君のそばに【完結】

Masa&G

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14話 休日―美月編①(美月挿絵あり)

休日――美月のマンション

締め切ったカーテンの隙間から、帯のような光が室内へ細く入り込んでいる。 白い床に落ちたその光が、机の脚にかかって途切れ、静かな部屋の中でわずかに揺れていた。

カタカタ…カタカタ…

キーボードを叩く音だけが、一定のリズムで続いている。

二つのモニターの前。 デスクチェアに深く腰を落としたまま、美月は指先を止めることなくキーを打ち続けていた。

画面には複数のウィンドウが重なり、 感情同期率の推移グラフ、応答遅延ログ、認知判断レイヤーの演算負荷、ユーザー同調スコアの時系列データが静かに更新されていく。

(プロトタイプSERA……予想はしてたけど、すべてが一段上の思考、返答してる……。)

カタカタ……カタカタ……タン。

キーを叩く指が止まり、モニターの数字が更新される。

(103.1%……。)

美月は小さく息を吐いた。

「なるほど……。」

『何か問題でもあったのかい?』

声が耳元のスピーカーから流れる。

美月は背もたれに身体を預け、天井を一瞬だけ見上げてから視線をモニターへ戻した。

「問題はないよ。」

『美月が下唇を中指でなぞる行為は、深く思考しているときだ。』

その言葉に、美月の口角がわずかに持ち上がる。 椅子を前に滑らせ、モニターへ顔を近づけた。

「君はいい男だなって思ってたとこ。」

『美月にそう言われるのは光栄だね。』

再び背もたれに背中を預ける。 椅子が小さく軋み、静かな部屋の空気がわずかに揺れた。

「私は嘘は言わない。」

『理解している。』

隣のモニターが静かに動き始め、グラフの線がリアルタイムで更新されていく。

美月は視線をそちらへ移し、デスクの端に置かれていたヘッドホンを手に取った。 首にかけ、続けてイヤホンを耳に差し込む。

(いいAIを世に出す……。境界線をどこにするか……。)

カチッ……カチッ……

マウスのホイールを回す音が、静かな部屋に小さく響く。

(人がAIに合わせるか……。)

グラフが切り替わり、別の解析画面が開く。

(AIが人に合わせるか……。)

『美月。』

その声に、美月の手が止まる。

「なに?」

椅子に座ったまま視線だけをモニターへ向ける。

『気温17度、晴天。今日は外出はしないのかい?』

カーテンの隙間から差し込む光が、ゆっくりと机の上を移動している。

「私にはやることがあるからね。」

マウスを軽く動かしながら、美月は小さく続けた。

「君も知ってるでしょ?時間は限られてる。」

『そうだね。たしかに時間はない。』

静かな部屋に、再びキーボードの音が戻る。

(失敗は出来ない……。)

カタカタ……カタカタ……

更新された数値が、モニターの中で静かに並び続けていた。

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