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不安

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テストが終わり…次にくるイベントに備えて準備を進めていた。
俺の…初めてできた恋人だから慎重に準備を進めていきたい。

「おーい、ホームルーム終わっただろ?帰ろうぜ?」
「あぁ、悪い…今日ちょっと用事あって先に帰っててくれ!」

教室のドアから顔を覗かせ一緒に帰ろうと誘ってくる。
学校の下駄箱まで送ると、急いで教室に戻る。

「あれ?一緒に帰った訳じゃなかったのか!!w」
「ま、まぁな…たまにはいいだろ?バラバラでも」
「たまには、俺らの相手もしてくれよ?」



1人でゆっくりとたまに後ろを確認して「歩くの早いってー」と追いかけて来るかもしれないと期待しながら歩く。家に着くギリギリまでドキドキして歩いていた。

「本当に1人で、帰ってきてしまった…あいつと居る時間って特別だったのか…」

自分の1人部屋はいつもより狭く、どこか心寂しい気持ちになる。思わず、携帯に手が伸びる。
携帯の電話帳を開き、番号を見ては消してを繰り返す。

「はぁ、なに女々しい事してんだ。連絡してみたらいいだろ!」

携帯に手を伸ばし画面に指を乗せると着信画面に恋人の名前が表示される。

「おぉ、びっくりした。電話か…」

ひと息ついてから携帯を持ち上げ電話をとる。

「もしもし?家、着いたか?」
「……う、うん。着いて漫画読んでたとこ」と変な嘘をついてしまう。

(やべー変に緊張する…嘘ついたし…)

「そうか!!何読んでたの?」
「へ?あ、えっと…漢の武道道。4巻…お前は?用事、終わったのか?」
「漢の武道道か!面白いよな!!また、読ませてくれよ」
「あぁ、また家に来いよ。いつでも貸してやる」
「えっと…じゃ!また、明日学校でな!!」
「え…あ、またな…」

(用事についてはスルーされたな…明日、聞いてみていいかな?)

翌朝、雨が降る中いつも通り迎えに行く。

「おはよう!!どうした?浮かない顔だな?」
「え…?そんなことは、…ない。お前も今日は早いな、どうした?」
「そっか。あぁ、待たせるのは悪いかなって思って…はは」

(変に気まずい空気だな…聞きづらい…) 

ザワザワする気持ちを抑えて学校に到着する。

「またな…」と教室のドアを開けようと手を伸ばす。
「あ…あのさ、今日も放課後。忙しくて一緒に帰れないや!ごめん」
「そ、そっか…わかった。頑張れよ」と声を絞り出す。

(寂しい、一緒に居たい…と伝えたら迷惑だろうか?) 



教室の前で「一緒に帰れない」と伝えた時、今まで見たことがない寂しそうな顔をしていた。
いつもなら、「なに子犬みたいな顔してんだ?」と馬鹿にしてくるのはあっちなのに…

「……同じ顔してたじゃんか」と小さく呟く。

遠くから「おーーい!」とクラスメイトが呼んでくる。

「おはよ!今日もするのか?」
「あ!!馬鹿。声がでけーよ!」
「ん?あぁ、わりい…」

親しくクラスメイトと話す姿を見つめる。

「何の話だ?」
「い、いや…何でもないよ!!気にしないでくれ!」とクラスメイトの背中を押して教室に入って行こうとする。
「待て!!」と入って行くあいつの腕を咄嗟に掴む。
「へ!?」

腕を掴み、予鈴が鳴るのもお構いなしに廊下を走る。
今は使われていない空き教室にたどり着く。
ガラガラ…バンッ!勢いよくドアを閉める。

「な、なぁ…痛いって…どうした?」
「………どうした?それは、俺の言葉だ!!」
「大丈夫だって!!別に何もしてない!!」
「…い…い…一緒に居たい…寂しいなんて、迷惑か?」
「!!?……迷惑なんかじゃ…ないよ」
「じゃあ、どうして何をしているのか話してくれないんだ?」
「そ、それは…ごめん。今は話せない…」
「そう…か」
「あ…明日!!明日の放課後、俺ん家で!話すよ」と両手を大きく広げハグをしようと伝える。

あいつにハグをされただけなのにこんなに安心出来るなんて…俺も弱くなったな。
翌日の学校はずっとソワソワして過ごしていた。放課後になり、いつもより早く帰り道を歩いて帰ると「ちょっと待ってて」と玄関で待たされる。

「お待たせ、いいぜ!部屋…行こう?」
「お、おう…」

階段を上がると「目、瞑ってくれないか?」と言われ戸惑ったが緊張してたせいか素直に目を瞑る。
ガチャッ…とドアが開く音が聞こえる。

「な、なんだ?」
「はは…ドア開けただけだよ。さ、一歩前に」とゆっくりドアを閉める。
「おぉ、そっか。変なことするなよ?」

一歩前に出るとパーンとクラッカーを鳴らされびっくりして目を開ける。
目を開けた先にHAPPY Birthdayと書かれたパーティーフラッグが飾られている。

「誕生日、おめでとう!!!」
「え?た、誕生日??」
「そうだよ!今日は、お前の誕生日だろ?だから、こっそり準備してたんだ!」
「今までの用事ってまさか…この為に??」
「そうだってー!!なのに、凄い怒るから…俺が浮気でもしてると思ったのか?」
「当たり前だろ!コソコソとクラスメイトの奴と話してるし、訳を聞いても話してくれないから不安だった」
「ごめんな?初めての恋人の誕生日だから盛大にしたくて…驚いたか?」
「驚いたよ、お前の誕生日は覚えとけよ?」
「おう!!期待してるぜ!!」

空き教室でしてくれたように「ありがとう!!!幸せだ」と強く抱きしめる。





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