カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

文字の大きさ
32 / 161

第三十二話 世界を黙らせた五分間

しおりを挟む
 時間:三ヶ月後。

 場所:世界最大級ストリーミングサービス「BlueStream」トップページ。

帝都テレビに干された結果、日本国内で澄心アニメーションの作品を放送してくれるテレビ局は一つもなかった。

だが、龍立はまったく気にしていなかった。

ブルーホエール・キャピタルが海外で持つネットワークを総動員し、『天空のメカニスト』を世界最大級のストリーミングサービス「BlueStream」で独占配信させたのだ。

宣伝枠も、前代未聞のスケールで押さえてある。

20時00分。世界同時配信スタート。

どこの局のロゴもない。どこの制作委員会のクレジットもない。

オープニングに浮かぶのは、たった一行だけ。

【夜の底で描き続けてきた、すべてのクリエイターたちへ――澄心ホールディングス】

第一話のクライマックス。

五分間にも及ぶ、途切れのない空中戦の長回し。

それは――天野愛が、ちゃんと食べて、ちゃんと眠って、源田特製の椅子に腰かけて、一ヶ月をかけて描き上げた“神の作画”だった。

数万枚の原画が、惜しげもなく燃やされている。

一枚一枚の線が、命を持ったように躍動する。

機械の轟音。雲を裂く風圧。光と影のめくるめく変化。

その五分間――世界中の視聴者から、言葉が消えた。

SNSは瞬く間に炎上する。

X(旧Twitter)のトレンドには、ハッシュタグが一気に上がった。

#ChengXinAnimation

#GodTierAnimation

#これが本物のアニメだ

一時間も経たないうちに、世界累計再生数は一億回を突破。

ユーザーレーティングは、ほぼ満点の9.9。

翌朝。澄心ホールディングス・CEOオフィス。

受付から内線が入る。

「社長。帝都テレビの大島プロデューサーが来ています。どうしてもお会いしたいと……」

龍立は吉岡に通すよう指示した。

扉が開いて入ってきた大島は、以前の傲慢さをどこかに置き忘れてきたらしい。

額には汗。顔には引きつった笑顔。

「澄原さん……いえ、龍立社長! おめでとうございます! 神回! 本当に神回でした!」

「その……ですね。ぜひ、うちの局で『天空のメカニスト』の日本国内独占放送権を買わせていただきたく。

 せっかくの“国産アニメ”ですから、日本のお茶の間でも流さないと……」

モニターに映っている再生数と話題性を見て、大島はよだれが出そうな顔をしている。

このIPさえ取れれば、自分の今年のボーナスは確定だ。

「いいですよ。」

龍立は視線をレポートから外さないまま、あっさりと言った。

「ほ、本当ですか?!」

大島の顔がぱっと明るくなる。

「お値段は話し合いましょう。うちとしても、最高ランク番組として扱わせていただきます。一話あたり五百万円でどうでしょう?」

龍立は、そこで初めてペンを置き、大島のほうを見た。

まるで、珍しいものでも見るような目だ。

「大島。何か勘違いしてないか。」

「うちの提示額は――一話あたり五億円だ。」

「……は?」

大島は椅子から飛び上がりそうになった。

「ご、五億?! そんなの強盗じゃないか! ハリウッド映画だってそこまでは――」

「それは“よその相場”だ。」

龍立は、静かに立ち上がり、大島の目の前に歩み寄る。

「澄心では、アニメーターたちが自分の“魂”を削って描いた. 一本一本の線が, 黄金と同じ価値を持っている。」

「それに――もう一つ条件がある。」

その言葉に、大島は反射的に一歩後ずさる。

「毎話の冒頭。帝都テレビのロゴの前に、黒背景に白文字で三十秒のテロップを流せ。」

「文面はこうだ。

 『過去に当局が搾取してきたすべてのアニメーターの方々に謝罪します。

 私たちの愚かな制度が、どれほど多くの才能の芽を潰してきたかを、ここに認めます』」

大島の顔から、血の気が引いた。

「そ、そんなの無理だ! 業界全体への宣戦布告じゃないか!」

「だったら、お引き取り願おう。」

龍立は、ドアのほうを軽く顎で示す。

「こっちは、世界市場を持っている。日本の視聴者が見られないとしても――それはお前たちテレビ局の“無能”のせいだ。」

大島は肩を落とし、ふらふらと退出していった。

三日後。

帝都テレビは、条件をすべて飲んだ。

その謝罪テロップは、日本社会全体を震撼させることになる。

“アニメ業界維新の日”と呼ばれるようになる出来事の始まりだった。

給料日。

天野愛は、ATMの前に立っていた。

震える指でキャッシュカードを差し込み、残高照会のボタンを押す。

画面に映った数字――【残高:8,800,000円】(基本給+初回ロイヤリティ分配)。

彼女は、それを見た瞬間、声を失った。

こんな額の数字を、自分名義の口座で目にしたことは、一度もなかった。

手で口を押さえたまま、涙が溢れ出す。

カプセルホテルの狭いカプセル。

期限切れのおにぎり。

泣きながらペンを握っていた夜。

あのすべてが、走馬灯のようによみがえる。

その肩に、そっと手が置かれた。

龍立だった。

「もう泣くな。」

彼はポケットからティッシュを取り出して差し出し、穏やかに笑う。

「これはスタートラインに過ぎない。

 少し広めの部屋を買え。住宅ローンの半分は会社が補助する。

 ご両親を東京に呼んでやれ。

 “絵を描く仕事”で、自分を食べさせるどころか、胸を張って生きられるって、ちゃんと見せてやるんだ。」

天野愛は震えながら振り向き、深々と頭を下げた。

「ありがとうございます……社長……。」

龍立は、人であふれかえる秋葉原の街並みを眺める。

今、一つの“人を食う塔”を、自分は叩き壊した。

だが、これはまだ第一歩に過ぎない。

澄心ホールディングスが旧世界を征服していく物語は――ここから始まるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

処理中です...