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四、在床上(ベッドの上で)
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血の繋がりがなかったということを聞いた。
後宮の噂は、ただの噂ではなかったのだと明玲はようやく知った。でも母である明妃が、攫われてきて五か月で子を産んだなど誰も教えてはくれなかった。それならばどうして明玲は後宮にいられたのだろう。皇帝からしたら別の男の子供なのに、どうして明玲は殺されなかったのだろう。
疑問が次々と顔を出し、明玲は混乱した。そんな彼女の様子に偉仁は苦笑した。
「明玲、思い悩むのは後にしろ。大事な話の途中だ」
「……は、はい……」
目の前にとても秀麗な顔があって、明玲は何度も瞬きした。こんな至近距離で、しかも床の上で兄の顔を見たことなどなかった。みるみるうちに全身が熱くなる。おそらく今顔は真っ赤になっているのではないかと明玲は思った。
偉仁が機嫌よさそうに明玲の頬を撫でた。
「明玲」
「……ひゃ、ひゃいっ……!」
頬を撫でられた。頬を、頬を、その美しい手で! と明玲の頭の中は恐慌状態になっていた。そうでなくても明玲は偉仁を兄としてではなく、一人の男性として恋している。もっと小さい頃はただの憧れだったが、引き取られて近くで兄を知るにつけ、明玲はどんどん偉仁を好きになった。年が明けて十四歳になったと知り、誰かに嫁がなければいけないと考えただけで涙が溢れた。明玲とて兄に妻がいることはわかっているし、夜は決して部屋を出てはいけないと言われた理由もわかっていた。明玲の部屋は兄と妻たちの部屋の間にある。もし部屋を出て兄が妻たちの部屋に向かうところを見てしまったら、それだけで泣いてしまったに違いない。自分は兄やその妻たちに甘えているのだということは知っていたが、どうすることもできなかった。
「明玲、まだそなたを娶ることはできぬが、来年には私の妻になるのだと覚えておけ」
「……は、はい……はいいいいいいいっっ!?」
とんでもないことを言われ、明玲は更に混乱した。偉仁は苦笑した。
「全く……色気も何もないな……だが何度でも言おう。……そなたは私のものだ」
「え? あ、う? い?」
「もう黙れ」
混乱に拍車がかかり目を白黒させている明玲の頤を偉仁はクイ、と少し持ち上げた。
「~~~~~~っっ!!」
(何? なになになになに~~~~っっ!? これは口付け? 口吸い? えーーーーーー?)
秀麗な面が更に近づいてきたかと思うと、その薄い唇が明玲のそれに重なった。そして半開きになっていた唇をぺろりと舐められ、瞬く間にするりと偉仁の舌が口腔内に入ってきた。
「んっ、んんーーっ!」
戸惑って動けないでいる明玲の舌を偉仁の舌が捕らえた時、ぞくぞくするような感覚が背筋を辿り、明玲はびくびくと身を震わせた。その身体が逃げないようにと、片腕でがっしりと抱かれていることに明玲はようやく気付いた。
(哥の、もの? 私は最初から……)
生まれた時から側にいたと聞いていた。赤子の時から明玲は偉仁にべったりであったと。そして偉仁も明玲を邪険にすることなく、よく面倒を看てくれていたと。
偉仁の舌は何度も明玲のそれを舐めた。甘やかな感覚が何度も背筋を辿り首の後ろまで到達する。その度に明玲は身を震わせ、偉仁の漢服をぎゅうっと握っていることしかできなかった。
どれほど口腔内を愛撫されていたのだろう。やっと解放された時には、明玲の瞳は潤み、唾液が口端から垂れていた。
「……あ……は……」
偉仁はそんな明玲の様子を満足そうに眺めると、漏れた唾液をぺろりと舐めた。
「ひゃっ……!」
「そなたには色気が足りぬ。これからは毎晩身に着けさせてやろう」
「……え?」
とても楽しそうに偉仁がそんなことを言う。明玲にはわけがわからなかった。その日はそのまま何度か口づけを受け、湯浴みの時間には部屋に送ってもらった。なんだか夢を見ていたようだと明玲は思った。
