恋模様シーイング

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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7章【初体験アテンション】

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 二十分ほど、秋在に噛まれて。


(――し、死ぬかと思った……ッ! 主に、俺の下半身と理性が……ッ!)


 冬総はようやく、解放された。

 なけなしの理性をフル動員させた冬総は、ひとまず、自分で自分を褒める。

 しかし、そんなことは露知らず。

 上体を起こし、ゼリーを食べ始めた秋在は……すっかり、普通の病人らしくなっている。

 チマチマとゼリーを食べ進める様子を、冬総は和やかな気持ちで見つめた。

 だが、観察をしている場合ではない。


「秋在。……何で、風邪ひいたんだよ?」
「んむ?」
「いや『んむ?』じゃなくて……。……っていうか、冬休み始まってから……一回も、連絡くれなかったし……」


 スプーンを齧ったまま、秋在は小首を傾げる。

 冬総は秋在を見つめたまま、ブツブツと文句に近い質問を投げかけた。

 しかし、秋在はあっけらかんと答える。

 ――冬総にとって、度し難い理由を。


「――サンタさん捕獲作戦の準備、してた」


 思わず、冬総は目を丸くする。


「……は?」
「サンタさん捕獲作戦の準備」
「いや、聞こえなかったワケじゃないんだが……」


 突然、秋在がスプーンの先端を勉強机に向けた。


「近所に住んでる子供をリストアップして、サンタさんがどの家にいつ、どう侵入するのかっていう予測を立ててた」


 勉強机の上には、束で紙が置いてある。

 ひっくり返してみると、そこには人の名前や家の外装などがメモされていた。

 ……どうやら、本気で【サンタさん捕獲作戦の準備】をしていたらしい。


「そしたら、こうなったみたい」
「……もしかして、風呂の後とか……髪、乾かさなかったのか?」
「寝る間も惜しんだ」


 おそらく……風呂に入ってすぐ、外へ出たのだろう。

 真冬の夜にそんなことをしたら……風邪の一つくらいひいたって、おかしくはない。


「……その結果が、クリスマス直前の風邪ってことだけど……秋在は、どう思う?」
「サンタさんの呪い」
「いやにポジティブだなぁ……」


 すぐさま「そんなところも好きだけど」と付け足し、冬総は椅子から立ち上がった。

 そのまま秋在へ近付き、額に手をあてる。


「今日は熱、計ったか?」
「うん。……今から」
「それは『うん』じゃないな。……ホラ、コレ」


 ベッドに置いてある体温計を、冬総は秋在へ渡した。

 ゼリーを食べ終えた秋在は、素直に体温計を受け取る。

 そして、躊躇いなくシャツを下げた。


(……う、エロい……ッ)


 思春期らしく、冬総は秋在の素肌を凝視する。

 秋在は気付いていないのか、気にしていないのか。

 そのまま、体温計を腋に挟んでいた。


(無防備な秋在、メチャクチャ、イい……ッ! キスしてェ……ッ!)


 そこで冬総は、確信する。

 ――今日は、とんでもない日になるだろう。

 ――主に、理性の面で。……と。




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