【完結】炒飯を適度に焦がすチートです~猫神さまと行く異世界ライフ

浅葱

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25.明日には王都に着くところまできた。長い

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 ミンユエ村を出発する際は何人か入れ替えがあった。この村に何日か滞在してから王都へ移動するらしい。この村からは王都へ行く乗合馬車が一日一便あるのだという。それだけ人の往来があるということだろう。出発は昼前で、途中野宿して明日の昼前に王都へ着くのだと聞かされた。

「朝早く出て夜に王都入りってことはできないんですか?」

 疑問に思って御者に尋ねると苦笑された。

「おいおい、兄ちゃん。どんだけ田舎からやってきたんだよ、ってイーの村からか。でもイーの連中だって王都の城門が開いている時間ぐらいは知ってると思うぜ」

 すいません。イー村のそのまた奥の山? というより異世界からきました。

「ああ……朝早く出ても城門が開いている時間に間に合わないんですか」

 やっと俺は理解した。各々の村の周りに築かれた高く頑丈な柵を見れば、この世界の厳しさを垣間見ることはできる。俺は猫紙とセットだから危険な目には未だ遭っていないが、御者が「運がいい」と言った通り狼などの猛獣や盗賊の類などはいつ出てきてもおかしくないのだ。

「こちら側の城門が閉まるのは四つ目の鐘が鳴る頃だ」
「え? 四つ目って昼頃ですよね。かなり早くないですか?」
「だから王都の近くまで移動しておく必要があるのさ」

 こちら側ということは他にも城門があるということだ。王都は円ではないだろうがぐるりと城壁で囲まれているのだろう。ヨーロッパや中国の都市のように。

「城門っていくつぐらいあるんですか?」
「東西南北の四つと他にも小さい門がある。あ、別の城門へ行けっていうのはなしだぞ。許可証がないからな」

 城門ごとに許可証まであるらしい。

「他の城門から入るとしたら徒歩でってことですか」
「ああ、だがどこの城門も長蛇の列だ。徒歩と馬や馬車は受付が違うから徒歩だと途中で切られる可能性もあるぞ」
「うわぁ……」

 王都へ入るのには馬車に乗っていた方がいいようだ。徒歩で入るには王都へ入る許可証の他に入場税のようなものがあり、王都に戸籍を持っている者は払う必要はないが、そうでないとそれなりの額を払うことになるのだとか。ちなみに乗合馬車の場合は御者が一括して払ってくれる為乗る時に運賃として徴収されている。俺たちの場合は俺が鳥を捕って提供したりしているのでかなり安く済んでいるとミンメイに感謝されている。
 俺としてはただ投げた石が当たってるだけなんだけど。紐の両端に石をくくりつけたものを投げるとうまく鳥の首に巻きつくことが多い。どうもこの世界、というかこの辺りの鳥はあまり攻撃され慣れていないらしく面白いように落ちてくる。つか攻撃され慣れている鳥ってなんだ。

「この辺りの鳥も適当に狩っちゃっていいんですかね?」

 一応伝書鳩のような物があったらまずいと思い確認すると、

「兄ちゃんは目が良さそうだから見えるかな」
「なんですか?」
「時々足になんか巻きついている鳥がいるんだが、それだけは攻撃しないように言われてはいるな」
「わかりました」

 御者に重要な情報をもらい俺は気を引き締めた。俺自身は観光気分だがここは異世界なのだ。
 とはいえいちいち足なんか確認していたら飛んでいかれてしまう。

〈猫紙さま、なんか足に巻きついてないかどうか確認できないか?〉
〈わかった。我が確認してやろう〉

 猫紙も鳥はもりもり食べる為俺たちの利害は一致し、それからも順調に鳥を狩り続けることができたのだった。
 ミンメイはきらきらした目を俺に向け、御者や同乗者はぽかんと口を開けていた。夕飯時に鳥をおすそわけしたらものすごく喜ばれたので、やっぱり食べ物は重要だと思う。いつのまにかみなさんに”鳥の兄ちゃん”と呼ばれるようになってしまった。
 残念ながら俺は空を飛べないぞ。
 かなり王都の近くまで来ているらしいが暗いせいか城壁は見えない。朝日を浴びた城壁とか見れたら感動するかもしれない。
 王都を目前にした夜は、そうして和やかに過ぎていった。
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