71 / 109
第十二話・哲学の道・引用される人生の声(五)
しおりを挟む
白川沙耶香の身体が、かすかによろめいた。
握りしめていた傘の柄から、指が一分ほど離れる。
雨は大きな影の内側からあふれ出し、肩口からコートをゆっくりと濡らしていく。
「……私……」
喉が震え、最初の音節は、ため息とも日本語ともつかない音になった。
残形はすぐさま影を縮める。
抱えていたものを奪われまいとするように、長い影が一気に細く伸び、彼女と劉立澄のあいだに割り込んだ。
無数の切れ端のような文を巻き込みながら、影は橋一杯に広がっていく。
――もう一度、「誰かが言った」にくるんでしまいさえすれば、たった今顔を出したばかりの「本音」は、また奥底へ押し返せる。
「お前は、彼女が喋るのが怖い」
劉立澄は影を見つめる。声は低く、静かだ。
右手で剣を握りしめながら、左手の符紙の束から、最下に挟んでいた一枚を抜き取る。
そこには何も書かれていない。ただの「空の符」だ。
「こんなに長いあいだ、人の口を借りて話してきたんだ。そろそろ、彼女自身に『私は』と言わせてやれ」
彼は一歩踏み出す。
足を置いたのは、わずかに盛り上がった石だ。
その瞬間、龍脈の気が足裏から噴き上がる。
この哲学の道の下を流れる水の筋は、もともと人の心のひそかな独り言を運ぶことを好む性質を持っている。
今夜、長く引用の重みで押さえつけられていたそれが、彼の一足に合わせて、かすかに身じろぎした。
「――澄語終式・照心」
彼はその名を小さく告げた。
澄心剣の刃は、残形には向けない。
橋の欄干へ向けてすっと走らせると、その軌跡に沿ってひと筋の光が水面へ降りた。
水面は誰かに布巾で軽く拭われたように、平らになり、灯りと影の映り込みは先ほどよりはっきりとする。
そこに映っているのは、ただの影ではない。
現実世界の哲学の道と、少しだけ違っていた。
現実の中で、さきほどのカップルはまだ、互いにとって無難な慰めの言葉を探している。
水の中の二人は、距離を取り、お互いの手も握っていない。顔には隠しようのない疲れと空白が浮かんでいる。
現実の中で、画板の青年はただ前かがみになり、呼吸を整えているだけ。
水の中の彼は、画板を地面に叩きつけ、その場にしゃがみ込んで頭を抱えていた。
それは未来予測でも、もっと良い結末でもない。
引用によって無理やり進路を変えられなければ、今夜、彼らの心の中に自然と生まれていたはずの光景――そのただの写しだ。
残形も、水の中の「予定されていた姿」を見た。
その身体に刻まれていた文字列が、一気に乱れ飛ぶ。
きちんと揃えられていた行が、水の中の反射でぐしゃりとかき混ぜられ、誰かが紙をわしづかみにしてくしゃくしゃにしたような模様になっていく。
「もう十分、彼らを囲ってきただろう」
彼は足さばきを変えた。
残形へ突っ込んでいくのではなく、橋の上をゆっくりと円を描くように歩き始める。
その一歩一歩は、引用の下敷きになって最も重くなっている地点――他人の名前の後ろ、自分の一人称の手前、ため息の切れ目――を踏んでいく。
この終式のために編んだ歩法だ。
避けるためでも、殴るためでもない。ただ、地の下を流れる龍脈の声を、元の位置へ踏み戻していくための足だ。
影は痺れを切らし、腕のような黒い線をいくつも伸ばして絡め取ろうとする。
引用で編まれた網の中に、もう一度引きずり込もうとする。
だが、その黒線が水に映った自分の姿に触れた途端、逆流の反撃を食らう。
ある線は「私は嫌だ」という四文字に躓き、
別の線は「本当はすごく苦しい」に絡め取られ、
多くの線は「どうしていいかわからない」という文の途中で動きを止められた。
残形は、一時的に身動きがとれなくなる。
自らが最も聞きたくなかった「私」という主語の群れに、行く手をふさがれて。
「白川さん」
劉立澄は、彼女の正面で足を止めた。
そこまでの距離は、そう遠くない。
彼はただ、穏やかに問いかける。
「誰の言葉も引用せずに、今いちばん口にしたい言葉は、なんですか」
その問いには、術は乗っていない。
ただ一人の人間から、もう一人への問いかけだ。
その問いが、静かに白川沙耶香の心に落ちる。
