65 / 84
6話・大事にするのが好き
9
しおりを挟む恋は、落ちるもの。
自分の意思じゃどうにもできないし、相手に非もない。
すごく不思議で、すごく勝手。
俺の中で【恋】のイメージは、そんな感じ。
でも、これは……あまりにも。
「そ、んな……理由、で……っ?」
横暴とか、自分勝手とか、ワガママとか。
そういうのには、慣れているつもりだった。
だけど、これは……美鶴のとは、全然違う。
「そん、なの……っ! 美鶴はっ! なにも悪くないじゃないですかっ!」
この人たちは、演技が上手なんかじゃない。
――この人たちは……思い込みが、激しいんだ。
「何だよ、いきな――」
「勝手に好きになったくせに、美鶴が振り向いてくれないから八つ当たりとか……バカじゃないですかっ! そんなの、俺、メチャクチャ無関係じゃないですかっ!」
「無関係じゃありません。貴方が、高遠原さんを寝取ったのでしょう?」
「そう思うんだったら自分たちからアプローチするなりなんなりしたらよかったじゃないですかっ!」
なんて、茶番だろう。
勝手に片想いして、アタックもしてないのに振り向かれないと拗ねて。
この人たちも、美鶴も……みんな、みんな……っ!
「――アンタたちは大バカヤロウだっ!」
美鶴もバカだ。
子供の頃、俺のことが好きだったんなら……酷いことなんかしないで、最初からそう言ってくれたらよかったのに。
そうしたら、俺は……美鶴のことを、嫌わなかった。
――きっと、もっと、早く……好きに、なってたのに。
子供の頃から、恋愛沙汰でトラブルに遭うって呪いでもかかっているのかもしれない。近いうちにお祓いでも行こう、そうしよう。
怒鳴ったことで、頭はやけにクリアだ。俺は肩で息をしながら、先輩たちを睨む。
そこでようやく、自分の立場を思い出した。
「……テメェ、随分と生意気なこと言うじゃねェか……ッ!」
リーダー的先輩が、青筋を立てながら俺を睨んでいる。
そんな先輩が、手を振りかざしたんだってことに気付いたとき。
「――俺たちがこれだけ想ってるなら、あっちもそうに違いないだろうがッ!」
俺は思い切り、顔を殴られた。
「う……っ!」
鈍い痛みが広がる。
八つ当たりだとか、逆切れだとか……そんなことを言ってる場合じゃないのは、さすがに分かった。
「テメェには胡桃沢って女がいるんだろッ! だったら、俺たちが誰をどう想おうが関係ねェだろォがッ!」
もう一発、顔を殴られる。
よろめいても、絶対に倒れてなんかやらない。
――こんなに一方的な想いが、恋?
――正当な理由もなく、美鶴を悪者にしている……この人たちの、これが?
だったら、絶対に……っ。
「――俺の方がっ! 美鶴のこと……好きに決まってるっ!」
俺のモヤモヤしてる気持ちの方が、よっぽど恋らしいじゃないか。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
永久糖度
すずかけあおい
BL
幼い頃、幼馴染の叶はままごとが好きだった。パパはもちろん叶でママはなぜか恵吾。恵吾のことが大好きな叶の気持ちは、高校二年になった今でも変わっていない。でも、これでいいのか。
〔攻め〕長沼 叶
〔受け〕岸井 恵吾
外部サイトでも同作品を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる