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ちゃんと

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三月某日。
国道沿いのスタバ、窓際のいつもの席。
予定が入ることが少ない平日の休みには、ここに通うのが鉄板になっていた。
通勤、通学のために忙しなく車が行き交うのを尻目に、私はコーヒーカップ片手にまったりと過ごす。
それのなんと気持ちの良いことか。
今日は晴天で、窓際はぽかぽかとした陽気が届き、春の訪れを感じさせた。
私の脳内ではハッピーキャットが跳ね回っていた。
​それも過去のものになった。
ハッピー気分を吹き飛ばしてしまう人物が目の前に現れたからだ。
​「エリじゃない? 久しぶりー!」
​急にやって来た女の正体に気がつき、愛想笑いしかけた自分の顔が引きつったのがわかった。
​サクラだ。
高校時代の同級生。
一年の時、行動していたグループが一緒だったのだが、とても合わなかった。
進級したときに、互いが合わない同士だから近づかないでおこうと、逆に意気投合したくらいのレベルだ。
​なのに何を思ったか、当たり前のように対面の席に腰かけて来やがった。
​卒業して五年。こいつが卒業後進学したのかも就職したのかも、何ひとつ知らなかった。
​そんなやつがなんで話しかけてくるの?
そういう思いを込めて露骨に嫌な顔をして見せた。
​が、サクラは意に介さず続けた。
​「上京したんだけど、長期休みもらったからこっちに戻ってきたってばー!」
​心底どうてもいいと思って無反応でいたら、頬をつねられた。
​「いたいいたい!」
​「話聞いてる?」
​頬をつねり続けてる指に、よりいっそう力がこもる。
はいとしか言えなかった。
​「よろしい」
​サクラは勝ち誇った顔をしていた。
​「エリ今ケータイ屋さんにいるんでしょ? アヤから聞いたよ! 丁度機種変したいと思ってたから予約して行くからね!」
​アヤは共通の友人だ。
アヤとは今でも飲みにいったりする仲で、当時から私たち二人の仲の悪さを知っていたはずなのに。何で伝えたんだ。
そんでお前も、天敵なはずの私の店に来ようとよく思えるな。
心のなかでは辛辣に突っ込んだが、先程つねられた頬の痛みにより、わかりやすく抵抗する気はとうに失せていた。
​私が了承すると、サクラは目の前でスマホを取り出し、Web来店予約をしだした。
出勤日を確認されたので、私がいる日に来るつもりのようだ。
​しばらく操作したのち、予約完了画面をドヤ顔で見せつけ帰っていった。
​まるで嵐が過ぎていったようだった。
情報をまだ処理しきれない脳にカフェインをと、カップに手を伸ばした。
カップの中のぬるくなってしまったコーヒーを飲み込んだ。
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