹿かっ、馬鹿か俺はっ!」


 どんどん顔が熱くなっていき、俺は頭を抱えた。
 もう何回もヤッたのだから、今さら意識するのも可笑しな話だと思う。けれど、気恥ずかしさが残っているのだから、仕方ない。

 どうして、風呂場で思い出してしまったのか。……理由は、俺のポジションにある。


「──準備、しておくべき、なのかな……っ?」


 俺が突っ込まれる方ということは、ケツを使われるということだ。

 衛生的な意味も込めて、浅水先輩は行為のときは大体コンドームを付けてから、俺に突っ込む。だったら、俺だって衛生面に気を遣うべきだろう。

 そうなると……今のこの状況は、そういうことになるのじゃないか?
 そもそも久し振りにケツを使うかもしれないのだから、ある程度慣らしておく必要もあるかもしれない。


「……っ」


 自分の秘所に、そっと手を伸ばす。
 ケツの膨らみに触れて、慌てて手を引っ込める。


「ちょっと待った。ここで慣らしておいたら、ヤる気満々だって浅水先輩に思われるかもしれない……っ!」


 行為のとき、浅水先輩はこれでもかと言うほど、しつこくほぐしてくる。それは俺のことを気遣ってくれているからだと分かっているし、現にそうしてくれるおかげで痛くないわけだから、助かってはいるけれど。
 今までの経験から推測すると……もし、今日の浅水先輩がそういうつもりだったのなら。

 ──浅水先輩は絶対に、穴を弄りまくる。

 そこで俺が、事前にほぐしていたらどうなると思う?

 ──触られたら、俺が自分でほぐしたかどうかなんて……一発で、分かるだろう。

 あっさりと、バレてしまうに違いない。


「いや、でも……全く期待してないってわけじゃ……っ。だけど、いやいやっ、でも……っ」


 誰に言い訳しているわけでもないのに、思考がグルグルと、いったりきたり。
 俺は風呂場で一人、ブツブツと呟きながら頭を抱え続けた。




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