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1話・追い詰めるのが好き
10 *
しおりを挟む唇の音が、鼓膜に伝わってくる。
どうでもいい話だけど……俺はこんなこと、誰にもされたことがない。
「や、めろ……っ!」
腕の中で抵抗しても、高遠原は俺を離さない。
俺を弄んでいるのか……まるで、子犬のような舌遣いだ。
舌先で耳を舐められると……唾液の音が、聞こえてくる。
(くすぐったい……っ!)
相手はあの、高遠原美鶴だ。それくらい、ちゃんと分かってる。
――なのに、俺は。
「ふ、ぁ……っ」
動揺のせいか、うまく抵抗できない。
すると高遠原の手が、俺の体をまさぐり始める。
そしてあろうことか……制服の中に、その大きな手を侵入させてきた。
「なっ、にして……っ! ゃ、だ……っ!」
――かと、思うと。
「――ひ、ぁ……んっ!」
なにを思ったのか、男の……しかも、コイツにとって大嫌いな俺の乳首を。
――つねって、きたのだ。
「冗談、キツイ……っ! やめ――あ、っ!」
話がしたいなら、いっそ抱き締めたままでいいからサッサと終わらせたらいい。
なのに何でコイツは……俺の体を触り始めたんだ?
「やっ、やだ――ん、っ!」
まるで、女の乳首でも弄るような手つき。
俺は自分でそんなところ……弄ったことなんか、ない。
なのに、俺は乳首と同時に耳も攻められ……望んじゃいないのに、声が出てしまう。
「真冬……ッ」
「ゃ、め――ば、ぁ……ひ、っ!」
――この状況は、どう考えてもおかしい。
――なのに、どうして俺は……っ!
(何で、こんな……っ!)
――大嫌いな高遠原相手に、抵抗の一つもできないんだ……っ!
「おね、がい、だから……っ! も、やめ……ん、っ!」
体に、力が入らない。
腰の辺りがゾクゾクして、足が震える。
目的は分からないが、高遠原は俺に……小さな快感を与え続けた。
すると、高遠原は次の段階に踏み出す。
「――っ! おいっ、高遠原っ! どこに――んぁっ!」
制服の、ズボン。
そのチャックを下ろし、下着の中に手を入れてくる。
俺は当然、慌てて後ろを振り返った。
「お前、正気じゃないぞっ! 何をやってるか――」
「分かってるに決まってんだろ。バカにするなよ」
そう言うと同時に。
――高遠原は……俺のペニスを、扱いてきた。
「――や、あっ! んんっ!」
乳首と耳を攻められていたからか、どうやら俺のペニスは既に濡れていたらしい。
その証拠に……高遠原が俺のを扱くと、クチュクチュといういやらしい音が聞こえてくる。
卑猥な音が聞こえるせいで、俺は余計に……反応してしまう。
「俺様に弄られて、感じてるのかよ?」
「ち、ちがう……っ! こんなの、生理現象――ん、あっ!」
「『生理現象』ねェ? ならお前、自分で弄ってもこんだけ体ビクビクさせてんのかよ? 忙しねェなァ?」
耳元で、高遠原が笑う。
「ふぁ……あ、ぁ……っ! み、耳元……やめ、て、ぇ……っ!」
――俺はいったい、なにをされているのだろう。
――この男の目的は、何なんだ……っ?
(いやだ……っ!)
頭では、そう思っているのに。
体はまったく、動いてくれなかった。
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