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3話・振り回すのが好き

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 高遠原の親は、金曜日だけ家に不在。
 仕事の関係でそうらしい。それは、子供の頃からずっと。

 だから俺は……毎週金曜日、高遠原の家に呼ばれた。





 高遠原に脅されるようになって、二ヶ月後。

 学校では接点がないのに、俺は毎週金曜日だけ……決まって、高遠原の家に向かった。

 フェラしたり、抱かれたり、キスされたり。
 今日だって、そうだ。


「お前、マジで……最悪だ、っ」


 二回も中出しされた俺は、ベッドの上で悪態を吐いた。

 こんな関係を続けているせいか。最近は、自分から高遠原に話しかけることも増えてしまった。


「ちゃっかり楽しんだクセに、減らず口を叩くのは相変わらずだな」
「最近、どうやってお前を殺してやろうかって考えてる……っ」
「ハハッ! それはイイな! 俺様のことだけ考えて生活してろ」


 そして前よりも……高遠原のことを考える回数が多くなった、気がする。

 ――いつか、絶対に仕返しをしてやりたい。

 ――俺だけこんな、敗北感を味わうなんてごめんだ。

 でも。


「……何だよ、ジロジロ見て」
「いや? 可愛いな、と思ってな?」
「……お前のそれ、聞き飽きた」


 目が合ったから睨んだのに、高遠原は笑顔だ。

 ……こういうことを言われると、どう返していいのか分からない。
 頭が一瞬……ほわぁんとなって、胸の辺りがムズムズする。

 その後に、慌ててハッとして平静さを取り戻す。


「何だよ、照れるなって」
「照れてない」
「顔が赤いぜ?」
「こ、れは……。疲れたから、ただの酸素不足」


 ――顔が、赤い?


(高遠原に『可愛い』って言われたから?)


 そんな理由で、赤くなるとでも?

 ――そんなの、絶対にありえない。


「真冬」


 二人きりになると、高遠原は俺のことを下の名前で呼ぶ。

 ひどく、優しい声で。


「なに――」


 振り返るとなにをされるかは、分かっている。


「ん、っ」


 キスだ。

 啄むような優しいキスの後、舌を入れられる。
 逃げようとしても、舌を絡めるよう強要されて……従ってしまう。


「ん、っ。……ぁ、んん……っ」


 高遠原は、キスが上手い。

 これだけ整った容姿だ。今まで、数え切れないくらいの恋人がいたに違いない。
 それは、キスも上手になるくらい。


(俺のこと、本当に好きなのかよ……っ)


 高遠原のことを考えていると、もやもやする。

 俺のことを『好き』って言ったくせに……『付き合え』とは言わない。
 今までと変わらず女子と話している。

 そもそも……子供の頃から俺が好きだったなら、何で恋人なんか作るんだよ。


(ムカつく……)


 キスから解放されて、俺は高遠原の胸を押す。

 不可解で、不愉快な感情。


(俺のこと……本当は、どう思ってるんだよ……っ)


 知りたくないのに、知りたい。

 好きって言われたくないのに、そうじゃないような対応をされるとムカつく。

 そして俺は……更に、高遠原を嫌いになるんだ。





3話・振り回すのが好き 了




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