無職無双〜無職になった僕は妹と旅に出る〜

タカノス🦅

文字の大きさ
26 / 64
第三章 フリーユの街編

23 成長

しおりを挟む
「どう言うこと!? ねえ、どう言うことよ!」
 カレンがすごい勢いで問い詰めてくる。
 まあ、あれだけイキっていたのだ。自分に相当な自信があったのは火を見るより明らかだった。それが負けたとなればこうなるのも無理はないか。
 それにしても顔が近いけど。
 
「途中までわたしが勝っていたよね!? わけがわからない!」
 
「ちゃんと説明するから、一旦落ち着こうよ」
 
「わたしは落ち着いてる!」
 
「じゃあちょっと離れようか」
 
「あッ……えっとその」
 僕にくっつく勢いで問い詰めていたことを自覚したカレンは、ちょっと離れて表情を隠すようにそっぽ向いた。
 あれ? カレンって男に免疫ないのかな。
 ツンツンしているカレンが年頃相応の反応を見せると、可愛く見えてくる。
「気持ち悪い顔しないで」
「はい……」
 怒られた。
 
「それより! どうして勝てたのか教えなさいよ!」
 
「その内バレそうだから言うと、スキルを使ったんだよ」
 
「それはそうよ! じゃないと説明つかないもの! なんのスキルを使ったのかって聞いてるの!」
 
「料理スキルだよ」
 
「え。アレクって料理人だったの?」
 
「違うけど」
 即答すると、カレンに嘘言うなと睨まれた。
 
「料理スキル持ってるのに料理人じゃなければなんなのよ!」
 
「あ、僕は料理人でした」
 
 危ない。
 咄嗟に違うと否定したが、常識で考えれば料理スキルを持つのは料理人しかありえないのだ。
 最近色々ありすぎて忘れていた。
 無職と答えてもよかったけど、それだと何で料理スキル持ってんだとか根掘り葉掘り聞かれて面倒臭そうだから、僕から言うことはしない。
 
「ーー怒ってる?」
 
「嘘つき!」
 
「それはごめんって……。じゃなくて、スキルを使って勝負を有利に運んだことについてだよ」
 
「何で?」
 
 ん?
 カレンはスキルを持たない子供だ。
 スキルを使い勝った僕を何とも思わないのだろうか。
 僕としてはカレンに睨まれても仕方がないなと思っていたんだけどな。
 しかしカレンは平然としている様子。

 単に器が大きいとも違うような……。

 どういうことだろう。
 
「料理人なら、そうと言いなさいよね! 勝負したのがバカみたいじゃない! うちは使える人材なら大歓迎なの!」
 
「うん……」
 
 それは、カレンがいきなり食ってかかってきたから言うタイミングが無かったのだ。
 カレンのせいではあるけど、黙っておく。
 
「ごめんね」
 
「なにその顔。気持ち悪い」

 気を利かせて謝ってみれば、これだ。
 泣いていいかな。
 
「わたし、ママに報告してくるからお皿でも洗ってて」
 
「はい」
 
 しかも雑用を押し付けられる始末。
 一応、僕の方が年上なんだけどね。
 勝負にも勝ったわけだし敬語でもいいんじゃないかな。
 と、伝えようとした時には、カレンの姿は厨房にはなかった。
 もうどうでもいいや。
 
「よっと」
 お皿を洗い終わった僕は、手持ち無沙汰になったので、コンロを一口拝借してお腹を空かせて待っているだろうシフォンのために賄いを作ることにする。
 勝負に勝ったら宿泊費と食費は無料となる話だった。
 なら、冷蔵庫から食材を使っても文句は言われまい。もしダメだったら後で謝ろう。
 
「見たことない魚だ」
 冷蔵を開けた途端、虹色に輝く細長い魚が目に入った。
 鱗がキラキラと光って綺麗だ。触ってみると、ぎゅっと身の引き締まった弾力が指に跳ね返る。状態は良い。
「これにしよう」
 見知った魚より珍しい魚の方がシフォンも喜ぶだろう、と僕はこの魚を料理することに決める。
 まな板に乗せ、頭を取り内臓処理を終えた僕は一度手を止めた。
 初めてみる魚なため、どう調理すればいいのか皆目見当もつかないのだ。
 正直どういう味がするのかも不明だ。
 焼けばいいのか、煮ればいいのか、蒸せばいいのか、生でもいけるのか。

「うーん」

 どうせ作るのなら美味しく作りたい。
 手っ取り早く有識者に聞いてみるのがいいかな。

 ちょうど近くには先輩のエルフさん達がいるわけだし。

 包丁を置き、エルフさん達の元へ向かう。
 が、直前で足が止まった。

「あれ!」
「おけー」
「それ!」
「おけー」
 
 二人が謎のコンビネーションで大量の注文を捌いているところに介入できなかったのだ。
 邪魔できない雰囲気をびしびし感じて尻込みした。

 というか、何で伝わるんだ?
 スキルか何かなのかな。
 
 気になりつつも、諦めて自己流で料理してみることにする。

「無難に塩焼きにしてみるか」

 あれこれ考えたものの魚の味が未知のため、結局ハズレのない塩焼きで落ち着いた。
 
「懐かしいなぁ」
 フライパンの上でパチパチ焼ける魚を見ながら、僕はアリスと旅に出たばかりの日を思い出していた。
 
 初めてスキルが発現した、あの日の夜。僕は浮かれていた。

 無職となり、スキルが手に入らないと絶望していた僕にスキルが発現したからだ。
 完全に有頂天となっていた僕は、キャンプ地に待たせているアリスの元に帰るのが遅くなってしまった。

 その謝罪として初めて作った料理が、角兎ホーンラビットの塩焼きだった。

 このフライパンほど立派な調理器具じゃなかったし、料理スキルを持っていたわけでもない。
 知識、技術ともにゼロで挑んだ初めての手料理。
 今思えば、いい加減な焼き加減でひどいものだったと思う。

 しかしアリスは__

 『おいしいです!』

 笑顔で喜んでくれたのだ。

 その目は、嘘でもおべっかでもなく真実だと僕に伝えてきた。

 よかったと安堵しつつ口に運んだ僕は、吹き出した。

 甘かった。それはもう超絶に甘かった。
 
 なんと塩焼きのはずが、砂糖焼きになっていたのだ。

 調味料を間違えるという痛恨のミス。あれほど自分の無能さに呆れたことはなかったかも知れない。

 ひどい失敗作。

 それでもアリスは美味しいと完食してくれたのだ。

「僕、あれから上手く作れるようになったよ」

 タイミングを測り、魚をひっくり返す。

 表面に良い感じの焼き色がついている。

 あれから二週間ちょっと。

 料理の腕は格段に向上した。

「アリスにも食べさせてあげたいな」

 今度こそ本当に美味しい料理をアリスに作ってあげたい。

 あんな失敗作じゃなく、今の成長した僕の料理を食べさせたい。

 そして、また喜ぶ顔が見たい。

「早く起きないと、シフォンに食べ尽くされちゃうぞ?」

 軽く塩をふりかける。
 
「完成だ」
 
 お皿に盛り付け、味見する。
 
「うん。美味しい」

 これでシフォンも喜んでくれるだろう。

 冷めないうちに二階へと運ぼう。

 ーーちなみに。

 調味料は、間違えていなかった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...