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第八十七話:田舎者が都会へ?――いいえ、俺たちは“レトロ・ラグジュアリー”の先導者だ
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(場所:銀河系第9区・「天枢」星間交易ステーション)
ここは銀河貿易の心臓部。山岳のように巨大な星間戦艦と反重力商船が、虹色に輝く力場シールドの中を縫うように行き交う。天を覆うホログラム広告は、理解不能なハイテク製品を延々と映し出していた。
それに比べて――リン一行の“生体動力船”。つまり、ガラスのドームを背負い、尻尾に魔王エンジンをぶら下げた龍王バハムートは、F1決勝のコースに、驢馬の糞団子をくくり付けたボロ荷車が紛れ込んだような有り様だった。
「ビー……警告。未確認の低級炭素系飛行体を検出。」
ステーション入港AIが、優越感に満ちた電子音を響かせる。赤いレーザーのスキャン網が、龍王を覆った。
「第404号辺境惑星の田舎者か。ここに“生体騎乗”の駐機区画は存在しない。そのような旧式輸送手段は空気を汚染する。直ちに廃棄処理区画へ回航し停泊せよ。あるいは、その場で自己廃棄せよ。」
「ふざけるな!」
カプセル内で元勇者アーサーが激昂し、聖剣を抜いた。「バハムートは龍王だ!深淵の覇者だぞ!それを“ゴミ”扱いだと?」
バハムートも怒りのブレスを吐いた――が、真空では虚しい煙が漂うだけだった。
「落ち着け。優雅さを保て。」
リンはネクタイを整え、通信ボタンを押して管制塔へ回線を繋ぐ。その声に卑屈さは一切ない。むしろ一流の競売人だけが持つ傲慢と矜持が滲んでいた。
「管制へ。言葉を選べ。我々は田舎者ではない。銀河辺境より来訪した――【古地球・レトロ生体工学調査団】である。」
「レトロ?」管制側の異星連絡員が一瞬、言葉を失った。
「そうだ。」
リンは窓外のバハムートを指した。
「この個体は、銀河に現存する唯一の、純天然・機械改造ゼロ、高貴なる太古の血統を持つ炭素系“生体車両”だ。機械昇華が進み、量産船が溢れる浮ついた時代に――貴様らが追うのは冷たいデータ。だが我々が追うのは“生命の温度”だ。言い換えれば、宇宙限定のクラシックカー。貴様らの量産級の殲星艦など、この個体の前では魂なきプラスチック玩具に等しい。」
「なに?純天然?改造なし?高貴な血統?」
管制の声色が変わった。技術が極限まで普及した宇宙では、“ハイテク”はもはや安物の大衆品。むしろ“純天然”“野性”こそが、超富豪の求める究極の贅沢になっていた。
「バハムート、協力しろ。ひと吠えだ。」リンが低く囁く。
「グォオオオオ――――!!!」
事情を理解していない龍王は、それでも魂の奥底から轟く咆咆を放った。原始の力、野性、暴力――生の波動が通信回線を貫き、管制塔の異星人の頭皮を痺れさせる。周囲の反重力船に乗る異星の成金たちが次々に停止し、無数の貪欲な視線がこちらへ突き刺さった。
「なんだあの筋肉のライン!あの“完璧ではない”鱗の艶!芸術だ!」
「電子補助なし?肉体だけで飛ぶ?ハードコアだ!レトロだ!」
「五千万スターコイン出す!触らせろ!一回だけ!」
先ほどまで嘲笑していた入港AIは、鳥肌が立つほど媚びた音声へ即座に切り替わった。
「尊貴なるレトロVIPのお客様。先ほどの非礼、深くお詫び申し上げます。専用“生体VIPゲート”をご利用ください。停泊料は免除。最高級の有機飼料と、全身鱗メンテナンスサービスを進呈いたします。」
バハムートは胸を張ってVIPゲートへ進入し、初めて“肉体”が機械より高値になる感覚を味わった。窓外の、技術は進んでいるのに目が“澄んだ愚かさ”で光る異星人たちを眺め、リンは口角をわずかに上げた。
