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9話 あとは、死
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数十分後、次々に遺体が運び出され、14エリア支部局入口に並べられる。
遺体は、それぞれで形状が異なっていた。ひどく残酷な殺し方だったのだろう。
成瀬は迷い続けていた。
苦しみながらも、生きようともがいていたあのevilの少年と、
evilに殺されたと思われる、眼前の局員たちの遺体。
どちらが本当の彼らの姿なのかと。
…いや。どちらも本当の姿なのかもしれない。
自分たちが見えているのは、evilの片鱗にすぎず、もしかすると、あの少年の様に、だれにも気づかれないように、身を潜め、息苦しさを感じながらも、生きようとしている彼らもいるのかもしれない。
ならば、今自分たちがやっていることは本当に正しい事なのだろうかと。
成瀬はそういう考え方のできる人間だった。
遺体を運び終わり、一息つく。
「成瀬ー。こっち手伝ってくれー。」
彼を呼んだのは、第三部隊の田村一等機動官だった。
成瀬は軽く手を挙げ、駆け寄る。
先ほどの少年の遺体だった。
無数の銃弾を浴びた彼の体は、まさに蜂の巣の様だった。
成瀬は遺体に近寄り、その場にしゃがみこんだ。
「evilなんて、いなくなっちまえばいいのにな。」
田村がそう切り出した。
「あ?」
「こいつらがいなければ、誰が感染しているかも分からない病気に怯える事もないし、ここの支部局の方々も死ななくて済んだ。ほんとに迷惑な連中だよ。お前もそう思うだろ?」
「…かもな。」
「…何だよ。『かもな』って」
「別に。こいつらにも、こいつらなりの事情があるんじゃねえの?」
「は?何だよ事情って。だから人間を殺してもいいのかよ。」
「それは俺たちだって一緒だろ。俺たちも、evilってだけでこいつらを殺してる。」
「当然だろ。こいつらはevilなんだから。」
埒が明かない。
成瀬は田村を静かに、少し睨んだ。だが、今ここで言い争ったところで何も意味がない。
「…運ぶぞ。」
担架に遺体を乗せようとする。遺体を見つめ、成瀬は気づかれないように、小さく手を合わせた。
「…ん?」
だが成瀬の中で、何かが引っかかった。
血だらけで現れ、大通りの中心で倒れ、そのまま無数の銃弾を浴び、
死んだ。
彼の体は、文字通り『蜂の巣』になった。銃痕が目立つ、痛々しい体だ。彼はうつ伏せで倒れ被弾したため、
特に右側の体に銃痕が集中していた。
しかし、彼の体には『銃痕しかなかった』のだ。
全身を血で染めて現れたのにも関わらず、現れる以前に受けていたはずの傷が、無い。
つまり。
「返り血…。」
刹那、黒い鋭利な何かが目の前を横切った。気づくと、田村の首が飛んでいた。
少年が笑っているように見えた。
遺体は、それぞれで形状が異なっていた。ひどく残酷な殺し方だったのだろう。
成瀬は迷い続けていた。
苦しみながらも、生きようともがいていたあのevilの少年と、
evilに殺されたと思われる、眼前の局員たちの遺体。
どちらが本当の彼らの姿なのかと。
…いや。どちらも本当の姿なのかもしれない。
自分たちが見えているのは、evilの片鱗にすぎず、もしかすると、あの少年の様に、だれにも気づかれないように、身を潜め、息苦しさを感じながらも、生きようとしている彼らもいるのかもしれない。
ならば、今自分たちがやっていることは本当に正しい事なのだろうかと。
成瀬はそういう考え方のできる人間だった。
遺体を運び終わり、一息つく。
「成瀬ー。こっち手伝ってくれー。」
彼を呼んだのは、第三部隊の田村一等機動官だった。
成瀬は軽く手を挙げ、駆け寄る。
先ほどの少年の遺体だった。
無数の銃弾を浴びた彼の体は、まさに蜂の巣の様だった。
成瀬は遺体に近寄り、その場にしゃがみこんだ。
「evilなんて、いなくなっちまえばいいのにな。」
田村がそう切り出した。
「あ?」
「こいつらがいなければ、誰が感染しているかも分からない病気に怯える事もないし、ここの支部局の方々も死ななくて済んだ。ほんとに迷惑な連中だよ。お前もそう思うだろ?」
「…かもな。」
「…何だよ。『かもな』って」
「別に。こいつらにも、こいつらなりの事情があるんじゃねえの?」
「は?何だよ事情って。だから人間を殺してもいいのかよ。」
「それは俺たちだって一緒だろ。俺たちも、evilってだけでこいつらを殺してる。」
「当然だろ。こいつらはevilなんだから。」
埒が明かない。
成瀬は田村を静かに、少し睨んだ。だが、今ここで言い争ったところで何も意味がない。
「…運ぶぞ。」
担架に遺体を乗せようとする。遺体を見つめ、成瀬は気づかれないように、小さく手を合わせた。
「…ん?」
だが成瀬の中で、何かが引っかかった。
血だらけで現れ、大通りの中心で倒れ、そのまま無数の銃弾を浴び、
死んだ。
彼の体は、文字通り『蜂の巣』になった。銃痕が目立つ、痛々しい体だ。彼はうつ伏せで倒れ被弾したため、
特に右側の体に銃痕が集中していた。
しかし、彼の体には『銃痕しかなかった』のだ。
全身を血で染めて現れたのにも関わらず、現れる以前に受けていたはずの傷が、無い。
つまり。
「返り血…。」
刹那、黒い鋭利な何かが目の前を横切った。気づくと、田村の首が飛んでいた。
少年が笑っているように見えた。
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