【完結】炒飯を適度に焦がすチートです~猫神さまと行く異世界ライフ

浅葱

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23.次の村で再確認してみた

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 翌朝、鐘が二つ鳴る前に俺たちは村の入口付近まで移動した。
 昨日は更に道具屋で鉈を買ったりした。鳥さまさまである。すぐに使う物や一日分の着替えは荷物袋の中に入っているがそれ以外は全てアイテムボックスの中だ。槍はアイテムボックスに平行にまっすぐ入れたら入った。入口は50cm四方だが奥行きはかなりあるらしい。猫紙は信仰心と供物によって力が増していくらしいので大いにミンメイにアピールし、積極的に肉もあげている。飼い猫にただ餌をやってるようにしか見えない? きっと気のせいだ。
 次に訪れるチェン村は夕方には着くらしい。馬の為に何度か休憩している間に俺は積極的に鳥を狩った。空を飛んでいる物なら簡単に捕まえられるので、ムササビのような物を捕まえてしまった時は御者が目を剥いた。

「こ、ここここれはウーシューじゃないか! 買い取らせてくれ!」

 ムササビに似た動物は思ったよりも肉がついていてこんなので飛べるのかと思う姿をしていた。御者が言うには非常に美味だがロホロホ鳥と同じくなかなか捕まえられないらしい。俺たちも食べてみたかったので運賃を少しまけてもらう代わりに味見をさせることにした。
 昼飯の休憩時である。ミンメイは手早く皮を剥ぎ、ムササビもどきをさばいた。意外と食べるところがありそうで、小分けにした肉を木の枝を削った串に刺し焼いていく。味付けは塩だけだったがそれでもムササビもどきの肉はなんとも言えず美味だった。鳥よりも肉! というかんじの肉である。何を言っているかわからないだろうがおいしかったのだ。

「これって森とか林じゃないと見られないですよね」

 御者に確認すると深く頷かれた。次の村を越えると林もなかなかないらしい。こんなことならもっと注意深く見ておくべきだったと俺は後悔した。つーかもっと森の生き物とかどんなのがいるかぐらい確認しておけばよかった。
 そう肩を落とした俺を猫紙が肉球でポンと叩く。その肉球をぷにぷにさせてもらいたかったがさすがに逃げられた。
 そんなわけで俺は鬱憤を晴らすかのごとく、チェン村に着くまで鳥を狩って狩って狩りまくったのだった。
 明日の朝また鐘が二つ鳴る頃に出ると御者に言われて手を振る。
 そして、

「あ、この村冒険者ギルドがないんだっけ……」

 着いてからそのことに気づいて頭を抱えた。

「宿屋か肉屋に売りに行きましょう」

 ミンメイが慰めるように言う。ギルドでは素材や肉などは大体決まった価格で引き取ってもらえるが、肉屋などは在庫次第らしい。

「まずは宿屋だな」

 チェン村の宿屋は二軒あった。女子を連れていることもありキレイな方に交渉を持ちかける。もちろんそういったことを行うのはミンメイだ。ロホロホ鳥を含む三羽で二人部屋を一泊無料にしてもらった。残りの鳥も買い取ろうかと聞かれたが一旦断わった。買い取り価格を知らないことで買い叩かれてはたまらない。ミンメイは本当にしっかりしていて俺はもう頭が上がらなかった。この世界でも未成年だっていう女子の後ろで何やってんだろう、俺。
 村はチュワン村よりもコンパクトで、村の人に尋ねれば肉屋はすぐに見つかった。一応村の肉屋は三軒あるらしい。一軒独占でなくてよかったとミンメイが言う。
 交渉は全てミンメイに任せているので俺は鳥を持ってただ着いていくだけだ。

「三軒全部回ってもいいでしょうか?」

 申し訳なさそうに言うミンメイに頷く。

「うん、任せるよ。俺、全然こういうことしたことないんだ。ありがとう」

 情けなく頭を掻くとミンメイは笑んだ。
 鳥を見せていくらでなら引き取ってくれるか交渉する。ミンメイと俺が如何にも若造と見て買い叩こうとした店もあったが、最終的にはおおむね満足のいく価格で引き取ってもらえたようだった。
 ホント、俺ってば情けない。
 少し自己嫌悪に浸っていたが、その夜ミンメイが真面目な顔をして確認してきたことに目を見開いた。

「あの、タツキさん。王都に着いてからのことなのですが……」
「うん。美鈴を一緒に探してもらうことになるけどいいかな」
「あのぅ、私タツキさんと猫神さまと、これからも一緒にいてもいいんですか?」
「え?」

 なんで聞かれるのかわからない。よほどマヌケな顔をしていたのか、ミンメイが困ったような表情をした。

「だって、私は王都までの案内役ですよね?」
「……うん、それはそうだけど……でも」

 俺はちら、と丸くなっている猫紙を見た。猫紙のことを知られている時点で同行させる選択肢以外はなかった。

「ええと、ミンメイは村に帰りたいのかな?」

 改めて確認すると、ミンメイはぶんぶんと首を激しく横に振った。

「だったら一緒にいてくれよ。猫紙も気に入ってるみたいだしさ」
「本当に、いいんですか?」
「うーん……俺さ、本当に何も知らないからミンメイがいなきゃ買物もまともにできなかったと思うし。年上のくせに情けないとは思うんだけど、できれば一緒に美鈴を探してくれないかな……?」

 ミンメイは俺の言葉を真面目な表情で聞くと、

「はい。ありがとうございます、よろしくお願いします」

 と頭を下げた。だが頭を下げるべきはこちらである。俺も一緒になって頭を下げ、顔を互いに上げた途端一緒になって噴き出した。猫紙が片目を薄く開ける。なんだか呆れられたようだった。
 チェン村の夜はそうして過ぎた。明日はミンユエ村である。
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