オーデション〜リリース前

のーまじん

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パラサイト

シケイダ3301

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  「そう言うんじゃないんだなぁ。」
私が少し困ってボヤくと、北城は、少し渋味のました綺麗な口元を軽く歪ませた。
「では、ケプリ…古代エジプトの太陽神の顔でどうだ。」
北城は、少し自慢げに言う。
  近い…が、違う。
  と、言うより、知らないのだろうか?
  尊徳先生のもらったイシスのスカラベのミイラの事を。

  「北城、お前、スカラベのミイラは知ってるか?」
「ああ、確か、去年、発見されたんだよな…サッカラの共同墓地で。」
と、北城は一度言葉を区切り、興味深そうに私を見ながら聞いた。
「まさか、お前、もってるのか?」と。

  やっぱ、そうだよなぁ。
  と、驚く北城の顔に、自分が長山にした事を重ねて納得する。
「まさかぁ。持っていたのは私ではない。尊徳先生だよ。」
そう言って、自分の事のように胸を張ってしまった。  
  北城は、少し考えて、つまらなそうに笑った。

  「なんだ、あれの事か。あれなら、屋敷にはないよ、確か、何年か前に研究所に保管されたんだ。
  なんて顔するんだ、当たり前だろ?貴重な資料なんだから。」

  ああ……。

  私は、北城の言葉にしゃがみこんでしまった。

  だよね、まあ、そうだよ、全くだ!

  イシスのスカラベのミイラなんてものが、いつまでも個人の屋敷のコヤシになってるわけもない。

  「なんだよ…そんなに悲観することか?
  お前、ゲンゴロウさえいれば、幸せだろ?いつから、フンコロガシにまで広げたんだよ?」
北城は、雑な慰めの言葉をぶん投げてくる。
「甲虫は全般的に好きだし、フンコロガシはファーブルと一緒に小学生の時から好きだよ。」
私は、自分の甲虫プロフィールを力なく呟いた。

  「そうか…、では、そのうち、見に行こう。招待するよ。」
北城に励まされ、私は立ち直った。

  まあ、結果オーライだ。
  これで、虫探しは片付いた。後は、15分。ここの資料をさらっと見てから仕事に戻ろう。

  私は、嬉しくなってきた。
  北城が親族なら、これから、ここに来る機会もあるに違いない。
  目ぼしいものを軽くチェックしなくては。

  私は、立ち上がり、まずは、色々と積み重なっている学習机…多分、雅苗のものと思われる机の上を見た。
  そこには、細かい本や箱が載っていて、机の前の方に、あまりチリの積もっていない赤い表紙の本を見つけた。

  それは、ハードカバーのもので、赤いカバーに縦字の明朝体で『砂金』西條(さいじょう) 八十(やそ)と書いてあった。

  私は、気になって本を手にした。

  内容ではなく、真ん中に金で描かれた翅(はね)を広げたセミの絵が気になったからだ。

  周期ゼミ…なのだろうか?
  金で描かれた目が赤く見えるが、表紙のせいかもしれない。

  「シケイダ…か。」
いきなり、そんなことを言いながら北城が私から本を奪う。
「なんだよっ、死刑って、ちょっと見ただけだろ?」
私は、いかつい顔で表紙を見る北城に文句を言った。
  北城は、私を見てあきれた顔をする。
  「シケイダ3301だ。死刑ではない。」
北城の訂正を混乱しながら聞いていた。
「何かのドラマか?」

  私の問いかけに、北城は、少し驚いてから、意地悪そうに口元を歪めて楽しそうにこう言った。

  「確かに、ドラマ…と言えなくもない。世界を騒然とさせた、素晴らしい謎解きゲームだよ。」
北城の言葉をきいて、私は、それが海外のドラマだと思った。
  シケイダ3301

  なんとなく、刑事ドラマっぽいけれど、昭和風味な題名だな、なんて思いながら。
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