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【愛[収集]】 *

5:春松鷹は甘えられたい

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 上林を家まで送り、帰宅してすぐ自室に戻った春松は学習机の椅子に座った。
 そのまま慣れた手付きでノートを取り出し、空白のページを開く。今日の日付を記入し、春松は日記を書き始めるためだ。


「……今日の上林は、随分と気がそぞろだったな」


 日記に書く内容を頭の中で思い浮かべ、ふと。呟いてから、春松は手を止める。
 そのまま、既に文字が記入されている前のページを捲った。

 ──そこに書かれていたのは、前日の上林がとった言動だ。


「昨日は、特にそんな様子を見せなかったな。一昨日……も、ないか。一週間前からも、その兆しは無し」


 何ページ捲っても、書いてあるのは上林のことだけ。先頭のページに戻って記録していたことを読み直すも、目当ての事柄は見つからない。

 春松は立ち上がり、セックスをする前に上林が眺めて感心していた本棚へ移動する。
 そこから、ノートを三冊ほど抜き取った。


「その前、も……特に、無し。それなら……長期休暇が原因か? なら、夏休み前の上林はどうだったか──あぁ、あった」


 何冊もノートを抜き取り、中身を確認し。ようやく、春松は納得をする。


「去年──高校一年の時もそうだったな。上林は長期休暇前だろ、気がそぞろになるのか。中学生の時も同じようなことが書いてある」


 中学、三年間。長期休暇前の上林が、どんな言動をとっていたか。上林の行動をノートで確認し終えた春松が、力強く頷く。


「──いつの日も可愛いな、上林は」


 そんな感想を誰に伝えるでもなく述べた後、春松はもう一度学習机に向き直った。
 ボールペンを走らせ、登校から下校までの間……上林がとった今日の言動を事細かに全て記入し、読み直す。淡々と誤字脱字のチェックを終えると、そのままノートを閉じた。


「写真、か……」


 春松は普段、写真を撮ったりしない。自撮りなんてもってのほかだ。

 しかし、対価として上林の自撮り写真が貰えるのなら。当然、話は別。
 ノートの表紙を撫でながら、春松は心の中で呟く。

 ──『プリントアウトをして、ノートに貼り付けよう』と。


 * * *


 高校での春松鷹は、優等生だ。

 精悍で、整った容姿。いつも無表情で人当たりはあまりよくないが、教師からの信頼は厚い。

 そんな春松は好きな人──幼馴染兼、交際相手である【上林綾と過ごした痕跡を情報として集める】という……限定的すぎる収集癖を持っていた。





【愛[収集]】 了




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