10 / 19
9話 あとは、死
しおりを挟む
数十分後、次々に遺体が運び出され、14エリア支部局入口に並べられる。
遺体は、それぞれで形状が異なっていた。ひどく残酷な殺し方だったのだろう。
成瀬は迷い続けていた。
苦しみながらも、生きようともがいていたあのevilの少年と、
evilに殺されたと思われる、眼前の局員たちの遺体。
どちらが本当の彼らの姿なのかと。
…いや。どちらも本当の姿なのかもしれない。
自分たちが見えているのは、evilの片鱗にすぎず、もしかすると、あの少年の様に、だれにも気づかれないように、身を潜め、息苦しさを感じながらも、生きようとしている彼らもいるのかもしれない。
ならば、今自分たちがやっていることは本当に正しい事なのだろうかと。
成瀬はそういう考え方のできる人間だった。
遺体を運び終わり、一息つく。
「成瀬ー。こっち手伝ってくれー。」
彼を呼んだのは、第三部隊の田村一等機動官だった。
成瀬は軽く手を挙げ、駆け寄る。
先ほどの少年の遺体だった。
無数の銃弾を浴びた彼の体は、まさに蜂の巣の様だった。
成瀬は遺体に近寄り、その場にしゃがみこんだ。
「evilなんて、いなくなっちまえばいいのにな。」
田村がそう切り出した。
「あ?」
「こいつらがいなければ、誰が感染しているかも分からない病気に怯える事もないし、ここの支部局の方々も死ななくて済んだ。ほんとに迷惑な連中だよ。お前もそう思うだろ?」
「…かもな。」
「…何だよ。『かもな』って」
「別に。こいつらにも、こいつらなりの事情があるんじゃねえの?」
「は?何だよ事情って。だから人間を殺してもいいのかよ。」
「それは俺たちだって一緒だろ。俺たちも、evilってだけでこいつらを殺してる。」
「当然だろ。こいつらはevilなんだから。」
埒が明かない。
成瀬は田村を静かに、少し睨んだ。だが、今ここで言い争ったところで何も意味がない。
「…運ぶぞ。」
担架に遺体を乗せようとする。遺体を見つめ、成瀬は気づかれないように、小さく手を合わせた。
「…ん?」
だが成瀬の中で、何かが引っかかった。
血だらけで現れ、大通りの中心で倒れ、そのまま無数の銃弾を浴び、
死んだ。
彼の体は、文字通り『蜂の巣』になった。銃痕が目立つ、痛々しい体だ。彼はうつ伏せで倒れ被弾したため、
特に右側の体に銃痕が集中していた。
しかし、彼の体には『銃痕しかなかった』のだ。
全身を血で染めて現れたのにも関わらず、現れる以前に受けていたはずの傷が、無い。
つまり。
「返り血…。」
刹那、黒い鋭利な何かが目の前を横切った。気づくと、田村の首が飛んでいた。
少年が笑っているように見えた。
遺体は、それぞれで形状が異なっていた。ひどく残酷な殺し方だったのだろう。
成瀬は迷い続けていた。
苦しみながらも、生きようともがいていたあのevilの少年と、
evilに殺されたと思われる、眼前の局員たちの遺体。
どちらが本当の彼らの姿なのかと。
…いや。どちらも本当の姿なのかもしれない。
自分たちが見えているのは、evilの片鱗にすぎず、もしかすると、あの少年の様に、だれにも気づかれないように、身を潜め、息苦しさを感じながらも、生きようとしている彼らもいるのかもしれない。
ならば、今自分たちがやっていることは本当に正しい事なのだろうかと。
成瀬はそういう考え方のできる人間だった。
遺体を運び終わり、一息つく。
「成瀬ー。こっち手伝ってくれー。」
彼を呼んだのは、第三部隊の田村一等機動官だった。
成瀬は軽く手を挙げ、駆け寄る。
先ほどの少年の遺体だった。
無数の銃弾を浴びた彼の体は、まさに蜂の巣の様だった。
成瀬は遺体に近寄り、その場にしゃがみこんだ。
「evilなんて、いなくなっちまえばいいのにな。」
田村がそう切り出した。
「あ?」
「こいつらがいなければ、誰が感染しているかも分からない病気に怯える事もないし、ここの支部局の方々も死ななくて済んだ。ほんとに迷惑な連中だよ。お前もそう思うだろ?」
「…かもな。」
「…何だよ。『かもな』って」
「別に。こいつらにも、こいつらなりの事情があるんじゃねえの?」
「は?何だよ事情って。だから人間を殺してもいいのかよ。」
「それは俺たちだって一緒だろ。俺たちも、evilってだけでこいつらを殺してる。」
「当然だろ。こいつらはevilなんだから。」
埒が明かない。
成瀬は田村を静かに、少し睨んだ。だが、今ここで言い争ったところで何も意味がない。
「…運ぶぞ。」
担架に遺体を乗せようとする。遺体を見つめ、成瀬は気づかれないように、小さく手を合わせた。
「…ん?」
だが成瀬の中で、何かが引っかかった。
血だらけで現れ、大通りの中心で倒れ、そのまま無数の銃弾を浴び、
死んだ。
彼の体は、文字通り『蜂の巣』になった。銃痕が目立つ、痛々しい体だ。彼はうつ伏せで倒れ被弾したため、
特に右側の体に銃痕が集中していた。
しかし、彼の体には『銃痕しかなかった』のだ。
全身を血で染めて現れたのにも関わらず、現れる以前に受けていたはずの傷が、無い。
つまり。
「返り血…。」
刹那、黒い鋭利な何かが目の前を横切った。気づくと、田村の首が飛んでいた。
少年が笑っているように見えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Amor et odium
佐藤絹恵(サトウ.キヌエ)
ファンタジー
時代は中世ヨーロッパ中期
人々はキリスト教の神を信仰し
神を軸(じく)に生活を送っていた
聖書に書かれている事は
神の御言葉であり絶対
…しかし…
人々は知らない
神が既に人間に興味が無い事を
そして…悪魔と呼ばれる我々が
人間を見守っている事を知らない
近頃
人間の神の信仰が薄れ
聖職者は腐敗し
好き勝手し始めていた
結果…民が餌食の的に…
・
・
・
流石に
卑劣な人間の行いに看過出来ぬ
人間界に干渉させてもらうぞ
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる