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4.Fact(事実)
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その日、珍しく早く2人が帰ってきた。
早いといっても11時過ぎだ。普段は12時過ぎ1時過ぎになる。
俺は次の日学校がある場合遅くても12時過ぎには寝てしまうから、ずっと2人とはすれ違っていた。
リビングでなんとなくテレビを見ている時、ほんの少し時間を置いて2人が戻ってきた。
2人は少し疲れているようだった。ケンは少し困ったような目で俺を見る。
この間からいったいなんなんだろう。
それよりも俺はなにかしなきゃいけないんだろうか。コーヒーでも淹れた方がいいんだろうかとか考える。
こっちがそんなことを考えている間にケンに声をかけられた。
「コーヒーいれるけど、飲む?」
「はい、ありがとうございます。いただきます……」
俺の戸惑いをよそに、ケンは慣れた仕草で3人分のコーヒーをいれてくれた。そして俺の隣に腰かける。正面の1人掛けのソファにクリスが座った。
なぜかしばらく3人とも無言でコーヒーをすすっていた。なんか居心地が悪い。そう思っていると、ケンがまた口を開いた。
「クリス、カズ君は僕らのこと知らないみたいだよ」
クリスはそれに驚いたような表情を俺に向けた。キレイな青い瞳にじっと見つめられて更に居心地が悪くなる。
それ以前にこの間から聞かれている「僕らのこと」ってなんだろう。それを知らないとなにか問題があるんだろうか。
クリスはしばらくじっと俺を見つめていたが、大げさな仕草で肩を竦めた。
「それはまいったな」
呟いて、どうしてか2人して俺のことを伺っている。もう我慢できなかった。
「その、僕らのことってなんですか?」
ケンは軽くため息をついた。そして、クリスを見る。
「知っておいた方がいいよね?」
「ああ」
その2人の様子になにか違和感を感じる。それがなんなのかわからない。
ケンはまた困ったような表情を浮かべて、そして。
「ミユちゃんにはなにも聞いてないんだよね?」
「だから、なんなんですか?」
いいかげんその含んだ物言いに苛立ってきていた。クリスの視線もひどく痛く感じる。
「その……僕たちおかまなんだけど、気持ち悪くない?」
……え。
一瞬なにを言われたのかわからなかった。
い、今、おかまって、おかまって言ったよな……おなべじゃないよな……それは女だろって違うだろっ!
俺の様子を窺っている2人の視線が痛い。穴が空くほど見つめられるなんて表現がぴったりだ。本当にこれ以上見つめられたら穴が空いてしまうかもしれない。
「ええと……おかまって……女装とかするんですか……?」
ケンの目が見開かれる。ああ、しまった、そうじゃなくて。そんなことが聞きたいんじゃなくて、ああ、もうどうしたらいいんだっ!
1人百面相をしている俺の表情が面白かったのか、クリスがぷっと吹き出した。よし、場が和んだぞ! ってああだからそうじゃなくて……。
「別に女装とかはしないよ。うーん、どちらかといえばゲイっていえばいいのかな?」
「そうですか……」
ケンの目も笑っているように見える。とりあえず下手なことは言ってないようだ。
そうだ、とりあえず刺激しないようにすることが先決だ。
「……ええと……俺知らなかった、けど、でも、気にしてませんから。……わざわざ教えてくれてありがとうございました……」
一言一言考えながらどうにか告げてみると、2人ともやっぱり困った顔をした。
なんだか俺がとても悪いことをした気になる。
「……カズ君はいい子だね」
唐突にそんなことを言われて戸惑った。クリスもひどく優しい目で俺を見ている。どうしてかその、透き通るような青い瞳にどぎまぎした。
「カズ君はノンケだよね」
ケンにまた聞かれる。そのノンケという言葉の意味もわからなかったけど、どうもゲイではないという意味のような気がして俺は頷いた。
2人がそれに苦笑する。
「ところで、今日なにしてた?」
クリスが別の話題を振ってくれたのに、ほっとする。
「学校行っただけですよ」
すごくいい人たちだと思うけど、やっぱり身の危険を感じるから早々に引っ越した方がいいかもしれない。
ミユのいぶかしげな表情を思い出す。そして、歩美の意味ありげな表情もまた思い出された。
