無職無双〜無職になった僕は妹と旅に出る〜

タカノス🦅

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第三章 フリーユの街編

25 親子ともに恐ろしいです

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どうやって逃げようか、考えて込んでいるとエルフさんとダークエルフさんがこちらに駆け寄ってきた。
店内の客が落ち着いてきたので、2人はフロアの手伝いをしていたはずだ。
どうしたのだろうかと思えば、

「ママ、レッドさんがきたよー」

「ちょーヤバイって!」

エルフさんがなんて事もないような雰囲気に対して、ダークエルフさんは焦ったように言った。

「来ちまったようだね」

ママさんが少し緊張した声を出すものだから、安心しきっていた僕もごくりと唾を飲み込む。

とはいえ、ママさんの話によればレッドさんは優しい人のようだし大丈夫なはずだ。

勝手に虹色魚を使ってしまったことを許してくれる人だと信じている。

僕はよしと気合を入れて、戦地に赴く意気込みでフロアに向かおうとする。

レッドさんと対面だ。

「どこに行くんだいアレク。カレン出番だよ。行ってきな」

しかし、ママさんの言葉に出鼻がくじかれる。

僕が直接謝りに行くものだと思っていたが、ママさんはカレンに行かせるつもりらしい。

なぜ?
と、思わなくもないが、ママさんが決めたのなら仕方がない。

店主の言葉は絶対だ。

仕方がないのだ。

本当はレッドさんと話して見たかったけどね。

カレンが行くなら僕は大人しく厨房で洗い物でもしようかな。

やったね。

「ママ!? わたしが行くの!?」

カレンは案の定、納得いかないって顔をした。

「部下の失態は上司の責任さ。誠心誠意レッドに謝ってきな」

「それならわたしの上司はママでしょ!」

「アタシは現場にいなかったんだ。アレクの教育係でもあるあんたが行くのが筋さね」

「なにそれ!? 守ってくれるって言ったじゃん!」

「それとこれとは別さ。アタシはお店を守るって言ったんだよ」

「嘘つき!」

「いくらでも言いな。アタシは動かないからね」

「あ、わかった! ママ怖いんでしょ!」

ママさんの目が泳ぐのを僕は見逃さなかった。

ああ。
なんだかんだ言ってママさん、レッドさんが怖いのか。

待てよ?

そうなるとレッドさんが温厚な人っていう話は出まかせだったのか?

……うん。

ここは大人しくカレンに任せた方が良さそうだ。

「カレン頑張れ」

「うっさい!」

励ましたのに睨まれた。

こわい。

「なんだかんだ言ってレッドは、昔からカレンに甘いから安心して行ってきな。謝れば許してくれるさね」

「はぁ……わかったわよ」

渋々といった感じでカレンは了承した。

明らかにほっと安堵しているママさん。

やはり怖かったらしい。

本当にレッドさんってどんな人なんだ。

温厚な人かと思えばママさんの様子を見るにどうも違うみたいだし、かといってカレンには甘い人らしい。

子供には優しいけど、大人には厳しいみたいな?

「あ、一つ言い忘れた」

嫌そうな顔をしつつ厨房を出ていこうとしていたカレンがこっちを向いた。

「アレク覚えてなさいよ」

怨嗟の篭った瞳を向けられ、僕はゾッとするのだった。

ひえ。


カレンが戻ってくる間、ママさんと2人きりになった。

会話を繋いでくれそうなエルフさん達は再び仕事に戻ったので、ちょっと気まずい。

思えばママさんと一度も会話らしい会話はしていない気がする。

話したのは、ナイフ使いを褒められていきなり厨房に来いって呼ばれたときくらいか。

それからカレンと勝負することになり勝ったものの、その後はずっと皿洗いをしていたので話す機会はなかった。

そういや勝ったら宿代と飲食費が無料になる話はどうなったんだろう。

虹色魚を使ってしまったことで、無かった事になったのだろうか。

もしそうなら、確認を取らなかった僕が悪いので受け入れるしかない。

「悪く思わないでおくれ」

隣にいるママさんがぽつりと溢した。

何のことを言っているのか分からず返答に困っていると、

「カレンのことさ。あの子は意地っ張りで強気な性格だからね、すぐに敵を作っちまう。けど、本当は心優しい子なんだよ。だから嫌いにならないでやっておくれ」

ああ。
なんだかんだママさんはカレンのことが心配なようだ。

「大丈夫ですよ。たしかに少しアレですけど、それで嫌いになったりはしません」

「そうかい?」

「はい」

カレンにあれこれ言われても腹が立たないのは、相手が子供だからってのもあるだろうけど、1番はカレンに好感を抱いているのが大きいと思う。

不満や怒りを溜め込まず感情をそのままぶつけてくるカレンは、見ていて分かりやすく、どこか清々しい。

多分、羨ましいのだ。

感情のまま言葉を発せるカレンが。

僕はそれができなかった。

キレイル家では、まるで人形のように言われたまま日々を過ごしていた。

強くなれ、という呪いとともに。

「よく見たらあんた良い男だね」

「へ?」

突然、ママさんが突飛なことを言い出した。

「僕、年増はちょっと」

ママさんはどう見ても30代は超えているだろう。
対して僕は15歳。

恋愛に年齢は関係ないとは言え、恋人というより親子に見えてしまうだろう。

それに今は恋愛をしている暇はない。

「なに勘違いしてんだい。カレンさ。どうだい?」

「どうって言われましても……」

結婚相手にってことだろうが、今のところ誰かと結婚するつもりはない。

「顔は悪くないと思うけどね」

そういう問題じゃないんだよ。
今はアリスのことしか考えられない。

「すでに心に決めた人がいるとかかい?」

「え?」
僕の反応を見て、ママさんは少し残念な感じを見せつつも、納得したように頷いた。

「まあ、初めから分かっていたことさ。ウチに泊まらせてるあの子達のどちらかなんだろ?」

「違いますけど」
アリスとシフォンのことを言っているのだろう。
アリスは実の妹だし、シフォンは番犬。
どちらも恋人ではない。

しかしママさんは僕の照れ隠しだと思ったのか、分かってるよという顔をした。

「隠さなくていいさ。この宿はそういう宿さね。
そこにカレンを加えてくれても良いんだけどね」

「母親がそれ言っちゃダメでしょ……」

思わず漏れた僕の呟きに、ママさんは不思議そうに首を傾げるのだった。

何この人、こわい。

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