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5話・監視するのが好き

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 美鶴が加わって、三人で過ごすことが当たり前になってきた。

 そう思うようになってから、すぐのこと


「明日からはつるまない」


 俺様で暴君な高遠原美鶴は、不遜な態度でそう言い放った。


「唐突すぎるだろ、お前さん」


 徹が俺の弁当の玉子焼きを盗んで、美鶴を非難した後に頬張る。

 確かに、美鶴は唐突すぎると思う。
 いきなり一緒に行動し始めたかと思えば、今度は突然俺たちから離れるだなんて。


(……まぁ、別に、いいけど……)


 美鶴がいないのなんて、普通だ。むしろ、小学校のあの噂話以来、美鶴がいないことこそ通常だったんだから。


(なのに何で、俺はちょっとだけ……モヤモヤっとしてるんだろう)


 何だか、最近の俺は変だ。
 なにを言っていいのか分からず口を閉ざしていると、美鶴が突然。


「オイ」


 徹の手を掴んだ。
 そのまま美鶴は、徹相手に睨みをきかせる。


「俺様の諸星から、なに勝手にオカズ奪ってんだよ」


 ……ん?
 思わず、顔を上げた。

 美鶴は徹の腕を掴んだまま、不機嫌そうだ。

 だけど徹は、全然驚いていない。むしろ『どんとこい、こういうの大好き』って顔してる。……何でだ?


「いやいや。真冬はお前のじゃねーじゃん?」
「俺様のだ」
「うっわ、重たくね? 俺、そういう重いのってどうかと思うけどな~? でも、見てる分にはサイッコーに面白い!」
「俺様はお前を見ていたら最悪の気分だがな」


 何故だか美鶴は、徹が俺にちょっかいをかけると不機嫌になる。

 そして、意味不明なことを言うんだ。


(玉子焼きくらい、欲しいならやるのに……?)


 自分のモノ扱いされるのは、複雑な気持ちだけど。
 オカズ一つで喧嘩を吹っ掛けるのは、どうかと思う。


「美鶴」
「ンだよ」


 絶賛ご立腹中の美鶴が、俺を見る。

 俺は弁当箱に入っている玉子焼きを箸でつまんで、美鶴の口元に持っていった。


「玉子焼きの権利を主張するくらいなら、食べたいって素直に言えよな」


 何ともないように、差し出してみたものの。


(どっ、どど、どうしたんだ、俺……? 何でこんなことしてるんだ?)


 内心、パニック寸前だ。


(美味しくなかったらどうしよう……そもそも、食べてもらえなかったら? っていうかまず、何で俺は美鶴の横暴を無視しないで律儀に対応してるんだ? 美鶴と俺は友達じゃないんだぞ……っ!)


 徹相手とは違う、変な緊張。
 しかも、グルグルといやなことばかりが頭をよぎる。

 だがそんなこと、美鶴には関係ない。


「言わなくても察しろ」


 俺の心配なんて、気にせずに。
 あまりにも自然に、美鶴は……俺の玉子焼きを、食べた。


「……お前って、本当に……ワケ、わかんねぇ」


 徹がニヤニヤしているのは、見なかったことにしよう。




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