これまでの年月、彼女は本を読み、書き抜き、感想を共有する時、いつも「誰かの言葉」を前に置いてきた。
「誰かがこう言っている」と言い慣れてしまえば、「私はこう思う」は出さずに済む。
引用の陰に隠れることは、彼女にとって、生き延びるためのやり方でもあった。
今夜、哲学の道の下を流れる龍脈は、彼の足運びで少し向きを変えた。
彼女は気づく。
頭の中に浮かぶ名言、名台詞、引用句たちが、一斉に一時停止させられていることに。
その空白に、「自分で書き始めなければならない一行」が、にじみ出てくる。
…………
雨が透明な傘を叩く。
傘の柄に添えた指が、ぎゅっと締まり、少しゆるむ。
「……私、怖いんです」
その一言が外へ出たとき、彼女自身がいちばん驚いた。
「誰かが言っていたけど、怖がるのは普通のことだ」とでも続くのかと思えば、そうではない。
「本に書いてあった、自分の不安を受け入れろ」とも続かない。
ただ四文字――「私、怖いんです」。
それを聞いた残形は、針で突かれたようにびくりと震えた。
それは、残形がずっと避けてきた種類の言葉だった。
恐怖を「冷静な分析」に言い換え、「現実的判断」に変え、「みんなそうだ」で薄めてしまえれば、自分は見つからずに済む。
引用の下に潜り込み、誰にも気づかれないまま、主を守るふりをしながら窒息させ続けることができる。
今、その主人が、自分の声で言った。
影は、足元からひび割れ始める。
裂け目から溢れ出しているのは、黒煙ではない。
ぼろぼろに破れた書頁の影である。一枚一枚に、うっすらと誰かの名前と一文が見えるが、どれも「私」が欠けている。
主体を失った文は、雨に打たれながら薄れていき、水路へ流れ込み、龍脈に運ばれていった。
白川沙耶香はうつむき、肩を震わせている。
先ほどの「私、怖いんです」の先には、本当は長い文章が続いていた。
「だからこうしてきた」「本当はああしたかった」――そのすべてが今は喉につかえ、一度に出てこない。
ただ、胸の内側を何度も往復している。
それで十分だった。
一つの残形は、主人の「私」に穴を開けられた時点で、もう決着がついたも同然だ。
これ以降に残っているのは、後始末にすぎない。
残形は最後に、劉立澄を一瞥する。
その目には、悪意というより、どこか拗ねたような悔しさが宿っていた。
「私だって、あんたのためを思ってたんだよ」
そんな言い訳を、残形は何度も何度も、彼女の心の中で繰り返してきた。
守ることと締めつけることの境目が、自分でもわからなくなるほどに。
その感情が雨に散りきる前に、澄心剣の切っ先がそっと触れる。
刃先が小さな光をひとつすくい上げ、それを袖の中の符紙へ吸い込ませる。
今夜の記録として、静かに書き留めるように。
握りしめていた傘の柄から、指が一分ほど離れる。
雨は大きな影の内側からあふれ出し、肩口からコートをゆっくりと濡らしていく。
「……私……」
喉が震え、最初の音節は、ため息とも日本語ともつかない音になった。
残形はすぐさま影を縮める。
抱えていたものを奪われまいとするように、長い影が一気に細く伸び、彼女と劉立澄のあいだに割り込んだ。
無数の切れ端のような文を巻き込みながら、影は橋一杯に広がっていく。
――もう一度、「誰かが言った」にくるんでしまいさえすれば、たった今顔を出したばかりの「本音」は、また奥底へ押し返せる。
「お前は、彼女が喋るのが怖い」
劉立澄は影を見つめる。声は低く、静かだ。
右手で剣を握りしめながら、左手の符紙の束から、最下に挟んでいた一枚を抜き取る。
そこには何も書かれていない。ただの「空の符」だ。
「こんなに長いあいだ、人の口を借りて話してきたんだ。そろそろ、彼女自身に『私は』と言わせてやれ」
彼は一歩踏み出す。
足を置いたのは、わずかに盛り上がった石だ。
その瞬間、龍脈の気が足裏から噴き上がる。
この哲学の道の下を流れる水の筋は、もともと人の心のひそかな独り言を運ぶことを好む性質を持っている。
今夜、長く引用の重みで押さえつけられていたそれが、彼の一足に合わせて、かすかに身じろぎした。
「――澄語終式・照心」
彼はその名を小さく告げた。
