【完結】炒飯を適度に焦がすチートです~猫神さまと行く異世界ライフ

浅葱

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27.屋台の飯ってなんであんなにうまいんだろう

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 乗合馬車が集まる駐車場を出ると屋台が並んでいるのが見えた。肉まんあるよ肉まん! とか串はどうだいおいしいよ! とか客引きの掛け声が沢山聞こえてくる。
 鳥をしょってることだしどうしようかなと思っていたら、ぐ~~とおなかの鳴る音がした。傍らを見るとミンメイが顔を俯かせている。耳が真っ赤だった。
 別に恥ずかしがることじゃない。

「何食おうか。あの肉の串とかおいしそうじゃない?」
「……はい」
〈我は鳥でよいぞ〉
〈処理してないのをまんま食おうとしないでくださいよ〉

 今にも鳥にかぶりつこうとする猫紙を止め(街中でスプラッタとか勘弁してほしい)、俺たちは屋台の串焼き屋の方へ向かった。

「よう兄ちゃん、ずいぶんと豪勢じゃねえか!」

 串焼き屋のおっさんが俺の腰に吊るした鳥を見て言った。

「今はすぐに食べられるのがほしいんだよ。オススメはどれだ?」
「内臓が一番うめえぞ!」
「うーん……どうするかな」

 俺は残念ながらあまりホルモン系が得意ではないのだ。ミンメイを見ると、

「あの、私は鶏のハツと、鶏肉を……」

 と控えめに頼んでいた。

「んじゃあ俺はレバーと鶏、それから羊をくれ。あ、レバーは粉をかけないでそのまま焼いてくれよ」
「まいどありい!」

 おっさんは何やら調味料のような粉を肉に振りかけると、鉄板に油を引いて串を焼き始めた。炭火で焼くのではなく油で焼くらしい。なんとも不思議なかんじだが、その方が衛生上いいのかもしれないとも思った。
 なんでも炒めたり油で焼いたりするところはやっぱり中国風だと思う。って、俺は中国行ったことないから知らんけど。
 しっかり焼いてもらったレバーは一かけ以外猫紙にあげた。

『固いのぅ』
『生のままってわけにいかないだろ』

 一かけはミンメイにあげた。なんだか食べたさそうだったから。それに女の子は貧血になりやすいっていうしな。そういえば俺レバニラ炒めも作れたっけ。切って炒めて混ぜるだけだったけど。美鈴に作ってやったことを思い出した。
 早く会いたいなと思う。
 鶏といい羊といいスパイスがいいのか後を引く味だ。串焼き屋の側で食べていたのでおかわりをしてその後も何本か食べてから移動した。

「なんか汁物がほしいな」
「フントゥン屋がありますよ」
「フントゥン?」

 ミンメイが差した店はワンタンスープを売っていた。ワンタンのことをフントゥンというらしい。一碗ずつ食べた。皮から作っているらしく肉厚でもっちもちである。インスタントのワンタンスープとは比べ物にならないぐらいおいしい。

「うめえ」
〈猫紙さまも食べる?〉
「いらぬ」

 猫紙はそっけなく言うが気にはなっているらしい。俺の肩に乗っかった。手乗り文鳥ならぬ肩乗り猫である。重い。せめてしょってる籠の方にに乗ってほしい。
 神さまなのになんで重さがあるんだと思ったが、よく考えたら猫の身体に憑依しているのだ。重さはあって当然だった。
 ワンタンを一個残し、冷ましてから「ほら」と促すと猫紙はおいしそうに食べた。やっぱり食べたかったんじゃないか。そんな俺たちをミンメイは眩しいものを見るように目を細めて見ていた。

「ミンメイ、おなかいっぱいになったか?」

 うまかったはうまかったが暑い。汗が引いてから俺たちは席を立った。

「はい、もう何も入りません。おいしかったです」
「んじゃ行くか。って、おやっさん。冒険者ゴンフイにはどうやって行ったらいい?」
「冒険者ゴンフイ? あっちの道をまっすぐ行ったところにあらあ」
「ありがと」

 屋台のおじさんが手を出した。ミンメイを見る。ミンメイは銅貨を渡した。情報料ということらしい。確かに屋台だけじゃ食べていけないかもと思う。
 とりあえず冒険者ギルドに行って鳥を売ったり情報を集めたりしなければならない。
 そういえば、と思う。

〈猫紙さまって、王城で受理されたらそこでお別れになるわけ?〉
〈何を言う。お前のような危なっかしい者を放ったら一日も経たずに死んでしまうわ!〉
〈あー、うん。まぁ……そうかもな〉

 猫紙さまのおかげで今のところ何もないけど、きっと離れたらすぐに身ぐるみ剥されるような未来が見える。俺一人ならまだいいけど(よくないけど)ミンメイをそんな目に合わせるわけにはいかない。ちら、とミンメイを窺うと首を傾げられた。もっとちゃんと身体を鍛えたりしとけばよかったなと思った。
 ワンタン屋のおじさんが言った通り、冒険者ゴンフイにはすぐ着いた。他の村で見たよりも重厚な造りである。さすが王都というかんじだ。途中で摘んだ薬草なども一部は袋の中に入っているので依頼があったらそれを出せばいいと思う。アイテムボックスの中に納めた薬草や食べられる草などは随時だな。
 腰につけた鳥は都合十一羽。一羽は猫紙ので、一羽は宿屋で調理してもらうとして自由に売れるのは九羽というところである。王都に入る前に知り合った商人にはけっこう高く売れたようだ。一応冒険者ゴンフイでも価格を聞いてから売るか売らないか決めようという話をミンメイとした。
 扉を開けると、ゴンフイ内の視線が一気に集まった。うっ、と思う。手前に受付のカウンターがいくつもあり、その反対側に広い掲示板がある。その奥にはけっこうな数のテーブルセットがあり、二、三組の冒険者たちと思しき塊がくつろいでいた。うん、他の村のゴンフイよりよっぽどギルドっぽい。俺は気圧されたのをごまかすようにカウンターへ進み、お姉さんに声をかけた。
 チュワン村でも思ったが普通のどこにでもいそうな女性だ。失礼かもしれないがこういうところにいるのは美女というイメージがある。ラノベの読みすぎかもしれない。

「こんにちは」

 それまでつまらなそうな顔をしていた女性が笑顔になった。

「こんにちは。今日はどのようなご用事でしょうか」
「薬草と鳥を売りたいんですけど、鳥は買い取り価格を聞いてからで……」

 自分のゴンフイカードを出し、ミンメイにも出すよう促す。ミンメイは「私は何も……」と遠慮したがせっかくパーティーを組んでいるのだ。そんな遠慮は必要ないと首を振って出させた。
 金額などを聞いたり交渉するのはミンメイに一任しているので俺は身体をずらした。
 ミンメイがためらいながらも前に出てお姉さんと交渉を始めた。

「おー、すげえ鳥の数だな。一羽ぐらい譲ってくれよ」

 テーブルの方にいた冒険者に声をかけられる。キター! と不謹慎にも思ってしまった。が、俺特に格闘技とかやってないんだよね。

「これは高いですよ」

 ただでは譲れないという意思を持って答えると、ギロリと睨まれた。おお、こわい。

「タツキさん、鳥は先ほどの商人さんに売った価格の半分ぐらいだそうです。どうしますか?」
「そっか、じゃあさっきの商人のところに行ってみるか」
「そうしましょう」

 薬草だけ卸して俺たちはゴンフイを出た。
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