無職無双〜無職になった僕は妹と旅に出る〜

タカノス🦅

文字の大きさ
13 / 64
第二章 覚醒編

10 戦闘になりました

しおりを挟む
ーーふざけんじゃねえぞ!

外にいる僕まで思わず身を縮めてしまう怒号だった。

向けられた獣人の子供はもっと怖いだろう。

「お前はどういう耳をしてんダァ!? その耳は飾りなのか、シフォン!!」

「痛いです! 殴らないでください、お頭!」

悲鳴が聞こえる。子供がまた殴られているのだ。
なんてひどいやつだ。

「オレはなあぁ! 金髪のガキを連れてこいって言ったんだ!」

「いたっ!」

「それが! どうして荷物を持ってくることになるんだ!? 荷物を奪うんじゃなくて、ガキを攫えって言ったんだよ!!  テメェの頭の中はどうなってんだ!?」

「殴らないでください! お頭やめて、です!」

「ウルセェ! 口答えすんな!」

「っ!」

なおも子供は殴られ続けている。
助けてあげたい気持ちはあるが、今動くのは得策ではない。それに会話の中に気になる言葉があった。

金髪のガキ。攫う。

十中八九アリスのことだ。

やりとりから推測するに、
お頭と呼ばれていた大柄な男が、この子供にアリスを誘拐するよう命じた。
しかし子供は何をどう聴き間違えたのか荷物を奪って持ってきた。
それにお頭が腹を立て子供を殴っている、という状況なのだろう。

なぜアリスを拐おうとしていたのか、その理由を知りたい。

もう少し様子を見るか。

「ああくそ、デビット達は別の任務に行かせてるしな……オレが行くしかねえか」

がちゃっと扉が開く。

僕は急いで木陰に隠れた。

「お、お頭がいくんです……?」

たたたと子供が大柄な男に近づいた。

「あぁ? テメェが命じたことこなせねぇからだろが! この任務に失敗すればオレの首が飛ぶんだよ!」

「ぼ、ボクはどうすればいいのです」

「知るかボケェ!! テメェはもう用無しだ! 言われた通りにこなせない道具はゴミ以下なんだよ! そのへんで犬らしく雑草でも食ってろ!」

「ひ、ひどいです」

「あぁああ! クソクソクソクソ! なんでオレがガキ一匹のために動かなきゃならねえんだよ!」

ボサボサの髪をかきむしりながら男は走り出す。

おそらく僕たちを探しにいくのだろう。

置いてけぼりの子供はメソメソ泣いていた。

あの男が小屋から離れれば荷物を取り返すことができそうだ。子供の方はあまり強そうには見えないし。

気がかりがあるとすれば、あの子供が荷物を奪った犯人っぽいということか。

だが今危険なのはあの男一人のみ。先ほどからやばい匂いがぷんぷんしているのだ。

さっさとどこかに行ってほしい。本心である。


「ーーあん? ちょっと待てよぉ?」

と、どうしたことか。

男が急に動きを止めた。
ぐるっとあたりを見渡している。何かを探しているのか。

「ーーーっ!」

すると、男がこちらを見た。束の間目があった、ような気がした。

いや、気のせいだ。

僕は完全に隠れられているはずだ。あちらからは見えないはず。

しかしどう言うわけか、体が動かない。

まるで蛇に睨まれたカエルのようだ。

今少しでも動いてしまえば見つかってしまう。そんな気がする。

背筋が震え、冷や汗が流れる。

しばらくその状態が続く。

そして。

「ーーーークハッ!」

男が高らかに笑ったと思うと、先ほどまでの圧迫感は何もなかったかのように霧散した。

「クククク! ハハハハハハハ! おい犬っころ、こっちこい」

「は、はいです」

男に呼ばれた子供が歩み寄った瞬間、

「気づいていたんならそう言えやボケェ!!」

罵声と共に蹴飛ばされた。

「な、なんのことですぅ」

「お前ほどの索敵スキルがあって気づかないはずがねえんだよ! オレが気づかなかったら無駄足になるところだったじゃねえか! ボケ!」

ーーまさか。

男の言葉に僕は危機感を感じた。


「まあ理由はどうでもいいか。あとで躾ければいいだけの話だしなぁ! 
それより今はーーーおい! そこで隠れたつもりになっているお前! バレバレなんだよぉ! 出てこいよ!」

ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながら大男が挑発してくる。明らかに僕のことだ。
大人しく姿を見せるべきか。
いや、釜をかけているだけかもしれない。
確証があるまでまだ動くべきではない。そう判断し、呼吸を抑えつつ僕はゆっくりと後退り撤退の準備をする。
男がこちらに近づいて来ればすぐに逃げれるようにするのだ。

「ちっ、シカトかよ。まあいいか。こっちを抑えればいいだけの話だしなぁ! クハハハ!」

そう言って男は鼻歌混じりにアリスが隠れる茂みの方へ歩み寄っていった。

くそ。
なんてことだ。
僕だけじゃなく、アリスの居場所まで感知していたらしい。

僕がいる場所と男がいる場所ではアリスまで同じぐらいの距離だった。

しかし男はどんどんアリスの元に近づいている。

どうする。

どうすればいい。

迷っている間にも男はアリスに危害を加えるかもしれない。

逡巡は一瞬だった。

「やめろぉおおおおおお!!」

僕は木陰からを身を乗り出し、疾走した。アリスを守ると決めた。その約束を果たすことが最優先だ。

「ーーークククっ! てめぇか! その顔は知ってるぞぉ! 標的の護衛って話だったなぁあ?」

好戦的な笑みに迎えられながら、僕は男にナイフの刃を向ける。

男は腰に刺していた曲刀シミターを余裕たっぷりに引き抜くと、迎え撃つ構えをする。

ーージャキンッ!

ナイフと曲刀がぶつかり火花を散らす。

「護衛にしては弱い気配なんじゃねぇかぁ? 本気出さないと死ぬぜぇ!?」

「ぐっ!?」

振り抜いたナイフが男の曲刀に押し戻される。

なんて力だ。

ナイフのスキルを駆使しているはずなのに、攻撃を当てる隙がない!

むしろ防戦一方になっている。

やはりこの男強い!

「お兄さま!!」

ジリジリと押されている中、背後から声が聞こえた。アリスが僕の様子を心配して姿を見せたのだろう。

「アリスっ! 逃げるんだ! 僕がこの男を食い止めている間に早く!」

「嫌です!」

「ーーなっ!?」

僕の想いはアリスには伝わらなかった。
危機的状況までも駄々をこねる妹に言葉が出ない。

「お兄さまがアリスを守ってください!!」

「ーーっ!」

わかっているんだ。
わかっているんだよ、アリス。

けど。

今の僕ではこいつには敵わないんだ。

勝てる未来が見えないんだよ。

だから。

お願いだから逃げてくれ。


「クハハハハ! 頭の悪いガキの躾には困りモノだよなぁあ!? 護衛くんよぉおお?」

男の顔がより一層歪んだ気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...