「精神干渉師」としてS級勇者パーティを追放された俺、ダンジョンの深層でメンタル療養所を開業したら、魔王まで常連になった件 ~ついでに配信した

RyuChoukan

文字の大きさ
17 / 144

第十七話 職場PUAの天才? いいえ、それは「狼性文化」です

しおりを挟む
      「誰だテメェは! このブロック様の仕事に口出しするとは!」

ブロックが怒号を上げると、機械蜘蛛の巨大な脚が地面を踏み砕き、リンへ向かって向きを変える。

「お前の最大顧客であり、最大の債権者だ。」



数十メートルの高さを誇る鉄の怪物の前に立つリンは、見た目だけなら蟻にも劣る。

それでも、その纏う圧は、ブロックに無意識のうちにトリガーから指を離させた。

「リン……?」

最近、地下城全域で噂になっている男の名を認識したブロックは、舌打ち混じりに言う。

「どうせ納期の催促だろ? 見ての通りだ、このゴミ虫どもがストなんざ始めやがってよ! オレだってどうしようもねぇ!」

「どうしようもない?」

リンは小さく首を振った。

腐った木材を見るような目つきで、彼は視聴者に向き直る。

「ご覧の通りです、皆さん。典型的な《強迫性パーソナリティ障害(OCPD)》に《コントロール依存性躁症》のコンボですね。」

「この手の経営者は、人間を機械として扱い、潤滑油をケチる。挙げ句の果てには、生身の労働者に対しても《給料という名の餌》と《夢という名の大きなクッキー》で動かせると思っている。」

【コメント】

『クッキー言うなww 嫌な予感しかしないんだが』

『うちの社長にも聞かせたい講義始まった』

『資本家モードのリン、絶対ろくなことしないでしょ』

リンは振り返り、数万のゴブリンやドワーフたちを見渡した。

彼は魔法で彼らを落ち着かせることもしなければ、その場で金をばらまくこともしない。

ただ、拡声器を一つ受け取ると、ネクタイを軽く直し、その顔に、妙に神々しく人を惹きつける笑みを浮かべた。

「同志の皆さん、本当にお疲れさまです。」

その声は低く、よく通り、不思議な魅了を帯びていた。

「怒りたくもなるでしょう。厳しすぎるノルマ、休みのない勤務。ですが――」

リンは一拍置き、空気の流れが変わるのを待つ。

「考えたことはありますか? 皆さんが作っているのは、ただの部品ではない。地下城全体の《背骨》なんです。」

「あの外の世界――第六十六層のように堕落していく街がある一方で、この第三十三層だけは、今も価値を生み続けている。」

「皆さんこそが、本物の《大国工匠》(マスタービルダー)なんですよ。」

【スキル発動:《群体催眠・狼性文化インストール》】

「ブロック領主がなぜ厳しいのか。彼は皆さんを“家族”だと思っているからだ。」

「限界を超えさせ、成長させるために、あえて鞭を振るっている。」

「九九六? 違う、それは“福報”だ。強者だけに許された特権だ。」

「自分の未来を想像してみてください。――この歯車の都がさらに拡大し、オーダーを完遂したあかつきには。」

「皆さん一人ひとりが、自分専用の機械蜘蛛を持つ日が来るんです。」

「さあ、選んでください。」

「ここで一生、石を投げて『俺たちは被害者だ』と叫び続けるか。」

「それとも工場へ戻り、自分の汗で伝説を鍛え上げるか。」

広場が静まり返る。

一秒。二秒。

先ほどまで怒りに燃えていたはずの工員たちの目が、ぼんやりとした迷いを経て、徐々に熱を帯びていく。

リンの言葉はウイルスのように脳へ入り込み、ドーパミンの分泌パターンを書き換えていく。

痛みは「崇高感」へと姿を変えた。

「働きたい……オレは、もっと働きたい……!」

一本のスパナが高々と掲げられる。涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ゴブリンが叫んだ。

「深淵の背骨になるぞおおお!」

「福報のために! 残業させろ!」

「社長! オレを工場に戻してくれ! 寝てる暇なんてねぇ!」

轟音と共に、数万の工員が打ち上げ花火のように散り、工場へ駆け戻っていく。

押し合いへし合いしながら作業台を奪い合い、たった十分で一週間止まっていたラインは再稼働した。

しかも、効率は以前の三倍。

機械蜘蛛のコックピットに座ったまま、その光景を見ていたブロックは完全に固まっていた。

手にしていた葉巻が股間に落ちて、ズボンを焦がしても気づかないほどに。

「こ、これが……マネジメント……?」

十年鞭を振り続けても得られなかった忠誠と熱狂を、この男は数分の演説で生み出してみせた。

【コメント】

『言葉ってこえええええええええ!』

『聞いてたら俺もなぜか仕事したくなってきた、やばい、正気保て』

『資本家が見たら泣いて崇めるレベル ユダヤ人も土下座する』

『ブロック:師匠……管理とは、こういうことだったのか……』

リンは機械蜘蛛の脚をぽんと叩き、穏やかに微笑んだ。

「さて、生産能力の問題は片付いた。」

「次は――君が夜も眠れず悩んでいる、本当の《厄介事》について話そうか。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

処理中です...