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2話・無理矢理が好き

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 玄関でされたのと、同じように。

 何の躊躇いもなく、高遠原は俺のペニスを扱き始めた。


「あっ、んぅ……っ!」


 さすがは同じ男、なのだろうか。
 緩急をつけて、どうしたらより一層気持ち良く感じるのか。

 高遠原はそれを、心得ている。


「真冬、お前さァ……敏感すぎだろ」
「ひぁ、んっ! は、はな……せ……っ! ん、ん……っ!」


 抵抗したくても、体が上手に動かない。
 いやでいやで、堪らないのに。


「エロい音たててるくせに、離せってのは可笑しな話じゃねェか? ん?」


 ――先端が、濡れている。

 俺が高遠原をいやがる以上に。
 体は、快感に正直だ。


「はっ、ぁ……ぅ、んっ!」


 こんなこと、コイツにされたくない。
 なのに。


(さっき出したばっかりなのに、また……っ!)


 体が、熱くて仕方ない。
 認めたくないけど、認めるしかないだろう。

 俺は……俺、は。

 ――イきたくて、仕方ないんだ……っ。


「ぃ、やだ、っ! やだっ、手、はな――んんっ、ひっ、あ……あぁ、っ!」


 頭では、しっかりと拒絶している。
 なのに、体は……どうしたって、貪欲だ。


「ふ、あっ、ぁあっ!」


 『射精したい』という欲求のままに。
 精液が、吐き出された。


「んん、ん……っ!」


 白濁としたそれは、大嫌いな男の手と服を、瞬く間に汚していく。

 汚されている張本人はそれを不快に思った様子も見せず、ただただ、口角を上げている。


「はぁ、は……っ」


 二度目の射精による疲労感で、俺はぐったりと脱力した。

 すると、視界の端で高遠原がなにかをし始めている。
 よく見ると……自分の手についた俺の精液を、指で弄んでいるらしい。

 かと思うと。


「……っ! なっ、なに……っ?」


 ――いきなり……俺の体を、うつ伏せに寝かせてきた。


「なぁ、真冬。……男同士のヤり方、知ってるか?」
「は、っ? そ、そんなの知ら――やっ、いやだっ! 俺はそんなこと、シたくないっ!」


 『知らない』と答える前に、直感が伝える。

 ――高遠原は今……俺と【男同士のセックス】をしようとしているのだ、と。

 慌てて振り返ろうとするが、高遠原が背後で笑っている。


「お前、拒否できる立場なのかよ?」


 玄関で、射精したこと。
 そして……たった今、イかされたことも。

 ほんの一日で、握られた弱みが……多すぎる。


(拒否したら、どうなるか……そう考えたら、拒否なんて……できっこ、ない……っ)


 男同士のヤり方なんて、俺は本当に知らない。
 だからこそ俺は、今から高遠原になにをされるのか、分からなかった。

 脱がされかけていたズボンに手を添えられた俺は……怯えるように、目を閉じた。




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