君のそばに【完結】

Masa&G

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21話 飲みの席

次の日の仕事終わり、夜19時――

暖簾を押して店に入ると、焼き鳥の香ばしい匂いと人の声が一気に流れ込んできた。

席に腰を下ろした瞬間、高田がメニューを軽くめくり、そのまま顔を上げて店員に声をかけた。

「焼き鳥三人前、イカゲソ揚げ、あとやっこと枝豆で。」

手慣れた調子で注文を済ませると、高田は二人を見渡す。

「上条は日本酒だよな?」

「はい。」

「若月は生中でいいよな?」

「はい。ありがとうございます。」

「俺はうれしいよ。お前達二人は若いのに俺の誘いに来てくれんだから。」

高田が笑顔を浮かべる。

「俺は元々こういうの好きですから。」

「上条が来るのが意外だったけど。」

若月が笑いながら話す。

「私も飲むのは好きなので。」

「意外に酒豪だぞ。上条は。」

高田が得意げに言う。

そのとき、料理を乗せたトレーがテーブルの横に滑り込んできた。

「お待たせしましたー。」

一時間後――

頬を赤くした若月がグラスを置きながら口を開く。

「やっぱり上条のやり方のほうが検証には向いてる。」

「SERAの反応がどこからわかるか…その見極めが正直難しいですね。」

美月が続く。

「データでSERAと話すと途中わからなくなります。」

「それにデータでしか答えが出なくなる。」

高田が徳利を傾け、美月の盃へ静かに酒を注ぐ。

「ありがとうございます。」

「SERAと対話してその言動を元にデータ化、対応して見極めるのが一番の近道かと。」

「たしかに…。SERAと会話かぁ…。」

若月が腕を組む。

さらに一時間後――

店の奥から店員の声が響いた。

「ありがとうございましたー。」

夜の空気に触れた瞬間、店の熱気がすっと背中から抜けていく。

「じゃあ俺、嫁さん迎えに来てるんで。」

「今日は話せてよかったです。」

「おう。奧さんによろしくな。」

「はい。」

若月が裏手の駐車場へ向かう。

「上条はバスか?」

「はい。あと30分ぐらいですね。」

頬に残る酒の熱で、視界の端がわずかに滲む。赤らんだ顔のまま、美月は軽く瞬きをした。

二人はバス停のベンチに腰を下ろす。

「高田さんは今日は?」

「うちも嫁さんが迎えに来る。まだ呼んでないけどな。」

「上条一人残して帰るわけにはいかんからな。」

美月がわずかに微笑む。

高田がゆっくり空を見上げた。

「世の中はAIで便利になった。」

深い息を吐き、

「ほんとに便利になったのか?」

美月が高田を見る。

「AIを作ってる人間の言葉じゃねぇな。」

高田が苦笑いをする。

「便利になりましたよ。間違いなく。」

「ただ…。人間が制御しないといけないのを忘れてはいけない。」

「プロトタイプSERAと対話して改めて思いました。」

「そうだな…。」

遠くの闇の向こうに丸い光が浮かび、ゆっくりと大きくなっていく。

「来たな。」

二人は立ち上がる。

「今日はありがとうございました。」

「いや、俺のほうこそためになった。」

美月がおじぎをして乗り込み、バスが静かに動き出す。

赤いテールランプが夜道を滑り、やがて闇の奥へ消えていく。

走り去るバスを目で追いながら、

(人間が制御しないといけないのを忘れてはいけない……。)

(たしかにな。)
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