後宮の噂は、ただの噂ではなかったのだと明玲はようやく知った。でも母である明妃が、攫われてきて五か月で子を産んだなど誰も教えてはくれなかった。それならばどうして明玲は後宮にいられたのだろう。皇帝からしたら別の男の子供なのに、どうして明玲は殺されなかったのだろう。
疑問が次々と顔を出し、明玲は混乱した。そんな彼女の様子に偉仁は苦笑した。
「明玲、思い悩むのは後にしろ。大事な話の途中だ」
「……は、はい……」
目の前にとても秀麗な顔があって、明玲は何度も瞬きした。こんな至近距離で、しかも床の上で兄の顔を見たことなどなかった。みるみるうちに全身が熱くなる。おそらく今顔は真っ赤になっているのではないかと明玲は思った。
偉仁が機嫌よさそうに明玲の頬を撫でた。
「明玲」
「……ひゃ、ひゃいっ……!」
頬を撫でられた。頬を、頬を、その美しい手で! と明玲の頭の中は恐慌状態になっていた。そうでなくても明玲は偉仁を兄としてではなく、一人の男性として恋している。もっと小さい頃はただの憧れだったが、引き取られて近くで兄を知るにつけ、明玲はどんどん偉仁を好きになった。年が明けて十四歳になったと知り、誰かに嫁がなければいけないと考えただけで涙が溢れた。明玲とて兄に妻がいることはわかっているし、夜は決して部屋を出てはいけないと言われた理由もわかっていた。明玲の部屋は兄と妻たちの部屋の間にある。もし部屋を出て兄が妻たちの部屋に向かうところを見てしまったら、それだけで泣いてしまったに違いない。自分は兄やその妻たちに甘えているのだということは知っていたが、どうすることもできなかった。
「明玲、まだそなたを娶ることはできぬが、来年には私の妻になるのだと覚えておけ」
「……は、はい……はいいいいいいいっっ!?」
とんでもないことを言われ、明玲は更に混乱した。偉仁は苦笑した。
「全く……色気も何もないな……だが何度でも言おう。……そなたは私のものだ」
「え? あ、う? い?」
「もう黙れ」
混乱に拍車がかかり目を白黒させている明玲の頤を偉仁はクイ、と少し持ち上げた。
「~~~~~~っっ!!」
(何? なになになになに~~~~っっ!? これは口付け? 口吸い? えーーーーーー?)
秀麗な面が更に近づいてきたかと思うと、その薄い唇が明玲のそれに重なった。そして半開きになっていた唇をぺろりと舐められ、瞬く間にするりと偉仁の舌が口腔内に入ってきた。
「んっ、んんーーっ!」
戸惑って動けないでいる明玲の舌を偉仁の舌が捕らえた時、ぞくぞくするような感覚が背筋を辿り、明玲はびくびくと身を震わせた。その身体が逃げないようにと、片腕でがっしりと抱かれていることに明玲はようやく気付いた。
(哥の、もの? 私は最初から……)
生まれた時から側にいたと聞いていた。赤子の時から明玲は偉仁にべったりであったと。そして偉仁も明玲を邪険にすることなく、よく面倒を看てくれていたと。
偉仁の舌は何度も明玲のそれを舐めた。甘やかな感覚が何度も背筋を辿り首の後ろまで到達する。その度に明玲は身を震わせ、偉仁の漢服をぎゅうっと握っていることしかできなかった。
どれほど口腔内を愛撫されていたのだろう。やっと解放された時には、明玲の瞳は潤み、唾液が口端から垂れていた。
「……あ……は……」
偉仁はそんな明玲の様子を満足そうに眺めると、漏れた唾液をぺろりと舐めた。
「ひゃっ……!」
「そなたには色気が足りぬ。これからは毎晩身に着けさせてやろう」
「……え?」
とても楽しそうに偉仁がそんなことを言う。明玲にはわけがわからなかった。その日はそのまま何度か口づけを受け、湯浴みの時間には部屋に送ってもらった。なんだか夢を見ていたようだと明玲は思った。
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