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2章【主体的には動かない、諧謔的なオメガ】
1 *
しおりを挟むあの出会いから、一年が経った。
新人歓迎会で、矢車と関係を持ってからというもの。
――松葉瀬は矢車と、セフレのような関係性を維持していた。
松葉瀬の気が向いたとき……主に、怒りの矛先として。
松葉瀬は矢車で憂さ晴らしをするようになったのだ。
対して、矢車は松葉瀬から誘われても……拒絶をしない。
家に押しかけられては中へ招き、家に呼ばれたら何時であろうと向かった。
――それは、職場でも。
ポタッ、と。
なにかが滴る音が、男子トイレの個室に響く。
「んっ、んぅ……ふぁ、ん……っ!」
立ったままだというのに、矢車は背後から何度も何度も体を突き上げられた。
その度に、矢車の口からはくぐもった声が漏れる。
「どうした、ヘンタイ。いつもはもっとうるせェクセに、我慢なんかしやがって」
「んん、っ!」
「ハッ。今、すげェ締まった……ッ。声抑えるシチュエーションに、興奮でもしてんのかよ」
自分の両手で口元を押さえる矢車は、潤んだ瞳で後ろを振り返った。
真後ろで、矢車を犯す松葉瀬は……珍しく、笑顔だ。
「オイ、クソ後輩。……ナカと外。どっちに出されてェんだ?」
「んぅ、ん……っ!」
「なにも答えねェならナカに出すぞ」
「んんぅ、んっ!」
矢車は何度も、首を横に振った。
男にしては伸びた髪が、松葉瀬の顔に当たる。
それのせいか……それとも、もともとか。
「答えは、なしだな。なら、ナカ出しに決まりだ」
「ん、ふ……んんっ、んぅっ!」
矢車の耳元で囁く松葉瀬が、腰を打ちつける速度を上げる。
松葉瀬の絶頂が近いと悟った矢車は、何度も首を横に振り、ナカに出されることを拒んだ。
が、苛立つ松葉瀬には逆効果だった。
「んんっ、んっ! んんぅ、っ!」
一気に、奥まで突き上げられ。
そのまま、熱い飛沫が注がれる。
内腿を痙攣させた矢車も、松葉瀬に倣うよう、射精した。
「ん、ふぅ……っ、は、あ……っ」
情事が終わった安心感からか、矢車は自分の口から両手を放す。
快楽によって緩みきっていた口からは、唾液が零れていたらしい。矢車の手は、恥ずかしい程に濡れていた。
「も、センパ……ほんと、サイテー……っ」
「は? 駄目って言わなかったのはテメェだろ。口があるなら言葉で拒絶しろ、ボケ」
「自己中心的で、サイテーです……っ」
「そう言いながらケツ締めてきてんじゃねェよ、ド淫乱が」
ゆっくりと逸物を引き抜いて、松葉瀬は終わりと言いたげに矢車の耳を強く噛んだ。
矢車は一瞬の痛みに眉を寄せた後、松葉瀬を振り返る。
「ボク、これから会議の見学に呼ばれてるんですけどぉ?」
「ならナカ出しでいいだろ」
「フツーに考えて外じゃないですかぁ? スーツを汚さないように出してくださいよ、種馬センパイ」
挑発的な台詞に、松葉瀬も眉間の皺を深くした。
その後……まるで報復だと言わんばかりに、今度は反対側の耳を噛んだ。
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