お願い乱歩さま

のーまじん

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 コスプレーヤーを撮影する人達はコスチュームが好きで、中身はあまり気にしない…そんな噂、嘘だと思ってた。

 葵は自分をフェンスの前に立たせて、正面上からスマホで撮影する遥希を見ながら思った。

 「やっぱ、フェンス越しに山が写るくらいが可愛いな。」
遥希はどうも葵の頭の向こうの景色が気になるらしい。
「うん……。確かに、かわいいかも。」
と、葵の横で遥希と葵を撮影する秀実には、きっと、葵がリアル女子には見えなくなってるに違いない。

 ワイヤーモデルにでもなった気分だわ。

 葵は自分の姿を通して、異世界に旅をする二人に少し腹が立ってくる。
 そして、人形と化した自分の目の前で楽しそうにする2人を見ているのもあきてきた。

 「もう、やめていい?」
少し不機嫌に葵は秀実をにらんだ。
 秀実は困ったように遥希にアイコンタクトをとり、その様子に、葵は益々不機嫌になる。
「どうしたのよ、木曽さん。」
「つまんない。私、こんな風に写されたりするの嫌だし。」
葵は、秀実に噛みついた。
「すまない。」
遥希は慌ててスマホをしまう。が、秀実はくずる子供をあやすような、少しムカつく優しい顔で葵を見る。
「もう、仕方ないな。じゃあ、私を写しても良いから。」
秀実が葵の前でポーズをとる。
「そんなの要らないもん。」
葵は益々腹が立ってくる。
奈穂子の挿し絵なんて、葵には必要ないのだ。
「じゃあ、小説1つ、サイト開設でどう?」
秀実は商売人の顔になる。
「え?」
と、言いながら、なんか、良いかも…と、思う葵。
「まだ、サイト、作ってないでしょ?商店街を動かすなら、まずは、実績を作らなきゃ。
 ついでに、乱歩の短編のテンプレ作ってあげるわよ。」
「テンプレって?」
「テンプレート。つまり、簡単なプロットの事よ。
 私の協力をしてくれるなら、起承転結でアレンジしやすい乱歩の短編を教えてあげるわよ。」
秀実は上から目線で葵を見るが、葵は気にならなかった。むしろ、渡りに船と言ったところだ。

 とりあえず、これで、サイトを作り、作品がネットに投稿される。

 「分かったわ…で、いつサイトは出来るの?」
葵は秀実をみる。
「そうね、まずは、個人的なグループ名でサイトを開設して、作品を投稿すると2週間くらいかしら?」
秀実の言葉に、企画が具体的に動き始めるのを感じた。
「そんなにかかるの?」
葵は少し驚いたように声をあげる。
 そんな葵の頭をポンと右手で叩きながら秀実は言った。
「当たり前、小説かくのって、わりと時間がかかるんだからね。挿し絵も入れたいし、で、大川くんは、もういいの?」
秀実は、からかうように遥希をみる。
「あ、ああ。」
遥希の歯切れの悪い返事に、秀実は含み笑いをする。
「あら、大川くん、お願いするなら今のうちよ。
 挿し絵、書いてもらいたいんでしょ?」
秀実の言葉に、遥希は少し混乱しながら葵を見る。
「頼めるか?」

 どきっ…(*''*)

 頭の少し上の方で、夕日に顔を赤らめながら、困りながら頼む遥希が、恋愛漫画のワンシーンと重なって見えて葵は赤面した。

 シュチュエーション萌えって、本当にあるんだぁ…
 葵は、変な雰囲気を振り払うように首を横に振って、遥希を軽く睨む。

 「エッチなやつとかは、ダメだからねっ。」
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