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10話 黒い悪魔
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すべてが一瞬の出来事の様に感じられた。
田村の首を飛ばしたのは、無数の銃撃により死んだはずの少年だった。
彼の右腕から生えた黒く細い爪の様なものは、田村の首をはねた後、地面を高速で這い、そのまま支部局入口付近の機動官達を貫いた。
成瀬は腹を貫かれ、ごみの様に道路脇に捨てられた。
そして少年はゆっくりと、その場に立ち上がる。
澤部には何が起こったかを瞬時に察することはできなかった。
いや、この場に誰がいたとしても、誰一人としてこの状況を正確に瞬時に理解することは不可能だろう。
彼らが目にしているのは、人類が初めて対峙する、人を模した『怪物』であるのだから。
「撃ち殺せ!」
澤部の一声で放たれた無数の銃弾を浴びるかと思われた瞬間、
地面から無数に這い出た黒い粒子のようなものが激しく螺旋を描き、まるで台風のごとく、少年の体を包み込む。
放たれた弾丸は空しくも、かの黒い粒子の壁を貫くことは無かった。
「おい効いてないぞ!」
「…六課。あの黒いの、打てるか?」
「了解。」
「撃ち方止め。上空からの照射を開始する。総員、安全圏まで後退しろ。」
六課攻撃ヘリ二機は30mm機関砲照射を開始。淡々とした無機質な音とは裏腹に、激しく重い一撃が畳み掛ける。直撃だ。
しかし
「…おい、嘘だろ。」
無傷。
先ほどまで螺旋を描くように回転していた粒子は、飛来する衝撃から彼を守るように形状を固定化させ、
何層にも重なる盾の役割を果たしていた。
盾は崩壊し、粒子化した黒は、再び少年を囲い、躍動する。
人間を嘲笑うかの様だった。
少年は浮遊し続ける鉄塊を視界に捉える。
「…邪魔。」
一瞬だった。
粒子の一部が彼に入り込み、彼の足元から突き出た黒い二本の槍は、天を貫き、両ヘリを直撃した。
機体制御不能に陥ったヘリの一機が、損傷部分から火を吹き、回転しながら14エリア支部局へ衝突する。
衝撃で機関砲が爆発し、周囲に爆風と炎が広がる。
背後からの爆風により、少年の髪が少し靡く。
叫声と共に煌々と燃え上がる炎の前に、底の見えない蠢く闇がある。
絶速で蠢動する黒からこちらを覗く少年とその圧倒的力は、見るものに畏怖と絶望を与えた。
少年が右腕をゆっくりと前に出すと同時に、
蛭が腕に吸い付き入り込んでいくかの様に、
周囲の黒が、先ほどヘリを貫いた時に取り込んだ量とは比較にならない程に、ケタケタと笑いながら取り込まれる。
それを見た誰もが本能で悟った。「死」を。次に放たれる攻撃を食らえば、確実に死ぬと。
そして全ての黒が彼の右腕に集約する。
「きえろ。」
彼女は疾走する。
立ち並ぶビルを悠々と駆け抜け、標的目掛けて飛び込んだ。
少年の後方から飛来し、重心のかかった右足で彼の後頭部を蹴り込むと同時に、
散弾銃の銃口を彼のうなじに突き立て、放つ。
バキィと砕けた音を立てながら少年の頭が地面にめり込み、体が反れた。
「…見ィつけた。」
突如そこへ飛来したのは、蔵馬玲だった。
田村の首を飛ばしたのは、無数の銃撃により死んだはずの少年だった。
彼の右腕から生えた黒く細い爪の様なものは、田村の首をはねた後、地面を高速で這い、そのまま支部局入口付近の機動官達を貫いた。
成瀬は腹を貫かれ、ごみの様に道路脇に捨てられた。
そして少年はゆっくりと、その場に立ち上がる。
澤部には何が起こったかを瞬時に察することはできなかった。
いや、この場に誰がいたとしても、誰一人としてこの状況を正確に瞬時に理解することは不可能だろう。
彼らが目にしているのは、人類が初めて対峙する、人を模した『怪物』であるのだから。
「撃ち殺せ!」
澤部の一声で放たれた無数の銃弾を浴びるかと思われた瞬間、
地面から無数に這い出た黒い粒子のようなものが激しく螺旋を描き、まるで台風のごとく、少年の体を包み込む。
放たれた弾丸は空しくも、かの黒い粒子の壁を貫くことは無かった。
「おい効いてないぞ!」
「…六課。あの黒いの、打てるか?」
「了解。」
「撃ち方止め。上空からの照射を開始する。総員、安全圏まで後退しろ。」
六課攻撃ヘリ二機は30mm機関砲照射を開始。淡々とした無機質な音とは裏腹に、激しく重い一撃が畳み掛ける。直撃だ。
しかし
「…おい、嘘だろ。」
無傷。
先ほどまで螺旋を描くように回転していた粒子は、飛来する衝撃から彼を守るように形状を固定化させ、
何層にも重なる盾の役割を果たしていた。
盾は崩壊し、粒子化した黒は、再び少年を囲い、躍動する。
人間を嘲笑うかの様だった。
少年は浮遊し続ける鉄塊を視界に捉える。
「…邪魔。」
一瞬だった。
粒子の一部が彼に入り込み、彼の足元から突き出た黒い二本の槍は、天を貫き、両ヘリを直撃した。
機体制御不能に陥ったヘリの一機が、損傷部分から火を吹き、回転しながら14エリア支部局へ衝突する。
衝撃で機関砲が爆発し、周囲に爆風と炎が広がる。
背後からの爆風により、少年の髪が少し靡く。
叫声と共に煌々と燃え上がる炎の前に、底の見えない蠢く闇がある。
絶速で蠢動する黒からこちらを覗く少年とその圧倒的力は、見るものに畏怖と絶望を与えた。
少年が右腕をゆっくりと前に出すと同時に、
蛭が腕に吸い付き入り込んでいくかの様に、
周囲の黒が、先ほどヘリを貫いた時に取り込んだ量とは比較にならない程に、ケタケタと笑いながら取り込まれる。
それを見た誰もが本能で悟った。「死」を。次に放たれる攻撃を食らえば、確実に死ぬと。
そして全ての黒が彼の右腕に集約する。
「きえろ。」
彼女は疾走する。
立ち並ぶビルを悠々と駆け抜け、標的目掛けて飛び込んだ。
少年の後方から飛来し、重心のかかった右足で彼の後頭部を蹴り込むと同時に、
散弾銃の銃口を彼のうなじに突き立て、放つ。
バキィと砕けた音を立てながら少年の頭が地面にめり込み、体が反れた。
「…見ィつけた。」
突如そこへ飛来したのは、蔵馬玲だった。
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