恋模様シーイング

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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終章【恋模様シーイング】

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 激動の昼休みを終え。

 授業もつつがなく受けた冬総は、放課後になり。


(……秋在、どこ行ったんだ?)


 ――トイレに行ったわずか数分の間に、秋在を見失っていた。

 冬総は教室内をグルリと見回し、秋在の姿を探す。

 ……だが、見当たらない。


(鞄……は、置いてあるよな)


 秋在の机には、鞄が置いてある。

 ということは……まだ、帰ってはいないということ。

 いったい、どこに行ってしまったのか。

 少し考えた後、冬総はドキリとした胸騒ぎを感じる。


(……まさか、また職員室に……ッ?)


 そう思うや否や、冬総は慌てて職員室へ向かおうとした。

 ――が。

 ――ポケットに入れていたスマホが振動したことにより、その行為を阻止した。


(……メッセージ? 相手は……秋在?)


 新着メッセージが届いたことを知らせる、通知。

 メッセージの差出人は、秋在だった。

 冬総はすぐさまメッセージアプリを起動し、秋在から送られてきた内容を確認する。


『さがして』


 その、たった四文字。


(かくれんぼ、ってことか……?)


 どうしていきなり、そんなことを始めたのか。

 それは本当に、学校でやらなくてはいけないことなのかも、冬総には分からない。

 だが、秋在は『さがして』と言っている。

 それなら、冬総が返す答えは……一つだけ。


『待ってろよ』


 そう送り、冬総はスマホをポケットへとしまい込む。


(さて、と……。どこに向かうか……)


 秋在は普段、教室から動かない。

 秋在が特段好みそうなところや、思い入れのありそうな場所が……パッとは、思いつかなかった。

 それでも、冬総は教室を出る。


(真っ向から考えても分かんねェなら、逆転の発想だ。……秋在は、隠れてるんじゃない。秋在は、俺が来るのを待ってるんだ)


 そう思い直し、冬総は廊下を歩く。


(秋在が、俺を待っていてくれそうなところ……ってことに、なるよな)


 歩きながら、冬総は窓の外を眺めた。


(……外か?)


 隠れるのなら、どこかしらの教室という可能性が高い。

 だが、もしも待ってくれているのなら……。


(当たってたら、秋在のことを思い切り抱き締めさせてもらうぞ)


 意気揚々と、冬総は歩き出した。





「……早かったね」


 蹲っていた秋在が、顔を上げる。

 その表情は、ほんのりと驚きを含んでいた。


「他に思いつかなかったからな。ここじゃなかったら『ヒントくれ』って言ってた」


 冬総はそう言い、秋在の隣にしゃがみ込む。

 秋在が冬総を待っていた、思い入れのある場所。

 ――それは。

 ――冬総が初めて、秋在との交際を他人に打ち明けた場所。

 ――【校舎裏】だった。


「春が近いって言っても、ヤッパリまだ冷えるな。……秋在、寒くないか?」


 秋在は、手袋とマフラーだけを装着している。

 肩を抱き、距離を縮めると。


「……クラス替えのこと、考えてた」


 ほんの少し冷えた体から。

 弱々しい声が、紡がれた。




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