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第14話 西川参上!
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大学キャンパス内――
昼下がりの風が冬木を揺らし、廊下には差し込む光が揺れていた。
「ごめんって…」
ぷいっ。
守護霊さんはそっぽを向いたまま、彩音と目を合わせてくれない。
「新宿まで寝ちゃったのは謝るからさ…」
むくれた頬が、ぷくっとふくらむ。
「……」
(かくなるうえは…)
「もふもふいる?」
「!?」
守護霊さんの肩がぶるっと震える。
それでも必死にぷいっと横を向いたまま。
「じゃあ…二個!」
その瞬間―― 目が輝き、こくっこくっ!と秒でうなづく。
「許してくれる?」
こくっこくっ!
「よかった…じゃあ帰りにね。」
満面の笑みで彩音を見る守護霊さん。
「宮司ちゃーん!」
振り返ると、西川が冬の空気を切るように走ってくる。
「西川さん…」
「今日部活終わったら何か用事ある?」
「いえ。何も。」
「そっか。じゃあ…俺とデート行こっか。」
「え…」
「え…でも…沙織さんが…」
「ん? ああ、大丈夫。沙織も知ってるから。」
(ど、どういうこと!?)
「えと…」
真顔の西川が言い切る。
「大事な話。じゃあ18時に迎えに来るから。よろしく!」
走り去る背中だけが残る。
「ちょっと…」
「?」
守護霊さんが不思議そうに首をかしげる。
***
部活が終わり、夕暮れの空が群青へ溶けていくころ。
大学近くのガスト――
店内の暖色照明が、冷えた指先をふわりと溶かしていく。
「好きなの食べていいからね。」
「あ、はい…」
彩音の脇には守護霊さん。
メニューをのぞき込みながら、わずかにゆらゆら揺れている。
「決まった?」
「はい…パスタで…」
「了解でー。」
「俺は…ハンバーグ…」
「あ、あの…」
「ん?」
「大事な話というのは…」
「うん…じゃあ…」
テーブルの上の水滴が、静かに光を揺らす。
「宮司ちゃんさ、桜木のこと好きでしょ?」
「え!?」
「それが大事な話。」
「あの飲み会のとき、すぐわかった。」
守護霊さんが前のめりになる。
「わ、わかるとは?」
「だって…今も動揺してんじゃん。」
「……」
「言うよ。桜木もまんざらじゃなかった。」
「え…」
窓の外、街灯がぽつぽつ灯り始める。
「で、でも…私は…理想じゃないので…」
「うーん…宮司ちゃん。もっとポジティブにいこうよ。」
「宮司ちゃんは悪いほうに考えてる。理想じゃないからダメ。自分で壁作ってんだわ。」
「それじゃ進まない。」
「……」
「なら現実を理想にしちゃえばいい。」
守護霊さんがパタパタと拍手。
「現実を…理想?」
「そこは俺が教えるとこじゃないからね。」
「まぁ簡単に言えば桜木を宮司ちゃんのことを好きにさせればいいのよ。」
「好きに…」
「俺から見ても宮司ちゃんは魅力あると思うけどな。」
「いやいや…私にそんな…」
「俺は嘘は言わないし、ヨイショもしない。」
どこまでも真顔の西川。
「…はい…ありがとうございます…」
「それにね、あいつは飲み会終わった後も宮司ちゃんのこと気にしてたんだわ。」
「気にしてた?」
「うん。帰り際に、なんだか元気がなかったとか、僕の話はつまらなかったかな…とかね。」
(桜木さん……)
グラスに映る彩音の指が、そっと震える。
「それは私が勝手に…」
「自分はダメだと思った…。桜木の理想じゃないから。」
彩音は静かにうなづく。
「あ、食べながらで。冷めちゃうから。」
「はい…いただきます。」
湯気がふわりと立ちのぼる。
パスタの香りがほのかに鼻をくすぐる。
「じゃあ特別にあの飲み会での西川考察話したげる。」
守護霊さんがさらに前へ滑り寄る。
「桜木と宮司ちゃんはあの席から離れてない。」
「他のみんなはけっこう移動してた。」
「何で移動しなかったか…。答えは簡単。そこが居心地がよかったから。」
「もっと言えば桜木との会話が楽しかったから。」
再び守護霊さんが拍手。
その肩が嬉しそうに上下する。
「そうですね…」
「それは桜木も感じてる。」
「だから宮司ちゃんはもっと自分に自信持ったほうがいい。」
こくこく。
「結局言いたいのはこれなんだけどね。」
「はい。」
彩音の口元に小さな笑みが灯る。
「また大事な話忘れた…。」
「だからこの西川さんが二人を繋げてあげようじゃないか!」
「も、言いたかった。宮司ちゃんがその気がなかったら俺空回りじゃん?」
「ふふっ。そうですね。」
「ちなみに繋げるっていうのは二人を遊びに誘う。そのレベルだから。あとは…わかるっしょ?」
「はい…。気持ちで…振り向かせる…」
守護霊さんが彩音を見て微笑む。
「お、わかってんじゃん。」
「なら大丈夫。」
「後で沙織も巻き込むから。」
「沙織さんも?」
「味方は多いほうがいいね。」
「あ、ごめん、沙織からライン…」
スマホを見て立ち上がる西川。
「先戻るわ。ここは払っとくから。」
「あ、でも…」
「今日はおごる。うまくいったらおごってもらう。OK?」
「OKです。」
「ははっ。よし! あ、それと次会うときは俺には敬語いらないからね。んじゃまた!」
バタバタと駆けていく足音。残った席に、静かな温かい空気だけが残る。
「行っちゃったね…」
こくり。
二人、顔を見合わせて――
「ふふふっ。」
その笑顔は、しばらく見なかった本気の笑顔だった。
昼下がりの風が冬木を揺らし、廊下には差し込む光が揺れていた。
「ごめんって…」
ぷいっ。
守護霊さんはそっぽを向いたまま、彩音と目を合わせてくれない。
「新宿まで寝ちゃったのは謝るからさ…」
むくれた頬が、ぷくっとふくらむ。
「……」
(かくなるうえは…)
「もふもふいる?」
「!?」
守護霊さんの肩がぶるっと震える。
それでも必死にぷいっと横を向いたまま。
「じゃあ…二個!」
その瞬間―― 目が輝き、こくっこくっ!と秒でうなづく。
「許してくれる?」
こくっこくっ!
