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25.智紀、GWに外出す
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GWになった。
部費の予算の一部がさっそく下りたので、ホームセンターまで工具等を買いに行くことになった。
わざわざ嵐山さんが車を出してくれるらしい。というのも麓の町にはホームセンターはなく、その隣町まで行かないとホームセンターがないかららしかった。
「まー、でもホームセンターなんか週一とかで行かないもんねー」
稲村がフォローしている。うん、まぁ俺も全然行かなかったな。
工具とか通販でもいいのではないかと思ったけど、やっぱり実物を見た方がいいらしい。
そんなわけで、嵐山さんがワゴン車を用意してくれた。ピー太が当たり前のように俺と共に乗ろうとしたが、そんなことをしたら迷子になって山に戻ってこれなさそうなので、
「早めに帰ってくるから!」
と説得して山に残ってもらった。油断も隙もあったものではない。
ピー太とはそれなりに話しているのだが、どうも籠から逃げた時は帰り道がわからなくなったらしい。まぁそうだよな。籠の中にいて、外の世界を知らなかったのに戻ってこられるわけがない。
でも戻ろうと思っていてくれたらしいということを知って泣きそうになった。
目つきも悪くなったけど、ピー太が俺のかわいいピー太だってことは変わらないみたいだ。
さて、それはともかくお出かけだ。
外出届を出し、俺、村西、稲村と、そして何故か藤沢生徒会長と河野副会長が乗った。居心地が悪いことこの上ない。
「……先輩がたはー、帰省されないんですかー?」
稲村が聞く。この状況で聞けるとかすげー強心臓だよなと思った。
「……やることがあるのでな」
「トモヤが残ってるからね~」
「なるほど」
稲村が頷いた。何がなるほどなんだ、何が。
「私を残る理由にするんじゃない」
「えー、だしにはしてないよ。本心だから」
「へらへらするなっ!」
いくら鈍感な俺でもわかる話だった。藤沢先輩はどうだか知らないが、どう考えても河野先輩は藤沢先輩に懸想している。内心げんなりした。
周りの方がなんとなくわかるって本当なんだな。
男同士で恋愛しててもいいけど、巻き込まないでほしい。
「頼むから車内でいかがわしいことはやめてくれよー。わかったら放り出すからねー」
運転している嵐山さんがなんてことないみたいに言う。
いかがわしいことって……。
「いかがわしいことって言い方が古風だよねー」
稲村が笑っている。気にしてもしょうがないので気にしないことにした。
車ならあっというまだけど、歩いたらどんだけかかるんだろう。車で山と谷(イメージだ)を越えて三十分ほどで着いた。駐車場がめちゃくちゃ広い。
今日は工具類もそうだけど、小屋の修理に使えそうな物なども買っていく予定だ。
「ピー太君が山に来てから4年以上は経ってるからねー。そろそろ小屋の修理も必要かなって。お掃除もしてあげたいでしょー?」
嵐山さんに言われて頷いた。餌は一応非常用として嵐山さんが買ってくれるらしい。
今の時期は必要ないだろうが、それでも梅雨の時期とか、風が強くて飛べない時もあるだろうしなー。
「……随分手厚くするんですね」
河野副会長が呟いた。
「人に飼われていた生き物が完全に野生になるのは難しいからね。インコなんて本当は南国の鳥なんだし。だから冬になる前に出会えてよかったと思ってるよ」
領収書をもらって買物を終えた。工具箱ってけっこう重いんだな。
ホームセンターの駐車場に屋台が少し出ていた。嵐山さんが内緒だよ、と言って焼きそばとかき氷を買ってくれた。
「わーい! ありがとうございますー!」
稲村がぴょんぴょん跳ねた。
屋台で食べる焼きそばってホントなんでこんなにおいしいんだろう。
「口の中青ーい!」
ほらほらー、とブルーハワイを買ってもらった稲村が口の中を見せる。
「やめろっての」
ぺしんと叩いた。
「いたーい。もっと楽しもうよー」
稲村のテンションが高い。かき氷とかってテンション上がるけどさ。今日はなんか暑いし。
村西も特に何も言わなかったが、楽しんでいるみたいだった。
「……生物管理か……やはり予算を……」
「トモヤ、職権乱用はだめだよ」
生徒会長はピー太が好きらしく、俺の頭とか腕に乗っているのを見ると羨ましそうな目を向けてくる。でもピー太は俺しか見てないしなぁ。ピー太に会長のところに行ってきてとか言うのも違うだろう。
生徒会長を気に入る生き物がいればいいななんて思ってしまうぐらいだ。それもまた傲慢な思いかもしれない。
買物をして寮に戻ったらもう一時だった。
「あれじゃ足りなかっただろうから、ごはん食べておいで~」
