恋模様シーイング

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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7章【初体験アテンション】

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 カシャリと、シャッター音が鳴る。

 その音に気付いたのか。

 それとも単純に、冬総の気配を察知しただけなのかもしれないが……。


「……ん、っ?」


 秋在がそっと、瞼を開けた。

 ぼんやりとした瞳が、冬総を映す。


「……フユ、フサぁ……っ?」
「あぁ。冬総だぞ」
「……そっか、フユフサなんだぁ……っ?」


 そう呟いた秋在が、ふにゃりと笑う。

 そして、抱き枕から手を放してしまった。

 若干その様子を『残念だ』と思いつつ、冬総は秋在に近付く。

 すると……秋在が、近付いてきた冬総に向かって手を伸ばしてきた。


「俺にうつすかもとか、そういうのはないのか?」
「あったら、帰るの……?」
「意地でも帰らねェけど」


 さすが秋在だ。

 冬総の愛情を、よく理解している。

 求められるがまま、冬総は秋在を抱き締めた。


「……隣、いいか?」
「んっ」


 コクリと、秋在が頷く。

 秋在が寝ているベッドに横たわり、冬総はしっかりと秋在を抱き締め直す。


「俺、みかんゼリー持ってきたんだけど……食べられそうか? ……ってか、薬は飲んだのか?」
「まだ、飲んでない……」
「じゃあ、まずはゼリーだ。みかんって平気だったよな?」
「平気。……でも、今はいい……」


 今はまだ、こうして横になっていたいらしい。

 ゼリーよりも自分を選んでくれのは、純粋に、喜ばしかった。

 しかし、秋在の体調を心配しているのも本心だ。


「なにか食べないと、薬飲めないぞ?」


 正論をかざされ、秋在が顔を上げる。

 その表情は、どことなくムッとしていた。


「……可愛く睨んでも駄目だぞ。……五分しか待たないからな」
「なにか、食べればいいの……?」
「あぁ、そうだな。……もしかして、部屋になにか――」


 ――瞬間。


「――ぁむ、っ」
「――うお……ッ!」


 冬総の、首筋に。

 ――秋在が、歯を立てた。

 決して、痛くはない。

 だが、妙な感覚だ。

 秋在は噛むだけでは飽き足らず、舌で舐め、ときには吸っている。


「あ、秋在……? 俺、走って来たから……あ、汗、とか……ッ」
「ひょっふぁい」
「『しょっぱい』じゃなくて……う、ッ」


 正直な話。

 好きな子にこんなことをされて、なにも感じないほど冬総は枯れていなかった。

 ましてや、相手が秋在なのだ。

 学校がある日は、毎日のように体を重ねていた相手。

 冬休みに入ってから、まだ数日しか経っていないが……だとしても、冬総からすると長い禁欲生活だったわけで。


(我慢だ、我慢しろ、夏形冬総……ッ! 相手は病人だ、病人だぞ……ッ! いくら、熱で潤んだ目が色っぽいとか、ちょっと汗ばんだ首筋が美味しそうとか、そもそも秋在自身……意外とそういうつもりなんじゃないか、とか……そういうことを考えるのはやめろ……ッ!)


 自分の欲望を精一杯律してみるも。


「ん、む……っ」


 秋在は気にせず、くぐもった声を漏らし。

 冬総の首へ、愛撫に似た噛みつきをしてくる。


(が、ががッ、我慢しろッ、俺ェエッ!)


 心の中でそう叫んでいる冬総に。

 ……秋在は当然、気付かなかった。




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