澄心剣の刃は、残形には向けない。
橋の欄干へ向けてすっと走らせると、その軌跡に沿ってひと筋の光が水面へ降りた。
水面は誰かに布巾で軽く拭われたように、平らになり、灯りと影の映り込みは先ほどよりはっきりとする。
そこに映っているのは、ただの影ではない。
現実世界の哲学の道と、少しだけ違っていた。
現実の中で、さきほどのカップルはまだ、互いにとって無難な慰めの言葉を探している。
水の中の二人は、距離を取り、お互いの手も握っていない。顔には隠しようのない疲れと空白が浮かんでいる。
現実の中で、画板の青年はただ前かがみになり、呼吸を整えているだけ。
水の中の彼は、画板を地面に叩きつけ、その場にしゃがみ込んで頭を抱えていた。
それは未来予測でも、もっと良い結末でもない。
引用によって無理やり進路を変えられなければ、今夜、彼らの心の中に自然と生まれていたはずの光景――そのただの写しだ。
残形も、水の中の「予定されていた姿」を見た。
その身体に刻まれていた文字列が、一気に乱れ飛ぶ。
きちんと揃えられていた行が、水の中の反射でぐしゃりとかき混ぜられ、誰かが紙をわしづかみにしてくしゃくしゃにしたような模様になっていく。
「もう十分、彼らを囲ってきただろう」
彼は足さばきを変えた。
残形へ突っ込んでいくのではなく、橋の上をゆっくりと円を描くように歩き始める。
その一歩一歩は、引用の下敷きになって最も重くなっている地点――他人の名前の後ろ、自分の一人称の手前、ため息の切れ目――を踏んでいく。
この終式のために編んだ歩法だ。
避けるためでも、殴るためでもない。ただ、地の下を流れる龍脈の声を、元の位置へ踏み戻していくための足だ。
影は痺れを切らし、腕のような黒い線をいくつも伸ばして絡め取ろうとする。
引用で編まれた網の中に、もう一度引きずり込もうとする。
だが、その黒線が水に映った自分の姿に触れた途端、逆流の反撃を食らう。
ある線は「私は嫌だ」という四文字に躓き、
別の線は「本当はすごく苦しい」に絡め取られ、
多くの線は「どうしていいかわからない」という文の途中で動きを止められた。
残形は、一時的に身動きがとれなくなる。
自らが最も聞きたくなかった「私」という主語の群れに、行く手をふさがれて。
「白川さん」
劉立澄は、彼女の正面で足を止めた。
そこまでの距離は、そう遠くない。
彼はただ、穏やかに問いかける。
「誰の言葉も引用せずに、今いちばん口にしたい言葉は、なんですか」
その問いには、術は乗っていない。
ただ一人の人間から、もう一人への問いかけだ。
その問いが、静かに白川沙耶香の心に落ちる。
これまでの年月、彼女は本を読み、書き抜き、感想を共有する時、いつも「誰かの言葉」を前に置いてきた。
「誰かがこう言っている」と言い慣れてしまえば、「私はこう思う」は出さずに済む。
引用の陰に隠れることは、彼女にとって、生き延びるためのやり方でもあった。
今夜、哲学の道の下を流れる龍脈は、彼の足運びで少し向きを変えた。
彼女は気づく。
頭の中に浮かぶ名言、名台詞、引用句たちが、一斉に一時停止させられていることに。
その空白に、「自分で書き始めなければならない一行」が、にじみ出てくる。
…………
雨が透明な傘を叩く。
傘の柄に添えた指が、ぎゅっと締まり、少しゆるむ。
「……私、怖いんです」
その一言が外へ出たとき、彼女自身がいちばん驚いた。
「誰かが言っていたけど、怖がるのは普通のことだ」とでも続くのかと思えば、そうではない。
「本に書いてあった、自分の不安を受け入れろ」とも続かない。
ただ四文字――「私、怖いんです」。
それを聞いた残形は、針で突かれたようにびくりと震えた。
それは、残形がずっと避けてきた種類の言葉だった。
恐怖を「冷静な分析」に言い換え、「現実的判断」に変え、「みんなそうだ」で薄めてしまえれば、自分は見つからずに済む。
引用の下に潜り込み、誰にも気づかれないまま、主を守るふりをしながら窒息させ続けることができる。
今、その主人が、自分の声で言った。
影は、足元からひび割れ始める。
裂け目から溢れ出しているのは、黒煙ではない。
