92 / 208
パラサイト
甲虫
しおりを挟む
「しかし、君は気がつかなかった…。」
北城の台詞が胸にグッサリと刺さる。
それを言われると、ぐうの音も出ない。
「すまん。」
小さくボヤき、北城のクールなどや顔に閉口する。
「が、みんな、変だと思っていたぞ。そうだ!秋吉は…。」
と、ここで私は、言葉を失った。
そう、秋吉は音無不比等を疑ったのだ。
軽いめまいがした。
前に、作家、音無不比等の怪しげなオーディションで弄ばれた秋吉。
怪しげなカクテルで、からだの自由を奪われ、そうして音無は…秋吉の口に、グロテスクなカプセルを飲まそうとしたらしい。
謎のネット作家・音無が、私の友人北城だとしたら…。
私は、自然と険しい顔になる。
聞いていた音無のイメージに北城は、ピタリとはまるのだ。
「北城…お前が、音無不比等なのか?」
なんだか、二時間ドラマの刑事のような芝居がかった口調になる。
北城は、私の顔を薄ら笑いを浮かべて見つめていた。
バカにしているわけではない。
この顔をする時、奴は、物凄く頭を使っている時なのだ。
「どうして、そう思った?」
北城は、実験体に問いかけるような目で私を見る。
「秋吉がそう言ってた。
正確に言うと、私は、音無不比等と言う人物にあった事はない。」
私は素直に答えた。
北城は、少し考えてから、穏やかな顔になる。
「結論から言うと、私は、音無不比等ではない。彼の作品を知らないが、私の文章は小説向きではない。」
北城の台詞に私は、深くなっとくした。
そう、コイツは、顔もまずまずで頭も良かったが、口が悪くて、女の子と付き合ったという噂を聞いたことがない。
告白をされても、1日奴と付き合える女の子はいなかったのだ。
読者に夢を見せるなんて…恋愛サスペンスなんて、書くどころか、設定すら難しいに違いない。
「確かに、そうだな。」
私は脱帽した。
「わかれば良い。」
と、少し不愉快そうに北城は言って、軽く息を吐いてから続けた。
「秋吉くんが何を思おうと、面識がないから気にしなくて良い。
私の正体は、長山くんも理解している。知られていけないのは、あくまで若葉 溶生(ときお)一人に対してだ。」
北城は淡々と語る。
「じゃあ、人がいない時は北城、と、呼んで構わないな。」
私は、学生時代を懐かしく思い出した。
北城は、目を少し細めて同意した。
「じゃあ、まずは、尊徳先生の資料を探させてもらうよ。
あと、20分くらいで書斎に帰らないといけないから、急ぐんだ。
ところで、お前、『スカラベ』を知ってるか?」
私は、長山に頼まれていた例の…イシスのスカラベを思い出して聞いてみた。
北城は、質問の意味を値踏みしながら、
「スカラベ…コガネムシ科の甲虫だ。」
と、言った。
北城の台詞が胸にグッサリと刺さる。
それを言われると、ぐうの音も出ない。
「すまん。」
小さくボヤき、北城のクールなどや顔に閉口する。
「が、みんな、変だと思っていたぞ。そうだ!秋吉は…。」
と、ここで私は、言葉を失った。
そう、秋吉は音無不比等を疑ったのだ。
軽いめまいがした。
前に、作家、音無不比等の怪しげなオーディションで弄ばれた秋吉。
怪しげなカクテルで、からだの自由を奪われ、そうして音無は…秋吉の口に、グロテスクなカプセルを飲まそうとしたらしい。
謎のネット作家・音無が、私の友人北城だとしたら…。
私は、自然と険しい顔になる。
聞いていた音無のイメージに北城は、ピタリとはまるのだ。
「北城…お前が、音無不比等なのか?」
なんだか、二時間ドラマの刑事のような芝居がかった口調になる。
北城は、私の顔を薄ら笑いを浮かべて見つめていた。
バカにしているわけではない。
この顔をする時、奴は、物凄く頭を使っている時なのだ。
「どうして、そう思った?」
北城は、実験体に問いかけるような目で私を見る。
「秋吉がそう言ってた。
正確に言うと、私は、音無不比等と言う人物にあった事はない。」
私は素直に答えた。
北城は、少し考えてから、穏やかな顔になる。
「結論から言うと、私は、音無不比等ではない。彼の作品を知らないが、私の文章は小説向きではない。」
北城の台詞に私は、深くなっとくした。
そう、コイツは、顔もまずまずで頭も良かったが、口が悪くて、女の子と付き合ったという噂を聞いたことがない。
告白をされても、1日奴と付き合える女の子はいなかったのだ。
読者に夢を見せるなんて…恋愛サスペンスなんて、書くどころか、設定すら難しいに違いない。
「確かに、そうだな。」
私は脱帽した。
「わかれば良い。」
と、少し不愉快そうに北城は言って、軽く息を吐いてから続けた。
「秋吉くんが何を思おうと、面識がないから気にしなくて良い。
私の正体は、長山くんも理解している。知られていけないのは、あくまで若葉 溶生(ときお)一人に対してだ。」
北城は淡々と語る。
「じゃあ、人がいない時は北城、と、呼んで構わないな。」
私は、学生時代を懐かしく思い出した。
北城は、目を少し細めて同意した。
「じゃあ、まずは、尊徳先生の資料を探させてもらうよ。
あと、20分くらいで書斎に帰らないといけないから、急ぐんだ。
ところで、お前、『スカラベ』を知ってるか?」
私は、長山に頼まれていた例の…イシスのスカラベを思い出して聞いてみた。
北城は、質問の意味を値踏みしながら、
「スカラベ…コガネムシ科の甲虫だ。」
と、言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる