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第一百四十八話 魂の養殖場
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時刻:その夜、深夜 23:00。
場所:朝日の光孤児院・理事長室(および地下資料室)。
夜が更けた。孤児院全体が、死んだような静けさに沈む。虫の声すらない。子どもたちの寝言さえ聞こえず、廊下では監視カメラの首振りに伴う微かな通電音だけが鳴っていた。
龍立は「長期寄付計画を確立するため、夜間警備を視察する必要がある」という名目で、孤児院の貴賓室に宿泊していた。
客室で、劉立が机に向かい、指をキーボードの上で踊らせる。画面には緑色のコードの滝が流れていた。
「兄弟、ここの監視システムは独立した閉回路で、物理的に外網と遮断されてる。だが、さっき会客室の茶卓の下に貼った“NFC中継器”で、最高権限を取った。」
劉立はエンターキーを叩く。
「監視映像は昨夜の録画に差し替え完了。動けるぞ。」
作戦開始。
龍立は源田を連れず、単独で動いた。黒い戦術服に着替え、指紋防止手袋を嵌める。
幽霊のように長い廊下を抜け、巡回教官を避け、電子デコーダで理事長室の“本棚に偽装された隠し扉”を開いた。
地下資料室
地上の温かい装飾は一切ない。冷たいコンクリート壁と、死体安置所のように並ぶ鉄のキャビネット。空気にはカビと古紙の匂いが澱んでいた。
龍立は懐中電灯を点け、最奥の金庫(暗証番号は劉立がすでに解読済み)の中から、分厚い黒い帳簿を見つけ出した。
最初のページを開いた瞬間、龍立の指は力みすぎて白くなった。
これは《児童成長記録》などではない。
《資産管理台帳》だ。
一頁ごとに一人の子どもの情報が記されている。だが、強調されている重点は吐き気を催す。
・番号:M-1098
・入庫日:2024.01.15
・国家措置費(月額):35万円
・医療補助(精神疾患偽装):15万円/月
・想定滞留年数:18年
・総収益見込み:7,560万円
・備考:里親申請を3件拒否(理由:知的障害証明を偽造、家族を説得して辞退させた)。
「ボス, これ見ろ。」イヤホン越しに、劉立が怒りを押し殺した声を漏らす。
「財務システムに侵入した。常盤貴子は国が子どもに出してる“措置費”(生活費と教育費)を、九割横流ししてる!」
「子どもたちの食費は一日200円。期限切れの缶詰と、不純物混じりの“特供米”を食わせてる。残りの金は、数十社のペーパーカンパニーで洗って、最終的に『佐々木法律事務所』って口座へ流してる。」
「それに……」劉立の声が震える。
「反抗や外部への告発を防ぐために、常盤貴子は子どもに長期で鎮静剤と抗うつ薬を飲ませてる。だから昼間のあいつらはロボットみたいだった。薬で去勢されてるんだ!」
一魚二吃。
子どもを“家畜”として囲い込み、頭数で国家の高額補助金を騙し取る。
“財源”を手放さないために、養子縁組を故意に阻み、薬で知能と未来を壊し、永遠にここから出られないようにする。
これは人を喰う流水線だ。
子どもの未来は、奴らの食卓の肉だった。
「誰だ、そこにいるのは!!」
突然、資料室の照明が一斉に点いた。
常盤貴子が、十数名の高圧スタンガンを持った私設警備を引き連れ、入口を塞いでいた。
もはや慈悲の仮面はない。顔には陰毒が剥き出しで、数珠は握り締められ、ギリギリと鳴る。眼差しには露骨な殺意が宿っていた。
「澄原社長。深夜に他人の帳簿を漁るなど、紳士の振る舞いではありませんわ。」
「あなたが誰に楯突いているか、ご存じ? この孤児院の背後に絡む利権は、あなたが動かせるようなものではない。」
「見てはいけないものを見てしまった以上——ここで“永眠”していただくしかありません。寄付者が不慮の事故で亡くなるなど、毎年のことですから。」
龍立はその重い帳簿を閉じ、ゆっくりと振り返った。
その目は、恐ろしいほど静かだった。
嵐の前の静けさ。
「紳士?」
龍立は手袋を外し、床へ投げ捨てる。
