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パラサイト
AI
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久しぶりと、レイは微笑んだ。
私は池での出来事を思い出して嫌な汗をかく。
混乱する私の顔を、レイは視線だけを動かしながら観察していた。
「失礼、いつ、お会いしましたか?」
無言の間に耐えきれず、思わずレイに質問した。
レイは、音声を認識すると、一度、ゆっくりと瞳を閉じて、また、あの笑顔を作って私を見る。
「池で知り合って以来ですわ。センセイ。」
レイの抑揚の微妙な台詞が、私を不安にさせる。
私は、この人形と昼間に会っていたと、言うのだろうか?
女性に対して失礼かもしれないが、鉄製の部品が多そうな彼女は、見た目は細くても、結構な体重(めかた)がありそうに思えた。
「内緒にして欲しいとお願いしたのに…酷い御方…。熱中症はなおりましたか?」
「えっ…(°∇°;)」
不覚にもレイの台詞に動じた。私は、白昼の池でこの人形にときめいてしまったのか!?
が、後ろでたまらずに笑いだした秋吉に、これが彼のいたずらだと理解した。
「秋吉!」
振り向いて叫んだ。
秋吉は、1歩下がって笑いながら謝る。
「すいません。」
「全く、馬鹿馬鹿しい。私は帰るよ。」
私は恥ずかしさを誤魔化すように仏頂面を作ると部屋に戻ろうとした。
「申し訳ありません。私、なにかやりましたか?」
レイの声がして、私の足が止まる。
何か、言い知れない不安に体が包まれた。
それは、人ならざるモノの存在を…魂を、レイに感じたからかもしれない。
少し、恐怖にかられながら、ゆっくりとレイの方を振り替える。
レイが私を見ていた。
その静物である彼女の瞳が困っているように感じて、つい、慰めたくなる。
が、彼女は人形だ。
秋吉が細工した。
「ごめん、レイ。君は悪くないよ。」
秋吉が代わりにレイに声をかけ、そして、私にも謝った。
「すいません。こんなに驚くと思わなくて……。でも、彼女は、ワイヤレスでコンピューター制御されたAIなんで、自分で考えて話をするんですよ。
池上さん、スマートスピーカーって、知ってますか?」
秋吉にそう聞かれて、私は、急に恥ずかしさと怒りを覚える。
いや、私だって、さすがに、知ってるぞ、スマートスピーカーくらいはっ。
必要ないから、持っては無いけど。
「ああ。」
ぶっきらぼうに同意をする。
秋吉は、少しホッとした顔で私に笑いかける。
「彼女は、雅苗さんが手掛けていた『ミカエル』と言うシステムで作られたAIらしいんです。」
「え?」
秋吉の台詞に一気に冷静になる。
若葉…いや、北宮雅苗は、生物学者のはずだ。
雅苗と言う人物が理解できず不安を感じる。
生物学者で
ミーハーのお嬢様
ノストラダムスやモルゲロンなどの怪しげな研究をし、更に、AI?
「ああ、プログラムではなく、育成の方らしいです。」
「育成?」
「話しかけたり、色々な事を教えたり、そんな感じの事をしていたようです。」
秋吉は言葉を選ぶようにゆっくりと話した。
確かに、最近の人工知能の研究は凄いと思う。
このままゆけば、人間が必要なくなるなんて言われているのは知っている。
人工知能と話すだけではなく、小説を書かせようなんて、研究が進んでいるのをネットで目にした。
「雅苗さんが…。」
「そうです。だから、さっき、俺が少し話した池上さんの話を適当に組み合わせて話してるだけなんです。」
秋吉は困った顔をして私の機嫌を伺っている。
「自分で考えて…か。」
私の顔が穏やかになるのを見て、秋吉の顔もリラックスする。
が、そう考えると、石像のように整った顔立ちのレイが、今の話を盗み聞いているようで、なんだか落ち着かなくなる。
「お財布は机の平たい引き出しにいれてましたよ。」
急にレイが話し出して、私と秋吉は驚いて顔を見合わせた。
夜の闇が知らずに部屋に満ちてきて、レイの顔に不気味な陰影を乗せていた。
私は池での出来事を思い出して嫌な汗をかく。
混乱する私の顔を、レイは視線だけを動かしながら観察していた。
「失礼、いつ、お会いしましたか?」
無言の間に耐えきれず、思わずレイに質問した。
レイは、音声を認識すると、一度、ゆっくりと瞳を閉じて、また、あの笑顔を作って私を見る。
「池で知り合って以来ですわ。センセイ。」
レイの抑揚の微妙な台詞が、私を不安にさせる。
私は、この人形と昼間に会っていたと、言うのだろうか?