なんか腹が立ってきた。
2人の話に耳を傾けながら、明日歩美を問い詰めてやると決意した。
早いといっても11時過ぎだ。普段は12時過ぎ1時過ぎになる。
俺は次の日学校がある場合遅くても12時過ぎには寝てしまうから、ずっと2人とはすれ違っていた。
リビングでなんとなくテレビを見ている時、ほんの少し時間を置いて2人が戻ってきた。
2人は少し疲れているようだった。ケンは少し困ったような目で俺を見る。
この間からいったいなんなんだろう。
それよりも俺はなにかしなきゃいけないんだろうか。コーヒーでも淹れた方がいいんだろうかとか考える。
こっちがそんなことを考えている間にケンに声をかけられた。
「コーヒーいれるけど、飲む?」
「はい、ありがとうございます。いただきます……」
俺の戸惑いをよそに、ケンは慣れた仕草で3人分のコーヒーをいれてくれた。そして俺の隣に腰かける。正面の1人掛けのソファにクリスが座った。
なぜかしばらく3人とも無言でコーヒーをすすっていた。なんか居心地が悪い。そう思っていると、ケンがまた口を開いた。
「クリス、カズ君は僕らのこと知らないみたいだよ」
クリスはそれに驚いたような表情を俺に向けた。キレイな青い瞳にじっと見つめられて更に居心地が悪くなる。
それ以前にこの間から聞かれている「僕らのこと」ってなんだろう。それを知らないとなにか問題があるんだろうか。
クリスはしばらくじっと俺を見つめていたが、大げさな仕草で肩を竦めた。
「それはまいったな」
呟いて、どうしてか2人して俺のことを伺っている。もう我慢できなかった。
「その、僕らのことってなんですか?」
ケンは軽くため息をついた。そして、クリスを見る。
「知っておいた方がいいよね?」
「ああ」
その2人の様子になにか違和感を感じる。それがなんなのかわからない。
ケンはまた困ったような表情を浮かべて、そして。
「ミユちゃんにはなにも聞いてないんだよね?」
「だから、なんなんですか?」
いいかげんその含んだ物言いに苛立ってきていた。クリスの視線もひどく痛く感じる。
「その……僕たちおかまなんだけど、気持ち悪くない?」
……え。
一瞬なにを言われたのかわからなかった。
い、今、おかまって、おかまって言ったよな……おなべじゃないよな……それは女だろって違うだろっ!
俺の様子を窺っている2人の視線が痛い。穴が空くほど見つめられるなんて表現がぴったりだ。本当にこれ以上見つめられたら穴が空いてしまうかもしれない。
「ええと……おかまって……女装とかするんですか……?」
ケンの目が見開かれる。ああ、しまった、そうじゃなくて。そんなことが聞きたいんじゃなくて、ああ、もうどうしたらいいんだっ!
1人百面相をしている俺の表情が面白かったのか、クリスがぷっと吹き出した。よし、場が和んだぞ! ってああだからそうじゃなくて……。
「別に女装とかはしないよ。うーん、どちらかといえばゲイっていえばいいのかな?」
「そうですか……」
ケンの目も笑っているように見える。とりあえず下手なことは言ってないようだ。
そうだ、とりあえず刺激しないようにすることが先決だ。
「……ええと……俺知らなかった、けど、でも、気にしてませんから。……わざわざ教えてくれてありがとうございました……」
一言一言考えながらどうにか告げてみると、2人ともやっぱり困った顔をした。
なんだか俺がとても悪いことをした気になる。
「……カズ君はいい子だね」
唐突にそんなことを言われて戸惑った。クリスもひどく優しい目で俺を見ている。どうしてかその、透き通るような青い瞳にどぎまぎした。
「カズ君はノンケだよね」
ケンにまた聞かれる。そのノンケという言葉の意味もわからなかったけど、どうもゲイではないという意味のような気がして俺は頷いた。
2人がそれに苦笑する。
「ところで、今日なにしてた?」
クリスが別の話題を振ってくれたのに、ほっとする。
「学校行っただけですよ」
すごくいい人たちだと思うけど、やっぱり身の危険を感じるから早々に引っ越した方がいいかもしれない。
ミユのいぶかしげな表情を思い出す。そして、歩美の意味ありげな表情もまた思い出された。
なんか腹が立ってきた。
2人の話に耳を傾けながら、明日歩美を問い詰めてやると決意した。
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