「畜生を相手に、紳士は要らない。」
耳元の通信器を押した。
「動け。」
場所:朝日の光孤児院・理事長室(および地下資料室)。
夜が更けた。孤児院全体が、死んだような静けさに沈む。虫の声すらない。子どもたちの寝言さえ聞こえず、廊下では監視カメラの首振りに伴う微かな通電音だけが鳴っていた。
龍立は「長期寄付計画を確立するため、夜間警備を視察する必要がある」という名目で、孤児院の貴賓室に宿泊していた。
客室で、劉立が机に向かい、指をキーボードの上で踊らせる。画面には緑色のコードの滝が流れていた。
「兄弟、ここの監視システムは独立した閉回路で、物理的に外網と遮断されてる。だが、さっき会客室の茶卓の下に貼った“NFC中継器”で、最高権限を取った。」
劉立はエンターキーを叩く。
「監視映像は昨夜の録画に差し替え完了。動けるぞ。」
作戦開始。
龍立は源田を連れず、単独で動いた。黒い戦術服に着替え、指紋防止手袋を嵌める。
幽霊のように長い廊下を抜け、巡回教官を避け、電子デコーダで理事長室の“本棚に偽装された隠し扉”を開いた。
地下資料室
地上の温かい装飾は一切ない。冷たいコンクリート壁と、死体安置所のように並ぶ鉄のキャビネット。空気にはカビと古紙の匂いが澱んでいた。
龍立は懐中電灯を点け、最奥の金庫(暗証番号は劉立がすでに解読済み)の中から、分厚い黒い帳簿を見つけ出した。
最初のページを開いた瞬間、龍立の指は力みすぎて白くなった。
これは《児童成長記録》などではない。
《資産管理台帳》だ。
一頁ごとに一人の子どもの情報が記されている。だが、強調されている重点は吐き気を催す。
・番号:M-1098
・入庫日:2024.01.15
・国家措置費(月額):35万円
・医療補助(精神疾患偽装):15万円/月
・想定滞留年数:18年
・総収益見込み:7,560万円
・備考:里親申請を3件拒否(理由:知的障害証明を偽造、家族を説得して辞退させた)。
「ボス, これ見ろ。」イヤホン越しに、劉立が怒りを押し殺した声を漏らす。
「財務システムに侵入した。常盤貴子は国が子どもに出してる“措置費”(生活費と教育費)を、九割横流ししてる!」
「子どもたちの食費は一日200円。期限切れの缶詰と、不純物混じりの“特供米”を食わせてる。残りの金は、数十社のペーパーカンパニーで洗って、最終的に『佐々木法律事務所』って口座へ流してる。」
「それに……」劉立の声が震える。
「反抗や外部への告発を防ぐために、常盤貴子は子どもに長期で鎮静剤と抗うつ薬を飲ませてる。だから昼間のあいつらはロボットみたいだった。薬で去勢されてるんだ!」
一魚二吃。
子どもを“家畜”として囲い込み、頭数で国家の高額補助金を騙し取る。
“財源”を手放さないために、養子縁組を故意に阻み、薬で知能と未来を壊し、永遠にここから出られないようにする。
これは人を喰う流水線だ。
子どもの未来は、奴らの食卓の肉だった。
「誰だ、そこにいるのは!!」
突然、資料室の照明が一斉に点いた。
常盤貴子が、十数名の高圧スタンガンを持った私設警備を引き連れ、入口を塞いでいた。
もはや慈悲の仮面はない。顔には陰毒が剥き出しで、数珠は握り締められ、ギリギリと鳴る。眼差しには露骨な殺意が宿っていた。
「澄原社長。深夜に他人の帳簿を漁るなど、紳士の振る舞いではありませんわ。」
「あなたが誰に楯突いているか、ご存じ? この孤児院の背後に絡む利権は、あなたが動かせるようなものではない。」
「見てはいけないものを見てしまった以上——ここで“永眠”していただくしかありません。寄付者が不慮の事故で亡くなるなど、毎年のことですから。」
龍立はその重い帳簿を閉じ、ゆっくりと振り返った。
その目は、恐ろしいほど静かだった。
嵐の前の静けさ。
「紳士?」
龍立は手袋を外し、床へ投げ捨てる。
「畜生を相手に、紳士は要らない。」
耳元の通信器を押した。
「動け。」
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