「……理性的に見えて、案外チョロいな。」
ここは銀河貿易の心臓部。山岳のように巨大な星間戦艦と反重力商船が、虹色に輝く力場シールドの中を縫うように行き交う。天を覆うホログラム広告は、理解不能なハイテク製品を延々と映し出していた。
それに比べて――リン一行の“生体動力船”。つまり、ガラスのドームを背負い、尻尾に魔王エンジンをぶら下げた龍王バハムートは、F1決勝のコースに、驢馬の糞団子をくくり付けたボロ荷車が紛れ込んだような有り様だった。
「ビー……警告。未確認の低級炭素系飛行体を検出。」
ステーション入港AIが、優越感に満ちた電子音を響かせる。赤いレーザーのスキャン網が、龍王を覆った。
「第404号辺境惑星の田舎者か。ここに“生体騎乗”の駐機区画は存在しない。そのような旧式輸送手段は空気を汚染する。直ちに廃棄処理区画へ回航し停泊せよ。あるいは、その場で自己廃棄せよ。」
「ふざけるな!」
カプセル内で元勇者アーサーが激昂し、聖剣を抜いた。「バハムートは龍王だ!深淵の覇者だぞ!それを“ゴミ”扱いだと?」
バハムートも怒りのブレスを吐いた――が、真空では虚しい煙が漂うだけだった。
「落ち着け。優雅さを保て。」
リンはネクタイを整え、通信ボタンを押して管制塔へ回線を繋ぐ。その声に卑屈さは一切ない。むしろ一流の競売人だけが持つ傲慢と矜持が滲んでいた。
「管制へ。言葉を選べ。我々は田舎者ではない。銀河辺境より来訪した――【古地球・レトロ生体工学調査団】である。」
「レトロ?」管制側の異星連絡員が一瞬、言葉を失った。
「そうだ。」
リンは窓外のバハムートを指した。
「この個体は、銀河に現存する唯一の、純天然・機械改造ゼロ、高貴なる太古の血統を持つ炭素系“生体車両”だ。機械昇華が進み、量産船が溢れる浮ついた時代に――貴様らが追うのは冷たいデータ。だが我々が追うのは“生命の温度”だ。言い換えれば、宇宙限定のクラシックカー。貴様らの量産級の殲星艦など、この個体の前では魂なきプラスチック玩具に等しい。」
「なに?純天然?改造なし?高貴な血統?」
管制の声色が変わった。技術が極限まで普及した宇宙では、“ハイテク”はもはや安物の大衆品。むしろ“純天然”“野性”こそが、超富豪の求める究極の贅沢になっていた。
「バハムート、協力しろ。ひと吠えだ。」リンが低く囁く。
「グォオオオオ――――!!!」
事情を理解していない龍王は、それでも魂の奥底から轟く咆咆を放った。原始の力、野性、暴力――生の波動が通信回線を貫き、管制塔の異星人の頭皮を痺れさせる。周囲の反重力船に乗る異星の成金たちが次々に停止し、無数の貪欲な視線がこちらへ突き刺さった。
「なんだあの筋肉のライン!あの“完璧ではない”鱗の艶!芸術だ!」
「電子補助なし?肉体だけで飛ぶ?ハードコアだ!レトロだ!」
「五千万スターコイン出す!触らせろ!一回だけ!」
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「尊貴なるレトロVIPのお客様。先ほどの非礼、深くお詫び申し上げます。専用“生体VIPゲート”をご利用ください。停泊料は免除。最高級の有機飼料と、全身鱗メンテナンスサービスを進呈いたします。」
バハムートは胸を張ってVIPゲートへ進入し、初めて“肉体”が機械より高値になる感覚を味わった。窓外の、技術は進んでいるのに目が“澄んだ愚かさ”で光る異星人たちを眺め、リンは口角をわずかに上げた。
「……理性的に見えて、案外チョロいな。」
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