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3話・振り回すのが好き

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 舌が、ペニスを這う感覚。
 こんなの……俺は、知らない。


「んんっ、やっ、やだ……っ。舌、動かす――ん、っ!」


 裏筋を、高遠原の舌がなぞった。
 根元から、先端。そうされると、腰の辺りにゾワゾワとした感覚が流れる。

 俺は咄嗟にシーツを握り締めて、高遠原からのフェラに耐えた。


「さっ、先っぽ、やだ……っ! あっ! やだ、やだってば……んっ!」


 いやだと主張したら、高遠原はそこを執拗に攻める。
 身をよじったところで、意味はない。


「ぁあ、あっ!」


 高遠原は着実に、俺が感じるポイントを探っている。

 好いところに舌が当たると、腰が跳ねた。
 唾液の音が聞こえると、耳を塞ぎたくなる。

 だけど逃げようとしたら、気持ち良くされて。


(こ、んなの……っ)


 頭も、体も、変になる。
 大嫌いな男にこんなことをされて、いやでいやで堪らないはずなのに。


「たっ、高遠原ぁ……っ!」


 口の中に出したくて、仕方ない。

 ――射精したい。

 ――早く、解放してほしい。

 高遠原にペニスを喉奥まで咥え込まれると、目の前に星が散りそうだった。


「あっ、ぁあ、っ! も、もぉ、だめだ……んぁ、っ! で、出ちゃう、からぁ、っ!」


 体が硬直してしまいそうで、必死に首を横へ振る。

 だけど、高遠原は止まってくれない。
 一際深いところまで、ペニスを咥えられて。


「ひっ、ぁああっ!」


 我慢なんて、できっこなかった。

 情けない声をあげて、俺は高遠原の口に精液を吐き出す。


「……ッ」


 一瞬だけ、高遠原が驚いたように声を漏らした気がする。
 そうとは気付いても、射精は止められない。


「ぅ、うぁ……ん、くっ!」


 出している最中なのに、高遠原は俺のペニスを吸った。
 それが気持ちよくて、俺はしっかりと射精しきる。


「はっ、ぁ……っ」


 絶頂後特有の、脱力感。それと同じくらいの満足感に、吐息を漏らす。

 射精を終えた俺は、ベッドにぐったりと横たわる。


(凄く……気持ち、よかった……っ)


 高遠原が悦んだのも、納得かもしれない。

 ……ん? 高遠原が……?

 ぼんやりとした頭が、急に覚醒する。


「お、お前……っ! い、今のは、違うからなっ!」


 俺のペニスから口を離した高遠原に、慌てて言葉で噛みつく。

 そうだ、そうだった。相手は高遠原だ。
 更なる弱みを握られてしまった俺は、俺の精液を飲み込んだであろう高遠原を睨みつける。

 だが、そんなのどこ吹く風。


「腰浮かせてたクセに、よく言うぜ」


 高遠原は相変わらず、強気だ。
 口元を指で拭って、高遠原は勝気に笑う。

 悔しいことに、そんな顔すらも端整だ。


(く、屈辱だ……っ!)


 結局、その日はそれ以上なにもされなかったけれど。

 これで俺たちの関係が終わることは……なかった。




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