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2.Flat(シェアハウス)
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授業が終ってビルの外で煙草を吸っていると、歩美がミユを連れておりてきた。
「フラットメイトが普段帰ってこない人たちだから、今夜聞けたら聞いてみるね」
そういうミユの目はなぜかあちこちに泳いでいたが、俺はその時住むところをゲットすることに頭がいっぱいでそれを気にする余裕はなかった。
「よかったね、カズ。キウィと日本人の男性が住んでるトコだって」
「ふうん」
男2人が住んでいるところに住む女の子というのもどうかと思ったが、あえて突っ込まないことにした。とにかく今は住むとこを見つけることが先決だ。
普段帰ってこない人と言っていたから、2、3日かかるのかと思っていたら、次の日には返事がきた。1人は家にいるから見にきてもいいという。
「わーい♪ キウィのフラットだぁ!」
歩美は自分のことのように喜んで着いてきた。
フラットは学校から確かに近くて、歩美が言った通り歩いて30分ぐらいのところにあった。似たような家が林立している、小さなアパートのような建物だった。
オークランド駅のすぐ裏で、家は綺麗だった。
「私の部屋はここ。私が出るからここがカズの部屋になるわ。トイレとバスは隣の部屋と一緒なの。上にキウィのフラットメイトが住んでて、リビングもそこにあるわ」
部屋は狭くてでかい窓は通りに面していたが、けっこう綺麗なところだ。2階に上がるとフラットメイトらしいキウィの男がいた。
背は180以上あるだろうか、金まではいかないブラウンの髪。すらっとしていて男からみてもカッコよく映る。
「カッコいいなぁ……」
歩美の目の色が変っている。1度でも好きだと思った自分に落ち込んでしまう。どうして女は西洋人が好きなんだ。そりゃ俺も金髪美女の裸は好きだが。
リビングは広くてけっこう綺麗だった。男2人にしては品が良すぎるぐらいだと思う。
「本当にここでいいの?」
名乗りあった後、探るような瞳で聞かれた。透き通るような青い瞳をしている。
ここでいいというより行くところがないんだからどうかお願いしますという気持ちだった。
「来週ホームステイを出なきゃいけなくて……」
たどたどしい英語でどうにか伝えると男は「OK」と言った。
「僕らは大体夜遅くにしか帰ってこないから、好きに使ってくれていい。引越しは来週何曜日?」
「えっと、日曜日でいいですか?」
「いいよ。来る前に1度連絡をくれれば家にいるようにするから」
男―クリスティアン(略してクリス)はその見た目より親切そうだった。フラットの値段も事前に聞いていたので話はすぐ済んだ。思ったよりあっけなく、俺の家は決まった。
すぐに決まってよかったよかったと歩美と喜んだ。これで家なき子にならなくて済んだ。けれど、ミユは少し難しそうな表情をした。
「ホントにあそこでよかったの?」
まだそんなことを言っている。
「ゆったじゃん。俺、家見つからなかったら来週から家なき子だって」
「まあね」
まだいぶかしげな表情を歩美に向けている。
「ミユはいつ帰るんだっけ?」
「3日後よ」
「それじゃ、ヒマがあったらみんなでごはんでも食べようよ」
無邪気にそんなことを言っている歩美を見ながら、ミユにはなんかおごらなきゃいけないかな、などど俺はその時悠長に考えていた。
そうそううまい話が転がっているはずはないなんて、一欠けらほども思ってなかった。
ミユは最後までいぶかしげな表情のまま帰国した。
俺がその表情の意味に気づくのはそれからまもなくのことだった。
「フラットメイトが普段帰ってこない人たちだから、今夜聞けたら聞いてみるね」
そういうミユの目はなぜかあちこちに泳いでいたが、俺はその時住むところをゲットすることに頭がいっぱいでそれを気にする余裕はなかった。
「よかったね、カズ。キウィと日本人の男性が住んでるトコだって」
「ふうん」
男2人が住んでいるところに住む女の子というのもどうかと思ったが、あえて突っ込まないことにした。とにかく今は住むとこを見つけることが先決だ。
普段帰ってこない人と言っていたから、2、3日かかるのかと思っていたら、次の日には返事がきた。1人は家にいるから見にきてもいいという。
「わーい♪ キウィのフラットだぁ!」
歩美は自分のことのように喜んで着いてきた。
フラットは学校から確かに近くて、歩美が言った通り歩いて30分ぐらいのところにあった。似たような家が林立している、小さなアパートのような建物だった。
オークランド駅のすぐ裏で、家は綺麗だった。
「私の部屋はここ。私が出るからここがカズの部屋になるわ。トイレとバスは隣の部屋と一緒なの。上にキウィのフラットメイトが住んでて、リビングもそこにあるわ」
部屋は狭くてでかい窓は通りに面していたが、けっこう綺麗なところだ。2階に上がるとフラットメイトらしいキウィの男がいた。
背は180以上あるだろうか、金まではいかないブラウンの髪。すらっとしていて男からみてもカッコよく映る。
「カッコいいなぁ……」
歩美の目の色が変っている。1度でも好きだと思った自分に落ち込んでしまう。どうして女は西洋人が好きなんだ。そりゃ俺も金髪美女の裸は好きだが。
リビングは広くてけっこう綺麗だった。男2人にしては品が良すぎるぐらいだと思う。
「本当にここでいいの?」
名乗りあった後、探るような瞳で聞かれた。透き通るような青い瞳をしている。
ここでいいというより行くところがないんだからどうかお願いしますという気持ちだった。
「来週ホームステイを出なきゃいけなくて……」
たどたどしい英語でどうにか伝えると男は「OK」と言った。
「僕らは大体夜遅くにしか帰ってこないから、好きに使ってくれていい。引越しは来週何曜日?」
「えっと、日曜日でいいですか?」
「いいよ。来る前に1度連絡をくれれば家にいるようにするから」
男―クリスティアン(略してクリス)はその見た目より親切そうだった。フラットの値段も事前に聞いていたので話はすぐ済んだ。思ったよりあっけなく、俺の家は決まった。
すぐに決まってよかったよかったと歩美と喜んだ。これで家なき子にならなくて済んだ。けれど、ミユは少し難しそうな表情をした。
「ホントにあそこでよかったの?」
まだそんなことを言っている。
「ゆったじゃん。俺、家見つからなかったら来週から家なき子だって」
「まあね」
まだいぶかしげな表情を歩美に向けている。
「ミユはいつ帰るんだっけ?」
「3日後よ」
「それじゃ、ヒマがあったらみんなでごはんでも食べようよ」
無邪気にそんなことを言っている歩美を見ながら、ミユにはなんかおごらなきゃいけないかな、などど俺はその時悠長に考えていた。
そうそううまい話が転がっているはずはないなんて、一欠けらほども思ってなかった。
ミユは最後までいぶかしげな表情のまま帰国した。
俺がその表情の意味に気づくのはそれからまもなくのことだった。
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