オーデション〜リリース前

のーまじん

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パラサイト

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  書斎にいる私の耳にヘビーメタルな絶叫が響く。
  21世紀になって作られた『虫探偵シンゲン』のテーマソング、だそうだ。
  が、歌詞は
  虫探偵 シンゲン あああっ………。

  の、繰り返しなので、歌と言えるかは謎である。
  作詞・作曲は地元のバンドマンらしかった。

  これを再生しているのは北城だ。

  もとは、ドヤりながら虫探偵シンゲン自慢をした私が、悪いのだろうが、
  それにしても、辛い(-_-;)

  シケイダ3301…これについて知らなかった私も、無教養なのかもしれない。
  が、こんなもの、インターネットをよく知るものだけの問題な気もする。

  2012年の1月の事だ。
  外国の匿名掲示板に謎かけをする人物が登場する。
  その謎に挑戦する人物が現れ始め、そして、掲示板の質問が、難解で魅力的なものだと認識された。

  謎かけを解くと、更に難解な謎が登場した。
  世界中のネット民が、熱を帯びたように謎の解読と、その謎の提供者を探し始めた。

  有るものは、秘密結社を疑い、
  そして、有るものは、謎を解いて、謎かけの真実を聞いたと投稿した。

  その内、愉快犯の偽問題も現れると、数年続いたこのゲームは幕を閉じることになる。

  結局、シケイダ3301の正体も、謎かけの理由も分からないままである。

  名前の由来は、画像に使われた翅を広げたセミの画像と、メッセージの最後にかかれた3301の文字。

  その為、この謎の団体はシケイダ3301と呼ばれることになった。

  この謎かけは、2017年まで、日にちを置いてポツポツと行われたようだが、
  雅苗が知るとしたら、初めの2012年1月から1ヶ月に渡る謎の方だと思う。

  この謎に、彼女は何を思ったのだろう?

  夏祭りに来る子供達の為に、話題作りの謎を作っていたのだろうか?

  初めの謎は、短い求人の文章と数字で描かれたセミの画像。そして、3301の文字のようだ。

  3301が素数であった為に、このセミは素数ゼミと解釈されているようだ。

  初めの掲示板への投稿は、アメリカのものらしいので、その辺りからも周期ゼミを疑うのが当たり前なのかもしれない。

  しかし、私からしたら、この画像は、少し不自然な気がするのだ。

  アメリカの周期ゼミは、大量発生した地から殆ど動かないのだ。
  それに、普通、セミを描く場合、翅は閉じて止まっているところが多い。

  なぜ、翅を広げる形にしたのだろう?
  そのように描くのであれば、蛾の方が美しく、魅力的である。
  
  北欧では、あまり馴染みがないせいか、象徴としてもあまり使われていないと思われるセミをなぜ、謎解きの画像に使ったのか、
  答えを教えてもらっても、なお、釈然としない気持ちになった。

  が、そんな事はいつまでも考えてはいられない。
  私は、パソコンに張り付く北城をどけて、仕事を始めることにした。

  北城は、おもちゃのとられた子供のように不服そうな顔をして、からかうように私に聞いた。

  「それで、かなちゃんの謎は解けたのかな?虫探偵。」

  全く…(-_-#)

  「そんなもの、今は、いいんだよ。私は、これから仕事なんだ。
  パソコンに画像を撮して、資料整理もしなくてはいけない。」
私が、キッパリと言い切ると、怒っているのを理解して、北城は席を退き、机の上にあった、あの、謎の本を持ち上げた。

  「そうか…。では、邪魔は出来ないな。
  ただ、この本に関しては、夏祭りの謎かけでは無い気がするぞ。」
北城の台詞に驚いた。
奴は、私の驚く顔を満足そうに見てから、
「多分、これは、今年、2019年に現れる人物へのメッセージだ。」
と、言った。
「そんな事、なんでわかるんだよ。」
と、文句を言った私に、北城は、本の作者の名前を指差した。

  「これは、西条八十の処女作『砂金』だ。
  出版は、1919年。今年で丁度、100年目に当たる。
  奇しくも、今年は、八十の没後50年。彼女がこの謎かけをした2012年の法律では、著作権が終わる年に当たるんだよ。」 

  え?(ー_ー;)

  私は、内容を一度では理解できなかった。

  何でも、日本の著作権は、没後50年までで切れたのだそうだ。
  が、2018年に、欧米に足並みを揃え、70年に変更されたのだそうだ。
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