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続 1章【先ずはセックスさせてくれないかな(牛丸視点)】
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しおりを挟む舌で、飴玉を舐め取る。
その感触がくすぐったかったせいか、子日君は短く息を呑んだ。実に、僕の劣情を刺激する愛らしい吐息だったと思う。
だけど今は、そんな感想を口にしている場合ではない。僕は子日君の指から飴玉を舐め取り、強引に舌で奪う。
「先輩……っ」
子日君の頬が若干赤くなっている気もするけど、たぶん怒りだ。いきなり指を舐められれば、さすがの子日君だって怒る。……と言うか、誰だって怒って当然だよね、うん。
一先ず【飴玉を子日君から奪う】という目的を果たした僕は、すぐに子日君の指を口から解放した。
「なに、して……っ」
僕の身を案じているのか、純粋に怒っているだけなのか。難しい顔をした子日君が、僕をジッと見ている。
だけど、早くこの飴をどうにかしなくては。僕は急いで、飴玉を奥歯で噛み始める。
ガリガリ、ゴリゴリ。……なるほど、味はソーダか。
別にね、クレームってわけじゃないよ? ないけど、これって一応【媚薬】なんだよね? だったらこう、ソーダ味じゃなくてもっと甘酸っぱい味とかにした方が良くないかな? 例えば、そうだなぁ……。イチゴとか、チョコとか──。
「──うッ! ソーダ味からイチゴチョコ味に変わったッ!」
「──とんでもないし、ろくでもないッ!」
爽やかな口内が、一変。僕の口の中は、一瞬にして紛争地へと変わる。
焦って噛んだことにより、飴玉の中心からなにかが溢れ出た。それはトロリとした蜜で、ちなみに味は抹茶だ。
それがいったいどういう意味を持っているのかは分からないけど、だけど……ッ!
──兎田君ッ、味の組み合わせが嫌がらせに特化しすぎだよッ!
これはあんまりだ! 圧倒的にファーストインパクトの【ソーダ】が邪魔すぎる! ファーストインパクトは【ただのファースト】でいなくちゃいけないのに、ただただ邪魔! あとしつこい! しつこくソーダ! ソーダがイチゴチョコと抹茶の和平を完全に邪魔している! あまりにも最低だよ!
口の中で、ドッカンドッカンと味の大爆発が起こっている。それでも僕はなんとか飴玉を飲み込もうと、必死になった。ゴックン、と!
……いや、あの。なんでのど越しは麺のようにツルッとしているの、これ? 兎田君に説明してもらいたいよ、切実にね?
とにもかくにも、口内での味覚による大戦争が終わった。僕は肩で息をしながら、床を見る。
……なんだ、即効性があるわけじゃないのか。意外となんの変化も起こらない体に、僕は安堵する。
制作者が兎田君だからどんなものかと警戒していたけど、ヤッパリただのジョークアイテムに過ぎないらしい。そもそも味のインパクトが大きすぎて、変な気分になれそうもないし。これなら……うん、平気そうだ。
僕の無事を今すぐ子日君に証明して、残りの飴玉は家に帰ってから小瓶もろとも捨ててしまおう。そう決意をしてから、僕は顔を上げた。
するとすぐに、子日君と目が合う。
「先輩、大丈夫ですか? 顔色、真っ青ですよ?」
「……」
「先輩?」
僕の顔を心配そうに覗き込んでくれている子日君を、ジッと見つめる。
不安そうな様子の子日君をまじまじと見つめて、僕は自分の無事を子日君に伝えて、それで……。
……あ、あれっ?
「先輩、どうしましたか?」
──子日君って、こんなに可愛かったっけ?
い、いや、落ち着け。落ち着くんだ、僕。子日君が可愛いことなんて、一万年と二千年前から知っていたはずだ。八千年を過ぎた辺りからさらに愛おしく思っていたはずだろ、僕!
辛辣なところも、素っ気ないところも、つれないところも。全部が全部、可愛いんだ。
根底には僕への優しさがあって、本人はそれを気取られないように隠しているけど、隠しきれないくらい大きな気持ちだから滲み出ていて。そんなところも全部、可愛くて仕方ない。
そんなこと、今になって知ったわけでもないのに……っ。
「大丈夫、ですよね? あの、先輩?」
今日の子日君は、いつもと違うように見える。
……それは、なんでなんだろう?
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