君のそばに【完結】

Masa&G

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11話 MT-001

次の日の昼。社内カフェテリア――

トレーを置いたとき、指先に伝わるわずかな振動が止まりきらないうちに、背後から声が落ちてくる。

「お疲れー。美月。できた?」

振り向かずに息を整え、視線だけを上げる。

「あ、うん。出来たよ。スマホ貸して。」

渚が差し出した端末の重みを受け取ると、もう一台を隣に並べる。画面の白い光が指先に滲む。

「渚。真面目な話だけど…。」

「うん。」

視線は二台の画面の間を行き来する。

「このことは内緒ね。上に話は通してないから。」

「OK。大丈夫。そのくらい私もわかってる。」

小さく息を吸う。

「バレたら大変なことになるから。」

間を置かずに続ける。

「それと、期限は二週間。」

「たった二週間?」

空気がわずかに揺れる。

「一ヶ月でまとめないといけないからね。時間がないし、遅くなったら渚も困るでしょ?」

「うーん…まぁ…。とりあえずわかった。」

「あとね…。」

「まだあるの?」

指先が止まる。

「データは私のPCにリアルタイムに送り込まれる。」

画面をスクロールしながら、淡々と続ける。

「使用時間ログ、感情同調率、応答遅延、情動変動値、依存傾向スコア…全部記録されるから、それは…」

「わかった!それでいいよ。そんな専門用語並べられてもわからないから。」

言葉を遮るような声に、わずかに視線を上げる。

美月がうなづく。

「じゃあ…アップロード出来たから確認してみて。」

端末を返すと、掌の温度が抜ける。

「ありがとう。」

渚の笑顔が一瞬だけ視界を明るくする。

スマホの画面には

《prototype-SERA  MT-001》

白い文字が静かに浮かんでいる。

「もう、渚の簡単なデータは入れてあるからそのまま普通に使って。」

「OK。」

指が画面に触れる。

「あ、一応言っておくけど、会話記録はブラックボックスだからログは残らない。」

「そうなんだ…。」

曖昧な返事とともに、画面をなぞる動きが止まらない。

「検証と言えどそこはプライベートだからね。」

「ん、わかったよー。」

次の瞬間、スピーカーから音がこぼれる。

『こんにちは、渚。』

渚の肩がわずかに跳ねる。

「あ、すごい!顔見せたら認識した!」

画面へ顔を近づけると、瞳に光が入り込む。

「こんにちは、SERA。」

『ご機嫌よさそうだね。』

「ふふふっ。いいね…この子。」

その声の弾みを横で受け止める。

「渚。あまりここでは…。」

「あ、そうだね。」

名残惜しそうに画面から顔を離す。

「じゃあ、帰ってからいろいろ試してみるよ。」

「うん。そうして。」

「んじゃ、美月も検証頑張ってね。」

立ち上がる気配が横を抜けていく――
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