女性に対して失礼かもしれないが、鉄製の部品が多そうな彼女は、見た目は細くても、結構な体重(めかた)がありそうに思えた。
「内緒にして欲しいとお願いしたのに…酷い御方…。熱中症はなおりましたか?」
「えっ…(°∇°;)」
不覚にもレイの台詞に動じた。私は、白昼の池でこの人形にときめいてしまったのか!?
が、後ろでたまらずに笑いだした秋吉に、これが彼のいたずらだと理解した。
「秋吉!」
振り向いて叫んだ。
秋吉は、1歩下がって笑いながら謝る。
「すいません。」
「全く、馬鹿馬鹿しい。私は帰るよ。」
私は恥ずかしさを誤魔化すように仏頂面を作ると部屋に戻ろうとした。
「申し訳ありません。私、なにかやりましたか?」
レイの声がして、私の足が止まる。
何か、言い知れない不安に体が包まれた。
それは、人ならざるモノの存在を…魂を、レイに感じたからかもしれない。
少し、恐怖にかられながら、ゆっくりとレイの方を振り替える。
レイが私を見ていた。
その静物である彼女の瞳が困っているように感じて、つい、慰めたくなる。
が、彼女は人形だ。
秋吉が細工した。
「ごめん、レイ。君は悪くないよ。」
秋吉が代わりにレイに声をかけ、そして、私にも謝った。
「すいません。こんなに驚くと思わなくて……。でも、彼女は、ワイヤレスでコンピューター制御されたAIなんで、自分で考えて話をするんですよ。
池上さん、スマートスピーカーって、知ってますか?」
秋吉にそう聞かれて、私は、急に恥ずかしさと怒りを覚える。
いや、私だって、さすがに、知ってるぞ、スマートスピーカーくらいはっ。
必要ないから、持っては無いけど。
「ああ。」
ぶっきらぼうに同意をする。
秋吉は、少しホッとした顔で私に笑いかける。
「彼女は、雅苗さんが手掛けていた『ミカエル』と言うシステムで作られたAIらしいんです。」
「え?」
秋吉の台詞に一気に冷静になる。
若葉…いや、北宮雅苗は、生物学者のはずだ。
雅苗と言う人物が理解できず不安を感じる。
生物学者で
ミーハーのお嬢様
ノストラダムスやモルゲロンなどの怪しげな研究をし、更に、AI?
「ああ、プログラムではなく、育成の方らしいです。」
「育成?」
「話しかけたり、色々な事を教えたり、そんな感じの事をしていたようです。」
秋吉は言葉を選ぶようにゆっくりと話した。
確かに、最近の人工知能の研究は凄いと思う。
このままゆけば、人間が必要なくなるなんて言われているのは知っている。
人工知能と話すだけではなく、小説を書かせようなんて、研究が進んでいるのをネットで目にした。
「雅苗さんが…。」
「そうです。だから、さっき、俺が少し話した池上さんの話を適当に組み合わせて話してるだけなんです。」
秋吉は困った顔をして私の機嫌を伺っている。
「自分で考えて…か。」
私の顔が穏やかになるのを見て、秋吉の顔もリラックスする。
が、そう考えると、石像のように整った顔立ちのレイが、今の話を盗み聞いているようで、なんだか落ち着かなくなる。
「お財布は机の平たい引き出しにいれてましたよ。」
急にレイが話し出して、私と秋吉は驚いて顔を見合わせた。
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