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第十話 舞踏会への決意
しおりを挟むお茶会から帰ったその晩、屋敷の空気はどこか賑やかだった。
廊下ですれ違った料理人が、私に深々と頭を下げる。
「お嬢様……お茶会でのご活躍、聞き及びました! さすがでございます!」
侍女のマリアは目を輝かせ、身を乗り出す。
「わざと恥をかかせようとしたローゼンベルク令嬢を見返すなんて……もう、スカッといたしましたわ!」
庭師や門番にまで「お嬢様が社交界で一目置かれた」と噂が広がり、使用人たちの顔には誇らしげな笑みが浮かんでいた。
――今まで病弱で心配の種だった令嬢が、今や“家の誇り”として見られている。
◇
夜、弟アルノルトがそっと部屋を訪ねてきた。
「姉上……今日のこと、聞いたよ。皆が姉上を誇りに思ってる」
その笑顔に、胸が温かくなる。
「ありがとう、アル。私も少しは家の役に立てたのかもしれないわね」
だが心の奥では――クラリッサの扇の陰に隠れた、ひきつった笑みが忘れられなかった。
◇
数日後。
父から告げられたのは「王都で催される舞踏会」への出席だった。
それは名実ともに、私の“社交界デビューの本舞台”。
「……あのローゼンベルク令嬢も招かれていると聞く」
父の言葉に、胸の奥で炎が燃え上がった。
お茶会では偶然の余興で逆転できた。
だが舞踏会は格式ある場。多くの視線が集まる中で、些細な失敗も許されない。
クラリッサは必ず、そこで私に再び恥をかかせようと仕掛けてくるはずだ。
◇
「みんなのためにも成功させなければ……絶対に」
私は静かに拳を握った。
使用人たちの期待、弟の笑顔、そして亡き母の形見。
すべてを胸に抱き、私は舞踏会に向けて自らを磨き上げると決めた。
◇
翌朝から、準備の日々が始まった。
――礼儀作法の見直し。
――ダンスの特訓。
――衣装の仕立て。
使用人たちは一丸となって私を支えてくれた。
侍女たちは夜遅くまで裾の刺繍を直し、老執事は舞踏のステップを根気強く指導してくれる。
「お嬢様なら必ずや、ローゼンベルク家の令嬢を見返してくださいます!」
その声援に、私は何度も励まされた。
◇
夜、鏡の前で練習の姿を映す。
かつて奴隷として舞を強いられたこの体は、どんな動きも苦ではない。
だが今は、鎖のためではなく、誇りのために舞う。
「見ていなさい、クラリッサ。今度は誰の目にもはっきりと示してみせる」
胸の奥に燃える決意が、次なる舞踏会の舞台へと私を導いていった。
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