それでもあなたは留学しますか ―不幸な僕の留学記―

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第十三章 公共交通も敵

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 ドイツに並ぶエコ大国オーストリアには、自転車の無料貸出サービスがあります。
 これは、クレジットカードなどを登録しておけばその街の各所にある駐輪場から指定の自転車をいつでも借りられて、一時間以内に同じまたは違う駐輪場に戻せばノーチャージで利用できます。
 僕もすぐに使ってみたのですが、日本のクレジットカードとは相性が悪かったらしく、自転車を駐輪場に返したのに永遠に借りていたことになっていました。
 レンタル会社から勧告状が届き、慌てて事情を説明に行き、莫大な請求はなんとか撤回してもらえましたが、それ以来、その便利なサービスは怖くなり使わなくなりました。
 しかしウィーンだからと言って毎回馬車を使うこともできませんし、バスの路線は往路復路の経路が異なるなど複雑すぎます。
 そこで、当然のことながら選択肢は電車一択となるのです。

 電車と言えば、僕は小学校のころから電車通勤でした。
 たった十分程度でしたが、そのころから毎日ラッシュの電車を経験していました。
 近所のお兄さんと一緒に行くこともありましたが、もちろん一人のこともありました。
 そしてそんなある日、僕は痴漢に遭います。
 後ろから知らない大人に股間をつかまれた恐ろしさは今でも鮮明に覚えています。
 恐怖から、犯人の顔を見ることもできませんでした。

 だから、もともと僕は電車が好きではないのですが、定時に必ず到着する日本の電車はまだマシです。
 ヨーロッパの電車はストライキでしょっちゅう止まりますし、三十分程度の遅延は日常茶飯事です。

 ヨーロッパに来たばかりの僕は、電車の乗り方も充分に知らず、席が空いていたからという理由で一等席に座り、罰金を支払ったこともあります。
 馬鹿かと思われるかもしれませんが、ヨーロッパの電車は一等席と二等席に一見そこまで大きな差はないのです。

 ウィーンでの生活でも、知らぬは損ということを散々思い知らされました。

 まず、自動改札機のないウィーンでは、
『乗車券を買ったら、乗る前に必ず自動検札機で使用開始時刻を刻印しなければならない』のですが、
 それを知らず、乗車券を購入したのに、刻印がなかったために罰金を支払う羽目になりました。

 さらに、これは留学終了間近に知って愕然としたのですが、(学割の効く)学生用の定期券にも種類があるということです。
 もちろん、僕の持っていた学生定期も一万円程度で『一セメスター(約四か月)市内の地下鉄、バス、トラムが乗り放題』だったので通常の年パスよりは十分安かったのですが、定期を買う際にウィーンに住居がある証明を見せていれば、さらにその半額で買えていたのです。

 ちなみにオーストリアは大学の授業料もほぼ無料で、そのお陰で僕も留学ができていたわけですが、政府が授業料を本格的に導入しようとしたことがありました。
 これには全学生が大反対。数万人規模のデモ行進が連日行われ、なんとか授業料はなしのままとなりました。もちろん生活がかかっていたので、僕もプラカードを持ってデモに参加し、授業料導入反対を訴えていました。
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