ぼろぼろに破れた書頁の影である。一枚一枚に、うっすらと誰かの名前と一文が見えるが、どれも「私」が欠けている。
主体を失った文は、雨に打たれながら薄れていき、水路へ流れ込み、龍脈に運ばれていった。
白川沙耶香はうつむき、肩を震わせている。
先ほどの「私、怖いんです」の先には、本当は長い文章が続いていた。
「だからこうしてきた」「本当はああしたかった」――そのすべてが今は喉につかえ、一度に出てこない。
ただ、胸の内側を何度も往復している。
それで十分だった。
一つの残形は、主人の「私」に穴を開けられた時点で、もう決着がついたも同然だ。
これ以降に残っているのは、後始末にすぎない。
残形は最後に、劉立澄を一瞥する。
その目には、悪意というより、どこか拗ねたような悔しさが宿っていた。
「私だって、あんたのためを思ってたんだよ」
そんな言い訳を、残形は何度も何度も、彼女の心の中で繰り返してきた。
守ることと締めつけることの境目が、自分でもわからなくなるほどに。
その感情が雨に散りきる前に、澄心剣の切っ先がそっと触れる。
刃先が小さな光をひとつすくい上げ、それを袖の中の符紙へ吸い込ませる。
今夜の記録として、静かに書き留めるように。
0
あなたにおすすめの小説
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
後宮祓いの巫女は、鬼将軍に嫁ぐことになりました
由香
キャラ文芸
後宮で怪異を祓う下級巫女・紗月は、ある日突然、「鬼」と噂される将軍・玄耀の妻になれと命じられる。
それは愛のない政略結婚――
人ならざる力を持つ将軍を、巫女の力で制御するための契約だった。
後宮の思惑に翻弄されながらも、二人は「契約」ではなく「選んだ縁」として、共に生きる道を選ぶ――。
【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです
* ゆるゆ
キャラ文芸
疲れ果てた非モテアラサーが、あやかしたちに癒されて、甘やかされて、溺愛されるお話です。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
灯台の猫と、嘘をつく少女(キャラ文芸短編集)
倉木元貴
キャラ文芸
灯台の猫と、嘘をつく少女
海沿いの町に住む高校生・澪は、灯台に住みつく白猫の声が聞こえる。
猫は澪の“嘘”を見抜き、彼女の心の奥にある後悔を揺さぶる存在だった。
転校生の遥斗が澪の秘密に気づき、二人は白猫の正体を探り始める。
しかし灯台の取り壊しが迫る中、白猫は突然姿を消す。
取り壊し前夜、白猫は澪に「最後の嘘をついてほしい」と告げる。
澪がその嘘を口にした瞬間、白猫は静かに消え、澪は初めて“本音”で未来と向き合う。
紅葉に消える恋
秋の山里で沙耶は、不思議な青年と出会う。彼は人懐っこく優しいが、どこか秘密を抱えている。交流を重ねるうちに心を通わせる二人。しかし秋祭りの夜、月明かりの下で青年の正体が露わになる。
火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~
秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。
五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。
都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。
見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――!
久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――?
謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。
※カクヨムにも先行で投稿しています
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる