カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第七十二話 ヘッドハンターの狩り場

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 時刻:翌日 午前10:00

 場所:東京国際展示場・「帝国人材」スーパー就職フェア

 就職フェアというより――奴隷市場だった。黒いスーツを同じように着せられた新卒と求職者が、数万人。缶詰工場のラインみたいに、長い列を作り、審査を待つ。空気に漂うのは、押し殺した焦燥の臭い。

 面接官は壇上に高く座り、求職者の顔すらまともに見ない。機械のように手を振る。
「次。」
「不合格。」
「そっちで派遣契約。時給1000。」

 会場中央のVIP区画。帝国人材の会長・蟻川正臣が、テレビの取材を受けていた。「ええ。私どもは日本の雇用問題を解決しています。求職者の救世主です。」蟻川はカメラに向かって職業的な笑みを作る。「管理費を少々いただきますが、より良いサービスのためです。」

「少々?」

 兵のような声が、取材を切り裂いた。澄原龍立が、佐久間と吉岡を従え、会場へ大股で入ってくる。

 その背後には、巨大な移動式LEDスクリーン。スクリーンに映し出されたのは――昨夜の、大島由美の給与明細。

【企業支払い:3,000円】 VS 【本人手取り:1,100円】

 巨大な赤い対比数字が、会場の視線を突き刺した。

「蟻川会長。」龍立はスクリーンを指差す。「六割抜き。これがあなたの言う“少々”ですか? これをサービスと呼ぶなら、俺はこう呼ぶ――人身売買だ。」

 会場がどよめいた。列が止まり、無数の目がスクリーンに吸い寄せられる。蟻川の顔色が変わる。だがすぐに平静を装い、マイクを切って龍立へ近づき、低く脅した。

「澄原龍立。ここは俺の庭だ。これは業界のルールだ。俺たちが選別するから企業は人を取れる。労働者も仕事を得られる。俺は橋を架けている。」

「橋?」龍立は鼻で笑う。「違う。お前は関所を作ってる。しかも追い剥ぎの関所だ。」

 龍立は身を翻し、数万人の迷える求職者へ向き直った。そしてスマホを取り出し、スクリーンに新しいアプリアイコンを投影する。

【澄心Link(ChengXin Link)】

「皆さん。俺は澄心ホールディングスの澄原龍立だ。」声が会場のスピーカーを通り、隅々まで響く。「今日から、吸血の中間業者は要らない。このアプリはブロックチェーン技術を基盤にした分散型。仲介手数料はゼロ。企業が払った額を、そのまま皆さんが受け取る。社会保険も福利厚生も、全部“透明”にする。」

 乾いた草原に火種が落ちた。群衆が沸騰する。
「本当に? 全額?」
「抜かれないの?」

 蟻川が青ざめ、マイクを奪い取って叫ぶ。「騙されるな! それは詐欺だ! 帝国人材の認証がなければ、大企業は君たちの経歴を認めない! 業界から封殺されるぞ!」

「封殺?」龍立は蟻川を見て、魔王のような笑みを浮かべた。「蟻川。ひとつ勘違いしている。」

 声が低く落ちる。「――封殺されるのは、お前だ。」

 龍立が指を鳴らす。スクリーンに、澄心グループ全子会社の求人告知が一斉に表示された。

【即時、澄心グループは「帝国人材」との全取引を終了。】
【全ポジションは「澄心Link」直採用のみ。】
【搾取されてきた派遣労働者の転職を歓迎。違約金は、当社が負担する。】

 その瞬間、会場は崩れた。若者たちは「帝国人材」のロゴ入り履歴書を投げ捨て、潮のように龍立へ押し寄せる。長く搾り取られてきた魂が、ここでようやく声を取り戻した。

 蟻川は歪んだ顔で、秘密の番号へ電話した。永田町(国会)へ直通の、一本。

「先生……大変です。奴が飯碗を叩き割りに来た。資金繰りが切れたら……先生への政治献金が……」
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