カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第一百零二話 蹴り倒された鉄の桶

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 場所:F区・澄心ビル前

 時刻:午前10:00

 対立が噴き出した。一方――怒れる高齢清掃員が横断幕。「ロボはF区から出て行け」「飯を返せ」。もう一方――酔った会社員が路上でロボ(佐藤操作)を悪意で蹴り倒し、罵声を浴びせる。「キモい引きこもり! 変態! 老人の仕事を奪うな!」

 家の佐藤の画面が激しく揺れ、砂嵐に変わる。VRの幻肢痛で、その一撃が腹に入った気がした。「俺は……掃いてるだけだ……奪ってない……」委屈と恐怖で丸まり、ログアウトして逃げたくなる。

――澄心ビル前。

 龍立が出てきた。怒れる老人たちの前へ。

「澄原社長! 俺らを飢えさせる気か!」先頭の爺が震え声で叫ぶ。

「誰がクビにすると言った?」龍立は拡声器を取り、騒音を押し潰す。

「大爷、あなた七十だろ。下水に屈んで入る。腰が持つか? 高圧線塔に登る。脚が震えないか? 掃く・汚い・きつい――それはこれからロボがやる。若い“引きこもり”に、屈む役と苦労をやらせる。あなた方は経験がある。どこが詰まりやすいか、どの通りに落ち葉が溜まるか――知っている」

 龍立が手を振ると、背後の大画面に新しい募集が映った。

【澄心精工・ロボ現場保守員】
【業務:稼働監督/詰まり解除/充電/外装清掃】
【給与:現行+10%技術手当】

「今日から、腰を折って掃かなくていい」龍立は爺を見て、声を少しだけ柔らげた。

「あなた方は“指揮官”だ。画面の向こうの若い連中は要領が悪い。時々詰まる。ゴミが絡む。現場で支えてやってくれ。これは機械にはできない。人間――あなた方にしかできない」

 爺は呆けた。腰を折らない。給料が上がる。“指揮官”。隣で不器用に回転するロボを見て、嫌悪が薄れた。むしろ……不器用な孫みたいに見えた。「……ほ、本当か?」

 その日の午後、F区に妙に温かい光景が生まれた。ロボがビニール袋に車輪を絡め、空転している。爺が近づき、手慣れた動きで袋を引き剥がし――ロボの頭をポンと叩いた。

「不器用だな! 左だ、左! そっちは犬のフンがある!」

 イヤホン越しに、佐藤は爺の怒鳴りを聞いた。だが腹は立たなかった。むしろ、胸がほどけて――泣きたくなった。「……はい。ありがとうございます、爺さん……」

――だが、和解が見えた瞬間。空の雲が渦を巻き、墨汁のような黒に変わった。気象庁が赤色警報。超大型台風“海神”、二時間後に東京直撃。風速:50m/s。
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