「よかった…じゃあ帰りにね。」
満面の笑みで彩音を見る守護霊さん。
「宮司ちゃーん!」
振り返ると、西川が冬の空気を切るように走ってくる。
「西川さん…」
「今日部活終わったら何か用事ある?」
「いえ。何も。」
「そっか。じゃあ…俺とデート行こっか。」
「え…」
「え…でも…沙織さんが…」
「ん? ああ、大丈夫。沙織も知ってるから。」
(ど、どういうこと!?)
「えと…」
真顔の西川が言い切る。
「大事な話。じゃあ18時に迎えに来るから。よろしく!」
走り去る背中だけが残る。
「ちょっと…」
「?」
守護霊さんが不思議そうに首をかしげる。
***
部活が終わり、夕暮れの空が群青へ溶けていくころ。
大学近くのガスト――
店内の暖色照明が、冷えた指先をふわりと溶かしていく。
「好きなの食べていいからね。」
「あ、はい…」
彩音の脇には守護霊さん。
メニューをのぞき込みながら、わずかにゆらゆら揺れている。
「決まった?」
「はい…パスタで…」
「了解でー。」
「俺は…ハンバーグ…」
「あ、あの…」
「ん?」
「大事な話というのは…」
「うん…じゃあ…」
テーブルの上の水滴が、静かに光を揺らす。
「宮司ちゃんさ、桜木のこと好きでしょ?」
「え!?」
「それが大事な話。」
「あの飲み会のとき、すぐわかった。」
守護霊さんが前のめりになる。
「わ、わかるとは?」
「だって…今も動揺してんじゃん。」
「……」
「言うよ。桜木もまんざらじゃなかった。」
「え…」
窓の外、街灯がぽつぽつ灯り始める。
「で、でも…私は…理想じゃないので…」
「うーん…宮司ちゃん。もっとポジティブにいこうよ。」
「宮司ちゃんは悪いほうに考えてる。理想じゃないからダメ。自分で壁作ってんだわ。」
「それじゃ進まない。」
「……」
「なら現実を理想にしちゃえばいい。」
守護霊さんがパタパタと拍手。
「現実を…理想?」
「そこは俺が教えるとこじゃないからね。」
「まぁ簡単に言えば桜木を宮司ちゃんのことを好きにさせればいいのよ。」
「好きに…」
「俺から見ても宮司ちゃんは魅力あると思うけどな。」
「いやいや…私にそんな…」
「俺は嘘は言わないし、ヨイショもしない。」
どこまでも真顔の西川。
「…はい…ありがとうございます…」
「それにね、あいつは飲み会終わった後も宮司ちゃんのこと気にしてたんだわ。」
「気にしてた?」
「うん。帰り際に、なんだか元気がなかったとか、僕の話はつまらなかったかな…とかね。」
(桜木さん……)
グラスに映る彩音の指が、そっと震える。
「それは私が勝手に…」
「自分はダメだと思った…。桜木の理想じゃないから。」
彩音は静かにうなづく。
「あ、食べながらで。冷めちゃうから。」
「はい…いただきます。」
湯気がふわりと立ちのぼる。
パスタの香りがほのかに鼻をくすぐる。
「じゃあ特別にあの飲み会での西川考察話したげる。」
守護霊さんがさらに前へ滑り寄る。
「桜木と宮司ちゃんはあの席から離れてない。」
「他のみんなはけっこう移動してた。」
「何で移動しなかったか…。答えは簡単。そこが居心地がよかったから。」
「もっと言えば桜木との会話が楽しかったから。」
再び守護霊さんが拍手。
その肩が嬉しそうに上下する。
「そうですね…」
「それは桜木も感じてる。」
「だから宮司ちゃんはもっと自分に自信持ったほうがいい。」
こくこく。
「結局言いたいのはこれなんだけどね。」
「はい。」
彩音の口元に小さな笑みが灯る。
「また大事な話忘れた…。」
「だからこの西川さんが二人を繋げてあげようじゃないか!」
「も、言いたかった。宮司ちゃんがその気がなかったら俺空回りじゃん?」
「ふふっ。そうですね。」
「ちなみに繋げるっていうのは二人を遊びに誘う。そのレベルだから。あとは…わかるっしょ?」
「はい…。気持ちで…振り向かせる…」
守護霊さんが彩音を見て微笑む。
「お、わかってんじゃん。」
「なら大丈夫。」
「後で沙織も巻き込むから。」
「沙織さんも?」
「味方は多いほうがいいね。」
「あ、ごめん、沙織からライン…」
スマホを見て立ち上がる西川。
「先戻るわ。ここは払っとくから。」
「あ、でも…」
「今日はおごる。うまくいったらおごってもらう。OK?」
「OKです。」
「ははっ。よし! あ、それと次会うときは俺には敬語いらないからね。んじゃまた!」
バタバタと駆けていく足音。残った席に、静かな温かい空気だけが残る。
「行っちゃったね…」
こくり。
二人、顔を見合わせて――
「ふふふっ。」
その笑顔は、しばらく見なかった本気の笑顔だった。
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