嵐山さんに言われ、俺たちは急いで食堂へ走ったのだった。(昼は二時までである。走るなって怒られた)
部費の予算の一部がさっそく下りたので、ホームセンターまで工具等を買いに行くことになった。
わざわざ嵐山さんが車を出してくれるらしい。というのも麓の町にはホームセンターはなく、その隣町まで行かないとホームセンターがないかららしかった。
「まー、でもホームセンターなんか週一とかで行かないもんねー」
稲村がフォローしている。うん、まぁ俺も全然行かなかったな。
工具とか通販でもいいのではないかと思ったけど、やっぱり実物を見た方がいいらしい。
そんなわけで、嵐山さんがワゴン車を用意してくれた。ピー太が当たり前のように俺と共に乗ろうとしたが、そんなことをしたら迷子になって山に戻ってこれなさそうなので、
「早めに帰ってくるから!」
と説得して山に残ってもらった。油断も隙もあったものではない。
ピー太とはそれなりに話しているのだが、どうも籠から逃げた時は帰り道がわからなくなったらしい。まぁそうだよな。籠の中にいて、外の世界を知らなかったのに戻ってこられるわけがない。
でも戻ろうと思っていてくれたらしいということを知って泣きそうになった。
目つきも悪くなったけど、ピー太が俺のかわいいピー太だってことは変わらないみたいだ。
さて、それはともかくお出かけだ。
外出届を出し、俺、村西、稲村と、そして何故か藤沢生徒会長と河野副会長が乗った。居心地が悪いことこの上ない。
「……先輩がたはー、帰省されないんですかー?」
稲村が聞く。この状況で聞けるとかすげー強心臓だよなと思った。
「……やることがあるのでな」
「トモヤが残ってるからね~」
「なるほど」
稲村が頷いた。何がなるほどなんだ、何が。
「私を残る理由にするんじゃない」
「えー、だしにはしてないよ。本心だから」
「へらへらするなっ!」
いくら鈍感な俺でもわかる話だった。藤沢先輩はどうだか知らないが、どう考えても河野先輩は藤沢先輩に懸想している。内心げんなりした。
周りの方がなんとなくわかるって本当なんだな。
男同士で恋愛しててもいいけど、巻き込まないでほしい。
「頼むから車内でいかがわしいことはやめてくれよー。わかったら放り出すからねー」
運転している嵐山さんがなんてことないみたいに言う。
いかがわしいことって……。
「いかがわしいことって言い方が古風だよねー」
稲村が笑っている。気にしてもしょうがないので気にしないことにした。
車ならあっというまだけど、歩いたらどんだけかかるんだろう。車で山と谷(イメージだ)を越えて三十分ほどで着いた。駐車場がめちゃくちゃ広い。
今日は工具類もそうだけど、小屋の修理に使えそうな物なども買っていく予定だ。
「ピー太君が山に来てから4年以上は経ってるからねー。そろそろ小屋の修理も必要かなって。お掃除もしてあげたいでしょー?」
嵐山さんに言われて頷いた。餌は一応非常用として嵐山さんが買ってくれるらしい。
今の時期は必要ないだろうが、それでも梅雨の時期とか、風が強くて飛べない時もあるだろうしなー。
「……随分手厚くするんですね」
河野副会長が呟いた。
「人に飼われていた生き物が完全に野生になるのは難しいからね。インコなんて本当は南国の鳥なんだし。だから冬になる前に出会えてよかったと思ってるよ」
領収書をもらって買物を終えた。工具箱ってけっこう重いんだな。
ホームセンターの駐車場に屋台が少し出ていた。嵐山さんが内緒だよ、と言って焼きそばとかき氷を買ってくれた。
「わーい! ありがとうございますー!」
稲村がぴょんぴょん跳ねた。
屋台で食べる焼きそばってホントなんでこんなにおいしいんだろう。
「口の中青ーい!」
ほらほらー、とブルーハワイを買ってもらった稲村が口の中を見せる。
「やめろっての」
ぺしんと叩いた。
「いたーい。もっと楽しもうよー」
稲村のテンションが高い。かき氷とかってテンション上がるけどさ。今日はなんか暑いし。
村西も特に何も言わなかったが、楽しんでいるみたいだった。
「……生物管理か……やはり予算を……」
「トモヤ、職権乱用はだめだよ」
生徒会長はピー太が好きらしく、俺の頭とか腕に乗っているのを見ると羨ましそうな目を向けてくる。でもピー太は俺しか見てないしなぁ。ピー太に会長のところに行ってきてとか言うのも違うだろう。
生徒会長を気に入る生き物がいればいいななんて思ってしまうぐらいだ。それもまた傲慢な思いかもしれない。
買物をして寮に戻ったらもう一時だった。
「あれじゃ足りなかっただろうから、ごはん食べておいで~」
嵐山さんに言われ、俺たちは急いで食堂へ走ったのだった。(昼は二時までである。走るなって怒られた)
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