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  もうっ、こんな時にっ。
  私は朝のニュースに愕然とした。
  なんか偉い人が原爆使うとか言ったらしい。

  審議はともあれ、女子力高めのベルフェゴールの登場と共に、そんな話題…やめてほしい(>_<)

  底辺ウェブ作家の私に何が出来るわけもないし、もう、落選したんだから、完結ボタンを押して新たな話を作りたいんだよぅ。

  モヤモヤする。

  「あら、バタフライエフェクトと言うじゃない?」
イライラとコーヒーをすする私の横でベルフェゴールは笑った。
「翅風呼嵐(バタフライエフェクト)ね。そんなん、本当にあるの?」
「あら、世界は陰謀に溢れているのよ。あなたの呟きも、ビックデーターの一部として、未来の指針になって行くのよ。」
ベルフェゴールは、怪しい都市伝説を語る。
「はぁ…まあ、いいけど、でも、剛、解放してくれないかな?」
私はベルフェゴールに頼んだ。
「そうね。でも、解放したら、エタらせちゃうでしょ?まずは、更新してくれなきゃ。」
ベルフェゴールは、冷たく私を突き放した。が、温かい紅茶は入れてくれた。
「それほど、時間はとらないわ。」
「テンプル騎士団まで登場したのにっ?」

  泣きそうになる。

  自作の『ノストラダムスを知ってるかい?』から調べた色々が『パラサイト』重なりあってきた…と、言うところだろうか。

「私にはテンプル騎士団は関係ないわ。」
ベルフェゴールは穏やかに微笑む。
  その微笑みの向こうに、聖書が語るエピソードが思い浮かんだ。
  旧約聖書によると、イスラエルの民がモーセと共にカナンの地に向かう途中、ベルフェゴール…旧名バアル・ペオルを信奉する民に遇う。
  そこで、みんなでバアル・ペオルを参拝して、ご飯を食べた事にヤハウェが激怒。疫病で2万人強の人間を殺した、と、言う話だ。

「確かに、聖書の神様って、怒ると怖いもの。何か、平和的な解決を祈りたくなるのは分かる気はするわ。」
ため息が出る。
  何にしても平和に解決してほしいけれど、世の中、色々、難しい気もしてくる。
「そう簡単な問題でも無いけれど、ね。」
ベルフェゴールは、少し寂しそうに微笑んだ。

  原爆の話とかが、普通にテレビで話題になるのも怖いけれど、ベルフェゴールにしてみても、平和的な神…もしくは悪魔ではない。

  ベルフェゴールは、ルシファーと共に神を敵にまわして、大量破壊兵器『炎のつらら』なるものを製作したらしい。
  まあ、本当はどんな兵器なのかは、分からない。
  そして、ネットの情報は、ゲームやアニメの創作設定が、まことしやかに流れてくるから、注意が必要だ。
「そうよ、私には扱いきれない内容よ~」
私は泣きをいれた。
  中東の難しい問題に、私がナイスなアドバイスが出来るわけもない。
「そんな事は無いわ。ただ、盛者必衰(じょうしゃひっすい)の物悲しさを伝えてくれたら。」 

  ベルフェゴールの言葉にタロットカードを思い出す。
  回転する真理…

  そう、すべてのものには、始まりがあり、盛り上がり、そして、衰退をする…
「そんなん、私には語れないわ…
  それにしても、ファティマの聖母も、子供に世界平和なんて難しい事を頼まずに、1917年、チャーチルとか、エリザベス女王に言ってくれたらいいのよ。」
私が叫ぶと、ベルフェゴールは困ったようにこう言った。
「1917年、イギリス国王は、ジョージ5世よ。」
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