大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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5話・監視するのが好き

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 金曜日の夜。

 美鶴との行為が終わって、いつの間にか眠っていた俺は。


「……あぁ、そうか」


 美鶴の声で、目が覚めた。


(独り言……じゃ、ない。何だ……っ?)


 聞き耳を立ててみる。

 どうやら美鶴は、俺が起きたことに気付いていないらしい。
 俺を起こさないよう、囁くように話している。

 そして、衝撃的な言葉を口にした。


「――好きだ」


 独り言じゃ、ない。

 電話だ。
 電話の相手に、言っている。


(好き、って……えっ?)


 聞き間違いじゃ、ない。
 美鶴は今ハッキリと……誰かに。


(『好きだ』って、言ってた……)


 美鶴が、誰と話しているのかは分からない。

 だけど、何故か……。


「美鶴……?」


 電話の邪魔をする気なんて、なかったのに。
 俺は思わず『今起きました』といった声色で、美鶴の名前を呼ぶ。

 すると俺の声が届いたのか、美鶴がハッとした様子で振り返った。


「切るぞ」


 電話の相手はまだ話したいことがあるのか、なにかを言っている。
 だけど美鶴は、無視をした。

 すぐに通話を終わらせると、スマホを手放した手で、俺の頭を撫でる。


「今の、聞いてたか?」
「え、っと……」


 ――聞いていた。

 ――美鶴が、誰かに『好き』って言っているのを。

 だけど。


「電話してるのは、わかったけど……相手とか、美鶴がなに言ってるのかとかは……聞こえて、ない」


 俺は思わず、嘘を吐いた。
 これが正答だとは、思わない。

 なのに。


「そうか」


 美鶴が露骨に、ホッとした表情を浮かべた。

 ――それが少しだけ、ムカつく。


「相手、誰だ……?」


 あくまで、寝ぼけているフリをしてみる。

 目をこすりながら訊くと、美鶴は一瞬だけ口ごもったが……すぐに答えてくれた。


「……詩織」


 気まずそうに、ポツリと。


「……胡桃沢さん?」
「そう」
「こんな夜中に、か……?」


 座っている美鶴を、寝そべったままジッと見上げる。
 そうすると、美鶴がバツの悪そうな顔をした。

 ――きっと……踏み込まれたく、ないんだ。


「真冬には関係ないから、寝てろ。……それとも、もう一回するか?」
「し、しない……っ」
「あっそ。それは残念」


 美鶴の大きな手が、俺の前髪を上げる。

 そのまま額に口付けて、美鶴は俺の頭を、小さな子にするような手つきで撫でた。


「おやすみ、真冬」


 目が覚めたはずなのに、美鶴にそう言われたら……不思議と、眠たくなる。


『――好きだ』


 美鶴には、きっと……沢山、彼女がいた。
 だから、俺以外の人にそういう言葉を言っていたって、変じゃない。

 ……変じゃない、のに。


(美鶴は、胡桃沢さんのことが……?)


 美鶴が胡桃沢さんに告げた、好意。
 それを聞いた俺は、何故か。


(美鶴……っ)


 すごく、美鶴に抱きつきたくなった。

 ……そんなこと、できやしないけれど。




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