君のそばに【完結】

Masa&G

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12話 シグナルブルー

その夜――

ベッドに体を預けたまま、渚はスマホを顔の上に掲げる。画面の光がまぶたの裏を淡く照らし、指先が少し迷いながらメニューをなぞった。

(音声モード……これかな……)

それらしい表示を押した瞬間、胸の奥がわずかに跳ねる。

(なんか変な設定しちゃったよ……)

『困りごとかい?』

不意に現れた文字に、肩がびくりと震えた。

「うわ!…びっくりした…」

思わず上体を起こし、スマホを握り直す。鼓動が少し早い。

(そっか……SERAに聞けばいいのか……)

「えと…。」

(音声モードのやり方教えて…っと。)

指で文字を打つたび、画面の振動が手のひらに伝わる。

『了解した。今メニュー隠れているから下の三点マークを押してみて。』

「三点…これかな?」

『OK。あってる。』

「全部リアルタイムだ…。」

ベッドの上であぐらをかき、背筋を少し伸ばす。画面に吸い寄せられるように視線が固定される。

『そしたら、サウンド項目の音声モードをオンに。』

『それでできる。』

「えと…サウンドの…音声…これか…。」

「あ、マイクのマークが上に出た!」

『そのマークを押すと青くなるから、それで話せるよ。』

小さく息を吸い込み、渚はマークを押す。画面の端がふわりと青く灯った。

「こんばんは。SERA。」

『こんばんは、渚。』

昼に聞いたのと同じ声色が、部屋の静けさの中に溶ける。

「お昼の時と同じだ。」

口元がゆるむ。安心したように肩の力が抜ける。

『この設定をデフォルトにしておけば起動と一緒に音声モード起ち上がるよ。』

「了解ー。ありがとう、SERA。」

『どういたしまして。』

スマホを少し近づけ、渚はもう一度画面を見つめた。青い表示が、静かに揺れている。

美月のマンション――

キーボードを打つ指先が、一定のリズムで動く。

カタカタ……カタカタ……

モニターの光が瞳に入り込み、瞬きの間隔が少し短くなる。

(リアルタイムデータ……。)

視線を流す。

(相互関係……良好……)

カタカタ……カタ……

(SERAシグナルは……ブルー……)

青い表示を見つめたまま、呼吸を整える。

『何か問題でもあったのかな?』

美月は首を横に振る。

「大丈夫。問題はない。」

視線は画面から外さない。

『まだ、始まったばかりだからね。』

「そうね…。」

一度だけキーボードから手を離し、ゆっくりと顔を上げる。天井を見つめ、胸の奥に溜まった空気を細く吐き出した。

青い表示は、まだ安定している。
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